ファミコン本体のいろいろ
まずはファミコン黎明期の状況を簡単に説明しておこう。当初の位置づけとしては、ファミコンはあくまで小中学生をターゲットにしたゲーム機であり、その上位機種的存在としてパソコンが存在していた。つまりシンプルなゲームはファミコン、複雑な設定や美しいグラフィックやサウンドをゲームに求めるのであればパソコン、という具合だ。だが想定以上に幅広い世代に浸透した事とユーザー層の成熟もあり、次第にゲーム内容に厚みが求められてくる事となる。だがそのためにはファミコンのメモリはあまりにも非力だった。その問題を解決するために1986年2月21日に発売されたのが「ディスクシステム」(希望小売価格15,000円)だ。
別売りのディスクカードを読み取るディスクシステム本体と、ファミコン本体をRAMアダプタで接続する事により、ディスク内のゲームをプレイする事ができた。内蔵されていたRAMはプログラムデータ用が256キロビット、スプライトと背景用が64キロビットで、ファミコンと比較すると格段に性能は向上。またPWM音源も搭載され、ファミコンでは実現できなかった深みのあるゲームサウンドがゲームの世界観を大いに盛り上げてくれた。
このディスクシステムとファミコンの互換機としてシャープから1986年の7月に発売されたのが「ツインファミコン」だ。本体の色は赤と黒の2色があり価格はともに32,000円。“ツイン”の名の通り、ROMカセットとディスクカードのゲームの両方がプレイでき、RF出力しかないファミコンと違いAV出力端子も備えていたため、ファミコンよりも美しい映像と音を楽しめた。また後期型にはコントローラに連射機能まで搭載されていた…こうして書いていると、ファミコン購入に出遅れた友人が、「ツインファミコン」を手に入れて見せた『ドヤ顔』が目に浮かぶ。
ディスクシステムで用いるソフトが収められたディスクカードの容量は112キロバイト。当時のROMカセットよりも容量は大きく、また本体の電源を切った後もゲームデータをディスクに書き込む事で保存できた。まだ当時のROMカセットにはデータ保存機能を持つものはなかったため、画期的なシステムとしてユーザーたちから歓迎された。もう一つ、このディスクシステムが革新的だったのは、各地のおもちゃ屋さんの店頭に設置された「ディスクライター」という装置で、ディスクの内容を書き換え違うゲームを楽しむ事ができた点だ。書き換え料は通常1タイトル500円と非常に安価で、1992年までの間に200近いタイトルが楽しめた。子供たちからすればまさに未来のシステムで、今後はすべてのソフトはディスクシステムが主流になるのかと思わせたが、参入したソフトメーカーが少なかったのと、その後のROMカセットのデータ容量の飛躍的アップにより、その夢は叶わなかった。ディスクライターは1990年を過ぎたあたりから姿を消し始め、2003年には本社でも書き換えサービスが終了した。
このほか、ファミコン本体で変わったところでいうと、1986年に発売された業務用のファミコン「ファミコンボックス」であろう。当時はホテルや旅館に設置され、コインを入れる事でプレイすることができた。専用ソフトが15本入り、切り替えて遊ぶ事ができるがあくまで業務用だったため一般のお家ではなかなかお目にかかる事もない。
1989年にはシャープからビデオ編集機能の付いた「編集ファミコン(別名・ファミコンタイトラー)」が発売される。価格は43,000円。通常のファミコン同様、ソフトをプレイする事が可能であったが特筆すべきはビデオ編集モード。付属のタッチペンやコントローラⅡのマイクを用い、映像にナレーションやテロップを入れる事ができた。しかし、この商品が当時のマニアから支持されたのは編集機能ではなく、S映像端子を利用してテレビに接続できたため、高画質でゲームを楽しめることだった。
すでに当時、ファミコンの後継機である「スーパーファミコン」が発売されていたため、やや影が薄いが1993年12月には「AV仕様ファミリーコンピュータ」という商品も発売された。別名「ニューファミコン」。コンポジットビデオ出力でテレビへの接続が可能になったというのがその名の由来だが、価格が7,000円とリーズナブルだったため、ファミコンの廉価版という意味合いが強い。
豊饒なファミコン文化が残したもの
ファミコン対応ソフトの開発はその後継機である「スーパーファミコン」やライバル機「プレイステーション」が発売された後も続くが1994年で終わりを告げる。だが、ファミコンが試行錯誤しながら生み出したノウハウは、その後のゲーム業界に大きな影響を与えている。現在もファミコンは世代を問わず愛され、中古市場は常に品薄状態だ。誕生から約30年、世界中でこれほど愛されるゲーム機は今後もきっと登場しないだろう。
今回紹介したハードの他にも株取引ができる通信セットや音楽製作ソフトに対応したキーボード、空気で膨らませるバイクを使って楽しむソフトなど、ユニークな周辺機器やソフトはまだまだ存在する。また、ファミコン全盛期、毎月莫大な数のソフトがリリースされたために注目されずに終わった良作も数多くある。当時、その名は知っていたがお小遣いの都合で買い損ねたソフトや周辺機器を、経済的に余裕が出来たいま、再び手にしてみるのも楽しいかもしれない。







