今回『GetNavi(10月号)』特派員として Nikon社製双眼鏡「PROSTAFF 7S 10x30」をお借りしレビューさせていただく事になりました。
テーマは「夏のアクティビティに双眼鏡を使うとどれだけ楽しくなるのか」とのことで、丁度お借りしている期間に予定していた野球観戦と家族旅行に持っていきました。
ところで双眼鏡と言うと高倍率でズーム機能があるモノが良いモノだと思っていたので、10倍固定倍率と聞き、当初あまり期待しておりませんでした(^^;
【仕 様】
お借りした「PROSTAFF 7S 10x30」の仕様は以下の様になっています。
製品仕様
表には載せていませんが本品は防水仕様になっており、1mの深さに 10分浸けていられる防水性能となっています。
今まで双眼鏡は倍率程度しか見ていませんでしたが、聞きなれない語句がいくつも並んでいます。
簡単にコメントも入れましたが、もう少し詳しい項目の説明を Nikon製双眼鏡の総合カタログから引用します。
倍率ばかり気にしていましたが、明るさや視界の広さの違いで、かなり見易さが変わるようです。
確かに初めて本品を覗いてみて驚いたのが、視界の明るさでした。
近年購入した双眼鏡は
20~80倍のズーム式でしたが、仕様を確認すると明るさは「1.96~0.12」という、本品に比べてかなり数値が低くなっています。
こちらの双眼鏡で昼間に室内で覗いてみて暗く感じていたのですが、雲泥の差です。
そして最低倍率の 20倍でも手ブレの影響が大きく、見ているとすぐ目が疲れてしまいます。
高倍率になると大きく拡大して見える分、どうしても暗く手振れを起こしやすくなってしまいます。
これが本品だと手ブレを気にせず見る事が出来、やっぱり 10倍くらいだと違うのだなと思っていたら、どうやらそれだけでも無いようです。
先ほどの表にあった「実視界」が関係してきます。
再度カタログから「実視界」を引用します。
※ニコン総合カタログより引用
双眼鏡を動かさずに見る事の出来る範囲を対物レンズの中心から測った角度が実視界になりますが、これが双眼鏡によってかなり変わります。
あくまでイメージですが、カメラで撮影した画像に実視界 6°と 3°でどの位見えている範囲が違うか分かるものを作ってみました。
同じ倍率でも実視界が違うとこれだけ見えている範囲が異なります。
本品の実視界が 6°に対し、先のズーム双眼鏡は最低倍率の 20倍で 1.5°になります。
これではズーム双眼鏡で見たい対象がどこにあるのか捜すのが大変な訳です。
実はこれまでも野球観戦に先のズーム双眼鏡を持っていった事はあるのですが、動きの無いもの(ベンチの様子など)しか見ておらず、それでも手ブレで見辛いので折角持っていっていてもすぐに使わなくなっていました(^^;
とりあえず、知識としては本品は視界が広くて視野が明るく対象物を捉え易い事が分かりましたので、後は現場で実際どうなのかレビューしていきます。
と、その前に一旦本体の外観を見ていただきます。
【外 観】
本来ケースとストラップが付属しているようなのですが、お借りした状態では付いておらずこちらのストラップを使いました。
ラバーコートのボディは掴み易く、本体は重厚感があって良いですね。
ただ、女性が持ち歩くには 420gあると疲れそうです。
接眼側のレンズが大きく良く見えそうです。
接眼部分は回転させる事で引き出せますので、裸眼の場合は引きだしてやり、眼鏡使用の場合は押し込んでやる事で視野が欠けることなく見易いポイントに調整できます。
ストラップホールは両脇にあります。
本体重量が 420gもあるので、首に負担がかかりにくいストラップを使いたいですね。
【使い方】
双眼鏡を覗く時にはまず裸眼の場合は接眼部分を引き出し、メガネの場合は押し込んでおきます。
そして接眼レンズの幅を自分の瞳の間隔に合わせます。両手で双眼鏡を持ち、両目で覗きながらボディをゆっくり開閉します。
この時、左右の視野が一つの円になれば 調整完了です。
と、Nikonのページにあるのですが、この時にピントが合っていないと一つの円になっている事も分かり辛いので、併せてピント調整しながら幅の調整を行った方が私は合わせ易かったです。
ピントを合わせるにはボディ真ん中にあるピント調整リングを回します。
そして両目で見る場合に左右の視力差があるとピントを合わせてもハッキリと見えないので、視度調整を行います。
ピントを合わせる時には目標物をまず左目だけで見て合わせます。
ピントが合ったら同じ目標物を右目だけで見て、今度は右側接眼部分奥にある視度調整リングを回しピントがピッタリ合う位置を探します。
一度調整してしまえば目標物を変えても真ん中のピント調整リングを回すだけで、左右同時にピントが合うようになります。
それではいよいよ実戦投入です。
閑話【倍率って何?】
ところで、双眼鏡で何倍との表記がありますが、何を基準に何倍なのか気になった事はないでしょうか?
