さてさて今回はHaswell Refreshのコードネームで知られるソケットLGA1150の最高峰であり、オーバークロック向けに特化したDevil's Canyonの別名を与えられているintel Core i7 4790Kのプレミアムレビューだ。
このレビューでは置き換え元のCore i7 4770Kとの比較に重点を置いてレビューしていきたいと思う。
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当稿ではオーバークロックについて記述しますが、定格外のクロック、電圧等の設定をしての動作はメーカー保証外となります。保証が効かなくなるだけでなく各パーツの寿命の短縮、破損等を伴う危険性があります。当稿の設定等を参考にして行った行為によって生じた損害等あらゆる責任は負いかねますのでご了承ください。
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まずはいつも通り開梱からはじめよう。
パッケージは皆様おなじみブルーのintelカラーを纏ったものだ。
Haswell発売当時に話題になったちょっと不思議なテイストのイラストもそのまま同じである。
そして窓からのぞくCPU本体。
これも毎度の事ながらずれている。毎回気になるのだが・・・こういう物、のようだ。
ついでにいえばパッケージの印刷の向きとCPUの刻印の向きも90度ずれている。
こまけぇことは良いんだよ!のAAが頭をよぎる瞬間だ。
各面に細かく説明などが書かれているが特に一生懸命読む物でも無いのですっ飛ばして、封印ステッカーを切り中身を見てみよう。
これまたおなじみ、段ボールのインナーにCPU、CPUクーラー、マニュアルがキッチリ詰まっている。
内容物を並べるとこのような感じ。
CPUクーラーは皆同じ物が入っているように見えるが、実は細かく仕様が違うのだ。
今回は銅柱の埋め込まれた高発熱対応のものだが、銅柱を省きすべてアルミで作られた物やフィンの形状、厚み、さらにはファンの回転数までもが違う物がスペックに応じて入っている。
グリスは塗布済み。意外と柔らかいのでゴミの付着など取り扱いには注意したい。
そして今回のメインのCPU本体だ。
ここで新旧Core i7のスペックをおさらいしておこう。
ざっとはこのようなところだ。
スペック上の違いは動作クロックの向上とTDP増加が主なトピックである。
しかしCore i7 4790Kはそれだけではなく内部構造の最適化、熱伝導率に優れるTIMの採用によって性能はもとよりオーバークロック耐性も向上している点が一番の特徴だ。
intelによってDevil's Canyonと特別なコードネームが与えられていることからもわかるだろう。
その実力は後ほど検証したいと思う。
実際にどのようにCore i7 4770Kと違うのかを外観から眺めてみよう。
左側がCore i7 4770K、右側がCore i7 4790Kだ。
表面は刻印の違いはもちろんなのだが、よく見るとヒートスプレッダの作りが違うのがわかるだろうか。
Core i7 4770Kはヘアライン加工の入った表面だが、Core i7 4790Kは梨地で若干角が丸い。
また、基板上の電極の数も増えており、おそらく製造過程で何かしらのテストを行う際に使うものであろう。
独自に調査したところDevil's Canyonにのみこの電極が確認できるので、他のHaswell Refreshとは別に何かしらの追加テストが可能になっているのではないかと考えられる。
次は裏側を見てみよう。
先ほどと同じく左側がCore i7 4770K、右側がCore i7 4790K。
こちらは電極に差異は見られない。
そのかわりに細かいコンデンサ類が多数載せられており、このあたりが4Ghzを超える高クロックでの動作を可能にしているのだろう。
基本的に同じようなCPUだとここまで(比較的)大きな外観の変化は無いように思うが、それだけintelはDevil's Canyonに力を入れているであろう事が読み取れる。
CPUの外観のチェックが終わったところで組み込むPCを紹介しよう。
組み込むのは私のメインマシンだ。
大きさの比較用にCPUのパッケージを置いてみた。
このコンパクトさに惹かれて選んだケースCooller Master Elite 110 Cubeである。
少し横道に逸れるがこのケースの特徴を。
Elite 110 Cubeは180mmまでのフルサイズATX電源や210mmまでの2スロット占有VGA、120mmサイズの水冷CPUクーラーを搭載可能なのだ。
mini-ITXのマザーさえラインナップされていれば最小クラスのハイスペックマシンを作ることが出来る。
欠点としては光学ドライブベイが無いこと、全長を抑えたためにVGAはRadeonだとR9 270X、GeForceだとGTX760までに制限されること、(これはトレードオフだが)メッシュパネルを多用するため静音性に欠けることの3点だろうか。
