完成のままにレビューを綴れ!

見るほどに何かを語りかけてくる花々の写真。今まで見たことのないような植物の表情と生命力を感じずにいられない一冊「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS 植物図鑑」が、ジグソープレミアムレビューに登場! 写真を見るのはもちろん、植物のことを知りたい時、何かアイディアのひらめきが欲しい時、ティータイムで癒されながら眺めるなど、様々なシチュエーションで鑑賞した時の感想や、自由な発想と感性で思ったことをレビューしよう!

ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS「植物図鑑」 ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS「植物図鑑」

200点を超える写真に収められた1600種以上の植物。植物の学名と和名が分かる植物名リスト付き。

世界中で希少な原種や多彩な輸入花、個性的な多肉植物、近年開発された新種のほかバラやラン、カーネーション、ダリアなどなじみ深い花や植物をアーティスティックな写真で紹介すると共に、巻末では「植物名リスト」として収録。「索引」では学名(ラテン語で示された世界共通の植物名)と和名(流通名)を知ることができるなど、図鑑としても楽しめる。

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プレミアムレビューの募集に先立って、zigPROフォトグラファーによる選考レビューを実施。「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS 植物図鑑」を独自の目線で書き綴る解説を読んで、プレミアムレビューに応募しよう!
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まず「植物図鑑」全体の第一印象ですが、1カット毎に感じるのは、丁寧に作り込んだ花をとても時間を掛けて撮られているなと思いました。
私が撮影に行く建築作品の現場では、見せ場や絵になるところがあっても建築家の方やデザイナーの方が「どこを撮る」「どう撮る」というのを、毎回試されるんですね。時に「勝負」っていう感じになることもあります。でもこの作品は東信さんと椎木俊介さんのお二人が互いに切磋琢磨しながら共同作業を行い、結果とても力強く見た人の感性に訴えかけるものに仕上がっていると思いました。

少しだけ技術的な事を書きますと、全体を通して固めのライティングをされている写真が多いと思います。プロではなく一般のみなさんが花を撮ると、全体的に光をまわして花の透明感や柔らかな淡い色合いを求めてしまうんですね。そうすると1枚の写真から受ける印象が弱くなってしまう。「植物図鑑」では、光が当たっている1点を際立たせてシャドーをそのまま生かして陰影を際立たせている。章ごとに分けられたテーマをグッと引き出す素晴らしい写真だと思います。中盤の章「HYBRID」ではほかの章とは違って黒い背景から白の背景になっていますが、順にページを進めていくと一冊の中でちょっと一息つけるような印象ですね。全体を一つの作品としてみた場合どれが強くてどれが弱いということもなく感じられて、一貫して力強さが伝わってきます。

「植物図鑑」は、写真好きの方、花好きの方の両方にとてもいい感性を与えてくれる作品だと思います。余談になりますが、何かをクリエイトする人というのは、様々なものを見て聞いて、それを自分の中で咀嚼してイメージを膨らませて、次に何かを作るときにその感性がいいものを生み出すことに繋がっていくと思うんです。「無意識の中の記憶」っていうのかもしれませんが、自分の中の感性を豊かにしてくれるものにどれだけ触れているかが大切ですよね。
作品の中では、5つの章にテーマを分けて構成されているのですが、目次ページの章のタイトルの下にあるすべての言葉が生き物のためにある言葉だと思うんです。もちろん花も生き物。テーマに沿って植物の生きるものとしてのありのままの姿が写真を通して伝わってきます。朽ち始めてもなお咲き誇ろうとする姿にはまさに生命を感じますよね。花のことをよく知ってらっしゃるお二人だからこそ、1枚1枚の写真に「魂」を入れることができたのかとも思います。

僕は個人的な感想ですが、「植物図鑑」に生命の素晴らしさと哲学を感じました。書名には図鑑とあります。写真を見てその美しさを楽しむことはもちろん、デザインに興味のある方、花を愛でる方、あるいは小説や物語を読むのが好きな方などなど、いろいろな方に見て読んで感じて欲しい1冊だと思います。

岩浪 睦

Photo Producer

岩浪 睦 MAKOTO IWANAMI(zigPRO

Studio RISE代表。料理写真、建築写真ほか多彩なジャンルを撮るフォトグラファー。30年に渡り北海道・小樽市の街並みを撮り続けているほか、北海道や沖縄に眠る戦争遺跡や産業遺産の作品作りをライフワークとしている。
○JPS 公益社団法人 日本写真家協会 会員
○APA 公益社団法人 日本広告写真家協会 正会員
○Studio RISE http://www.studio-rise.jp

ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS「植物図鑑」

ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS「植物図鑑」

瞬く間に朽ちゆき、死への時間を刻んで姿を変容させていく花々。
「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS 植物図鑑」に収められた植物は、数万本、1600種以上。現在世界最大の花卉市場である日本で育てられた花々はもちろん、遠く遥かアマゾンの熱帯雨林やアジアの湿地帯、厳しい自然環境に現生する植物が海を渡り、季節を越え東京に集められたもの。本書は作家表現や作品集という枠組みを超え、あまねく多くの人々に、自然の実が有する美しさ、その尊い生命を伝えることに徹底して取り組んだ、植物図鑑的作品集であり、現代における「自然」のあり様を付き付ける一冊。
ブックデザイン/原 研哉

判型/B5変型(並製)
総ページ/512ページ
定価/3,360円(本体3,200円+税)
ISBN 978-4-86152-355-7 C0072
発行所/青幻舎 http://www.seigensha.com/

◆PROFILE
東信(あずま まこと/1976~)と椎木俊介(しいのき しゅんすけ/1976~)は、2000年より共同し、花や植物を用いた作品を制作。2002年、注文に合わせて花材を仕入れて花束を作るオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。花屋としての活動に加え、2005年頃から、東の花や植物による造形表現が海外から注目を集め始める。ニューヨークでの個展を皮切りに、パリのカルティエ現代美術財団での実験的なアートパフォーマンスやデュッセルドルフのNRWフォーラムといった美術館やアートギャラリーでの作品発表を積み始める。時を同じくして椎木は花や植物のみが有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っては、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。