肉眼で見た状態を 1倍としてそれに対して何倍なのかという事なのですが、カメラで撮影した画像に当てはめた場合はどうなるのでしょうか?
カメラに詳しくない方には分かり辛いかとは思いますが、35mm換算で 50mmのレンズで撮影したサイズが肉眼で見たのと等倍サイズと言われています。
(カメラのイメージセンサーのサイズによって等倍になる焦点距離が違います。
APS-Cサイズなら 1.5~1.6倍にしたものが 35mm換算相当になり、
フォーサーズでは 2倍したものが 35mm換算相当になります)
ですので 10倍というと、500mmのレンズを付けているのと同等の大きさで見られることになります。
これを手ブレ補正のない状態で見ると考えたら、もっと倍率は低くて良いのではと思えてきました。
それを今まで 20倍の双眼鏡を手持ちでスポーツ観戦しようとしていたんですから、無謀ってもんです(^^;
【夏のアクティビティに双眼鏡を使うとどれだけ楽しくなるのか】
今回お借りした期間が 7月23日 ~ 8月5日までだったのですが、この間利用した場面を時系列でご紹介します。
○ 野球観戦
まず当初より予定していた通り、7月24日に「ヤクルト vs 中日」戦を家族四人で神宮球場へ観戦に行きました。
今回は新宿区内の少年野球チーム所属者向けの特別優待販売で、内野 A指定席 or B指定席のみの販売でいつもよりだいぶグラウンドに近い席で観戦してきました。
(いつもは子供たちが応援が楽しいからと外野に行きたがります。財布に優しい子たちです(^^ )
この席から双眼鏡をのぞくとイメージ的に以下の様に見えています。
元画像は 120mm相当で 2倍強の倍率で撮影している事になりますので、双眼鏡をのぞくと円の中くらいがアップの状態で見えていました。
この位の範囲が見えていれば、動いている選手も容易に視野に捉える事が出来ます。
練習の様子や好きな選手のプレーを見たりと大活躍です。
試合途中で相手チームの選手がデッドボールで治療のため試合が一時中断されたのですが、その時にはベンチで心配そうに覗き込んでいる選手の様子が見られました。
いつもなら試合が中断されもどかしいだけの時間が、選手の動きから最初酷いケガなのでは?といった様子だったのが心配なさそうだという雰囲気になるまでをじっくりと見ることが出来、こちらまでホッとしました。
双眼鏡で近くに見える分、より臨場感を感じられますね。
そして今回バッティングの様子を見ようと打者を見ていたらファールボールが自分の方に飛んできて、双眼鏡を慌てて外しましたがボールの行方が分かりませんでした。
そのボールは斜め後方の 5段くらい上に座っていた人に当たっており危ないところでした(--;
野球観戦ではボールの飛んでくる可能性のある場面では使わない方が良さそうです。
とにかく今回本品を持っていく事でプレー中の選手をじっくり見ることが出来、いつもより楽しむことが出来ました。
観戦中、家族にも使ってもらうと「前に使ってたモノよりもすごく見易い」とちょくちょく息子に奪われていたのですが、途中から応援に夢中になってじっくり双眼鏡で見るどころでは無くなっていたようです(^^;
娘に至っては最初から両手にメガホンバットを持っていて、双眼鏡どころではありません(^^;;;
奥さんは別途小型の双眼鏡を使っていたのですが、本品を渡すと「こちらの方が明るく見えて良いけど、重くて長時間首から提げていられない」とすぐ返されてしまいました。
女性や子供が使うには、もっと軽量のモノの方が良さそうです。
○ 天体観測
少し期間が開きましたが、7月31日にブルームーンが見られるとの事で、当日友人との暑気払いから帰ってきた夜中に使ってみました。
大体この円の中くらいの大きさで見えていたと思うのですが、撮影画像は今回 430mm相当ですので 8.5倍程度になります。