スペックはこちら。
マザーボードがZ87チップセット搭載のモデルなので、事前にUEFIをVer1.4にアップデートしている。
今回はこのmini-ITXマシンにて検証を行う。
検証
・ベンチマークソフトを利用して定格~OC状態での比較
OCは結果から言うと倍率変更のみではCore i7 4790Kは4.6Ghzまで、Core i7 4770Kは4.4Ghzまでベンチマークスコアが取得できた。
Core i7 4790Kは倍率を下方へ変更し、Core i7 4770Kと横並びできるように設定した。
今回はスコアのブレが少ないこのベンチ比較しようと思う。
まずは各クロック時のスコアについて。
両者ともにクロックに比例してスコアが伸びているのがわかるだろう。
OpenGLの結果にはあまり差が出ていないことから、VGAがボトルネックになっていると考えられる。
両者の比較としては、同クロックで比較すると誤差程度と言える差しか無い。
Haswell Refreshになったとは言え、アーキテクチャに手が入っているわけでは無いようだ。
ダイレベルで言えば両者に大きな差は無いと言って良いだろう。
ただ、一つここで注目したいのは4.4Ghzでのグラフだ。
ここまではわずかにCore i7 4770Kが上回る結果だったが、4.4Ghzのグラフはその関係が逆転しているのだ。
おそらくこれは新型TIMによって熱的に余裕があるためクロックが上がりやすくなっているのだろう。おそらくこれ以上のOCをすればもっとこの差が開くと思われる。
CPU:OCCTをかけてフル負荷をかけたときの消費電力、コア電圧等を比較した。
消費電力、最高コア温度ともにクロックに比例した結果となった。
同じ4.0Ghzでの結果だとCore i7 4790Kが144W/66℃に対してCore i7 4770Kは166W/83℃とそれぞれ-22W/-17度と大きく差が出ている。
定格以下のクロックなのでコア電圧が相応に低い事と、新型TIMの影響が大きく出た結果と言えるだろう。
4.3Ghzにおいては消費電力こそCore i7 4790Kが上回るものの、最高コア温度は依然として低いままだ。
Core i7 4770KのVCoreが1.3Vも掛かっているという表示なのが気になるが、UEFIのリセットなどを試したが値には変化が無かったのでそのまま記載した。
ここでは歴代Core i7のスコアと比較をしてみたいと思う。
比較対象は今回のCore i7 4790K、4770Kに加え、IvyBridgeコアの3770、Sandybridgeコアの2600K、LGA1366のGulftownコアの990Xだ。
ただしデータは過去のレビューから流用している。横並びでの比較とはいかないため参考程度にとどめていただきたい。
CPUスコアはLGA115xのCore i7で比較すると、世代が進むにつれて順当にスコアが上がっておりCore i7 4790Kでは4Ghzを超える高クロックでの動作を実現しているために6コア12スレッドのCore i7 990Xを上回るスコアをたたき出している。
また、OpenGLのグラフはVGAが同じでは無いので単純比較は出来ないが、Core i7 4790Kおよび4770KがVGAの性能で劣っているHD5770を搭載していながらもCore i7 2600K+HD5850と同等のスコアが出ているところも注目したい。
番外編
手元にあるCore i3省電力モデルと比較してみた。構成はCPU以外はメインマシンそのままだ。
ついでにCore i7 4790KのHTT(ハイパースレッディングテクノロジ)を無効化し、擬似的なCore i5としたときのものも用意した。
※ただし、LLC容量やクロックなどはCore i7 4790Kの定格のままなので本来のCore i5よりも良
いスコアとなることに注意していただきたい。
また、Radeon HD6850を搭載した際のスコアも取得することが出来たのでVGAの違いからくるスコアの変動にも注目してみた。
Core i3 4130Tは定格クロックは2.9Ghz、LLCは3MB、デュアルコアでTB無し、HTT有りなので2コア4スレッドだ。
HD6850はHD5770の後継とされるがその性能は確実に向上している。
Core i3とCore i7間でOpenGLのベンチマークでは1~2%ほどとあまり差がつかない。
やはりVGAがボトルネックになっていることが読み取れる。
ただしCPUテストでは大幅にスコアを伸ばし、実に3倍以上の差をつけている。2コア4スレッドと4コア8スレッドの差は歴然だ。
ただし消費電力に関してはさすがの省電力モデルのCore i3の面目躍如だ。OCCT時の消費電力はは実に2.35倍もの差がついている。最高時でも80Wに満たない消費電力はグラフィックボードを載せているという事を考えても非常に優秀であると言えるだろう。