実際に見えている範囲は実視界が関係し、あくまでイメージですので正確ではありません事をご了承ください。
今まで月を見るというと望遠レンズをつけたカメラを三脚に載せたり望遠鏡で見るという頭しか無く(持っているズーム双眼鏡は倍率は良いのですが暗いのであまり見る気がしていませんでした)、手軽に持ちだして見られる双眼鏡は良いですね。
もっとも、今回はレビューの為にブルームーンを撮っておこうとカメラや三脚を担ぎ出していたので、とても手軽とは言えませんでしたが(^^;
その代わりといってはなんですが、折角三脚を出してきたので手ブレなく見るため、三脚取付用のプレートとスマホホルダー等を駆使して双眼鏡を固定して眺めてみました。
片目でしか見られませんし、とても手軽といった感じではなくなりましたが、手で持たなくて良いので楽に観察出来ました。
ちなみに三脚で固定して観る事が多い場合は、各メーカーから三脚固定用のアダプターが出ていますのでそちらを入手すると良いでしょう。
○少年野球応援
8月2日に息子の所属する野球チームの試合があったので、応援に行ってきました。
先日の野球観戦ではボールが飛んでくる危険性がありましたが、今回はネット裏で安心です。
5,6年生の試合で、息子は最後に守備で出させてもらっただけでしたが、グランド脇から見ているのでバッターボックスや守備位置などでの子供たちの表情まで見られて面白かったです。
もっとも、先日の野球観戦でもそうでしたが、スポーツ観戦で特に野球の場合は試合の流れを観るのにグラウンド全体を見たい事が多く、双眼鏡をのぞいてばかりはいられません。
これが個人技のテニス等だと、プレーを逐一観察する為ずっと双眼鏡を覗いている事はよくありました。
まぁ野球でも、好きな選手、自分の子供をずっと見ているのもありかな(^^;
○ 家族旅行
8月3日 ~ 5日の二泊三日で千葉県の勝浦に行ってきました。
今回の旅行中で使ったのは二ヶ所で、まず初日に鴨川シーワールドに行ってきました。
園内では観客席を設けたパフォーマンスがいくつか行われており、まずはベルーガパフォーマンスを観てきました。
屋内型のパフォーマンスでしたが、明るい視野のおかげでしっかり観る事が出来ました。
今回はガラス面まで 10mくらいの距離でしたので、その先のベルーガもドアップになりました。
今回の撮影画像も 430mm相当ですので、実際はもう少しアップだったと思います。
続いて定番のイルカパフォーマンスを観ました。
全体を観たかったので最後部の座席に座りましたが、こちらもプールの一番手前まで 10mといったところでしょうか。
ベルーガの時と同様、ジャンプしたイルカがドアップです。
これはこれで良いですが、今回の様なショウでは身体全体が見える位が良いと思うので 10倍だと高倍率過ぎでしたね。
そして今回の旅行で使ったもう一ヶ所が三日目に行ったマザー牧場です。
放牧されている牛(丘の上の方にいます)を眺めてみたり
園内でいくつか行われている動物イベントで使いました。
ここでもイベントメインの動物を観るにはアップになり過ぎでしたが、アップでないと見られないものもありしっかり観察する事が出来ました。
今回は二ヶ所でしか使いませんでしたが、他にも海岸のそばを歩いたり移動途中で使う機会はありました。
しかし、うちの家族は途中の景色を楽しむより目的地に早く着く方が先決になってしまうようで、私が途中撮影などしているとすぐに置いていかれてしまいます(^^;
この辺は価値観の違いなので、難しいですね。
この様にいくつかのイベントで使ったわけですが、イベントによっては無くても十分楽しめますが、双眼鏡がある事でより楽しめました。
ただ、いつ使うか分からないようなイベント(状況)で更に歩き回るような場所では、本品をずっと首から提げているにはちょっと重いです。
また倍率も 10倍ではアップになり過ぎる事が多く、もう少し低倍率の方がオールマイティに使えたような気がします。
もっとも、野球観戦の観客席ほど離れてしまう状況では本品くらいの倍率・明るさは欲しいので、双眼鏡で何を見たいか絞れれば満足のいく双眼鏡が決まってきそうです。
閑話【スマホで撮影は可能?】
ズーム式双眼鏡で試した時はブレてしまって撮影は出来ませんでしたが「これだけブレが気にならないのなら、できるんじゃね?」と野球観戦時に試してみました。
とてもじゃないですが、手持ちで手軽にスマホの望遠代わりに使うのは無理でした。
これでも何枚も撮ったうちの一番まともに撮れた画像ですが、片手で双眼鏡を支えつつスマホを片手で操作なんて私には難し過ぎます(--;
それならば双眼鏡さえ固定すればキレイに撮れるのかと、室内に場所を移してリベンジしてみました。
180cmの机を 2台繋げた先に全高 8cmほどフィギュアを置いて、撮影してみました。
双眼鏡の接眼部分が机のヘリにくる様に置き、スマホのレンズを接眼部に押し付けて撮影してみました。
なかなかきれいに撮れるもんですね(^^
一回でうまく撮れました。
周りのケラレが気になったのでスマホでズーム撮影してみました。
ケラレは無くなりましたがかなり粗いですね。
スマホはデジタルズームなので先の画像を PCで拡大しても一緒ですね(^^;
ところで、この双眼鏡(または望遠鏡など)にカメラを押しつけて撮る方法には「コリメート法」というたいそうな名前が付いているそうで、元々天体写真撮影で行われていたようですね。
しかしこの方法、緊急時には使えるかもしれませんが素直にデジカメを用意した方が良さそうです。
動いているモノは撮れませんし、レンズが接眼部の真ん中にくるよう調整しながら撮るので 1枚撮るのにも時間がかかり過ぎます。
「高倍率なほど良い双眼鏡」と思っている人にこそ使ってみて欲しい
10倍程度で見易いのか?と思っていましたが、見易さは倍率で決まるものでは無く、のぞいた時の明るさや視界の広さで決まる事が実感できました。
本品は今まで使ってきた安めの双眼鏡と比べ視界が広くて視野が明るく、動いている目標物を簡単にとらえる事が出来ました。
当然高倍率の方がより目標物を大きく見る事が出来ますが、高倍率になるほど手ブレが酷くなり視界も暗くなっていきます。
要は倍率と明るさ、視界の広さ、そして重量のバランスがとれていないと使い易いとは感じられません。
今回利用した範囲では 10倍でも高倍率過ぎると感じるケースが多く、オールマイティに使うならばもう少し倍率が低い方が良さそうです。
しかしながらレビュー中にも書きましたが、野球観戦などでは本品くらいの倍率・明るさは欲しいので、満足のいく双眼鏡ライフを送るには使用用途を絞る事が大切でしょう。
ニコンの双眼鏡の中で PROSTAFFシリーズは初心者向きともいえる位置付けで、上には「MONARCH」「EDG」といった上級者向けシリーズがあります。
より明るく、より視界が広がりますが、価格もグッと上がり重量も基本的に重くなります。
※ 明るさに関しては、レンズのコーティング等によっても変わるそうで、仕様上同じ明るさ
でも見比べてみて全然違うという事もあるそうです。
逆にファミリー向けとも言える「ACULON」シリーズは本品よりも暗めで多少視界も狭くなりますが、軽いのでずっと首から提げていても苦になりません。
ちょっと話が逸れ双眼鏡の選び方みたいになってしまいましたが、今まで安い双眼鏡しか使った事が無い人にぜひ本品を使ってみて違いを実感してみて欲しいと思います。
既にレビュー品は返却していますが、野球観戦には本品をそして旅行などでの持ち歩きにはもう少し倍率の低いモノを使いたいと妄想しております(^^;
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