一点気になるのは消費電力の増加よりもCPUスコアの上昇分が上回る点だろうか。
消費電力あたりのスコアはCore i7のほうが優れるという結果となっている。
Core i7と疑似Core i5間では、HTTの実力が如実に表れている。
OpenGLでは大きな差はないものの、CPUスコアでは約3割ほどの差が出ているのが分かるだろう。単純に言えばHTTでの性能増加分は3割ほどと見ておけば良さそうだ。
消費電力の増加分としては6%とHTTの有効化の影響は小さい。
今回の結果から言えばHTTでのは有効にするほうが得策と言えそうだ。
VGAの違いではやはりOpenGLのスコアが伸びる傾向にある。
CHINEBENCHにおいてはHD5770とHD6850の間には約20~30%ほどの性能差があるようだ。
しかし消費電力においては最大3%ほどの増加にとどまり、同じ40nmプロセスながら性能の向上と併せて飛躍的な進歩を遂げている様がうかがえる。
・オーバークロックの設定
ここではCore i7 4790KとCore i7 4770Kの比較を主としているため、今回のグラフを取得した際に利用した簡単なオーバークロックの設定を2種類紹介しよう。
最も簡単なのはマザーボードに付属するユーティリティソフトを利用する方法だ。
msiではCommand Centerというソフトが利用でき、これを使ってオーバークロック、ファンコントロール等の設定が行える。
1:動作倍率を全コアに適用できるようにチェックボックスを入れ
2:設定を定格の倍率から変更して
3:適用するだけ
もう一つはUEFIでの設定だ。
起動時にDelキーを連打してUEFIメニューに入り、CPU Ratio(CPU動作倍率)の値を目的の数値にし適用してやればOKだ。
このマザーボードの場合はキーボードからの直接入力だったので、指定倍率をテンキー等で入力してやれば良い。(+や-、PageUp、PageDownではない)
試してみた中ではCore i7 4790Kが46倍、Core i7 4770Kが43倍がベンチマークが通る限界だった。
ちなみにメモリのX.M.Pプロファイルの選択もここで出来る。
今回のデータはすべてProfile1(メモリによってタイミング等の値は変わる)を利用した。
オーバークロックをすることによってコンピューティング環境のビフォア・アフターは!?
結論:あまり変わりません。
というのも一般的な用途としてはすでにCore i7はオーバースペックと言わざるを得ないという点が大前提になってしまうからだ。
ネットブラウジング、ブラウザゲーム、ネットゲー。これらを利用する上で4コア8スレッドのCPUはその性能をもてあましてしまうのだ。
そこでオーバークロックをしたところで(今回は4.4→4.6Ghz)その差を体感することは難しい。
エンコード作業なども劇的に(たとえば作業時間が半分になるとか)改善する訳でもないだろう。
CPUのクロック向上分がそのまま時間に表れたとしても200Mhzでは5%にも満たない。
たとえば60分の作業があったとして、オーバークロック後は57分に短縮されると仮定しよう。
この5%のために製品保証の喪失、寿命の短縮、破損等のリスクを負わせるのは正直に言うと賢明では無いと言わざるを得ない。
カジュアルなオーバークロックはその設定が簡単ではあるものの、その意味は最上位のCPUでは存在意義が薄いと言っても過言では無いように思う。
かといって電圧を上げ、各種UEFIの設定を詰めていっても数百Mhzの上乗せしか無いとなれば先述の通りメリットが少なくデメリットが大きすぎる。
今回のレビューではmini-ITX環境でのオーバークロックということで熱的にも厳しいため上限はすぐに見えてしまうと言うことも想像に難くない。
たとえば先日リリースされたPentimum 20周年記念モデルのG3258あたりで安いながらも足りない性能をオーバークロックによって稼ぎだし、速く仕上げるほうが面白いように感じるのは私だけだろうか。
また、Core i7でなくCore i5を選択し浮いた予算をSSDの容量増加、グラフィックボードに割く方が良い結果を生むだろう。(2014/09/15現在約1万円ほどの差額があるため、グラフィックボードなら追加、ないしワンランク上を搭載できるし、SSDなら安いもので256GBクラスに手が届くものもある)
現在オーバークロックはハイクロックを狙う、という目的以外ではあまりメリットを感じない。というのが私なりの結論である。
最後までお読みいただきありがとうございました。
以上で私infychanのintel Core i7 4790Kのプレミアムレビューを終わりたいと思います。
infychanプレミアムレビュー
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