ステライメージを使ってみよう

 ステライメージは天体写真用に開発されたグラフィクスソフトウェアで、デジタルカメラから天体用冷却CCDカメラという特殊なデバイスまでサポートするデファクトスタンダード・アプリケーションだ。比較明合成の処理を行う前に、ステライメージの基本的な概念を解説する。


天体写真は複数コマの合成が一般的

 ステライメージは、いわゆるフォトレタッチソフトに属するグラフィックアプリケーションだ。ただし、天体用の画像処理に特化しているため、特殊な機能が多い。

 天体写真の多くは淡い光を使い、その濃淡と色彩で、天体の構造を表現するビジュアルカテゴリだ。1コマのみの“撮って出し”が通用するシーンはほとんどない。そのため、天体写真用のソフトウェアには多数枚の画像を重ね、輝度を強調するような機能が搭載されている。

 また、天体写真はノイズとの戦いでもある。淡い天体は油断するとすぐにノイズに埋もれてしまう。天体写真用ソフトウェアにはノイスを減らすためのさまざまな機能が用意されている。

 ステライメージは、最新のVer6.5では、64bit版とマルチコアに対応し、ハイパワーなPCの能力をフルに引き出すことができるようになった。大画素数のRAWデータを同時に何枚(多いときは何百枚)も扱うことがある天体写真では、64bitCPUの広大なメモリと、マルチコアの高速性は非常に有効なのだ。ステライメージの高度なノイズ処理フィルタやディティールアップのフィルタの中には、1枚に数十秒もかかる“重い”処理もある。大容量メモリとマルチコアCPUは天体画像処理には必須なのだ。

天体写真では輝度差の激しい天体を扱うことが多いため、異なる露出のコマを合成することは日常茶飯事だ。これは有名なM42オリオン大星雲。15秒、60秒、300秒、900秒の4コマを単純に加算合成してみた。ここでは4枚だが、多いときは10枚を超える画像を重ねることになる。PCには絶対的なパワーが必要だ。

天体写真はHDRがあたり前の世界

 露出を変えて、露出アンダーから露出オーバーまで何枚も写真を撮り、それをソフトウェアで重ねて、本来ならとらえきれないほどの広いダイナミックレンジの写真を1枚にまとめる手法をHDR合成という。

 ステライメージはHDRとは呼ばないが、HDRのようなワイドダイナミックレンジを扱える基本構造になっている。階調は、R,G,B各色に32bitの浮動小数点(小数を使った高精度の演算)でカウントしているので、事実上無限ともいえる階調が扱える。複数の写真を重ね、どんどん足していっても、飽和してしまうことはない。「0が黒、255が白」という縛りはステライメージには存在しない。好きな数値を黒にして、好きな数値を白(=飽和点)にできる。

 通常、フォトレタッチソフトでレベル調整を行い、ハイライトを切り詰めると、ハイライト値より上の値は、ハイライト値に切り詰められてしまう。ステライメージはハイライト以上の値も保持したままなので、何度レベル調整をしても劣化しないという特性を持つ。

 このような仕組みになっているのは、天体の輝度差があまりにも激しいからだ。散光星雲の大部分は非常に暗く、たっぷり露出をしてもわずかに写る程度だが、若い星が集まっているところはとても明るく、あっという間に飽和してしまい、カメラのダイナミックレンジ内に入りきらないのだ。

 また、ハイライト部の階調を圧縮し、モニターやプリンタのダイナミックレンジ内に収める「デジタル現像」が搭載されている(デジタルカメラのRAW現像とは違う意味なので注意)。

上の作例は、加算しただけなので、画面が全体的に明るくなり、中心部が白く飽和してまっている。しかし、これは画面上だけのことで、ステライメージ内部ではきちんと階調が保持されている。レベル調整コマンドでヒストグラムを見ると、ちゃんと階調が残っていることが分かる。ここでR,G,Bのレンジを整える。

その後、「デジタル現像」コマンドを使い、ハイライト成分を圧縮すると、中心部の階調が蘇ってきた。

仕上げに色調を整えると完成だ。

天体写真の敵は2つのノイズ

 天体写真は、基本的に露出アンダーの写真といえる。だから、画像処理でコントラストを強調すると、ノイズでザラザラになってしまう。鑑賞に堪えうるクオリティにするためには、なんとかしてノイズを減らさなければならない。

 デジタルカメラにおけるノイズは大きく分けて2つ。一つは「熱ノイズ」「ダークノイズ」と呼ばれるもので、気温が高いときや、露出時間が長いときに現れるポツポツとしたもの。このノイズは同じ条件で撮影すると、同じピクセル位置に同じ強さで発生するため、再現性があるノイズだ。レンズにキャップをして、天体撮影時と全く同じ露出設定で暗闇を撮影した“ダーク画像”を作り、天体撮影画像から引き算をすればかなり高精度に消すことができる。これを“ダーク減算”という。デジタルカメラに搭載されている“長秒時ノイズリダクション”は、ダーク減算をカメラ内部で行っているものだ。

 もう一つのノイズは、画面に全体的に散らばるザラザラとしたノイズだ。こちらは熱ノイズとは反対に、同じ露出設定で撮影してもノイズの出方が毎回異なるので“ランダムノイズ”と呼ばれる。ダーク減算をしても全く消えないやっかいなものだ。

 ただ、毎回ランダムに違うのであれば、何枚も同じ撮影を行って、各画像を重ねてピクセル毎の平均をとってやれば、ザラザラのノイズは枚数にしたがい均されて減っていくはずである。天体写真では1つの対象を撮影するために、何枚〜何十枚もシャッターを切る。すべてはノイズを減らすためだ。

 後者の合成処理は、レイヤーが使えるグラフィックスアプリケーションならば、1枚1枚手動ではあるが、やれないことはない。しかし、前者のダーク減算はRAWのまま行う必要があるため、処理ができるソフトウェアは限られる。ステライメージは、両方のノイズ処理をバッチ処理で行うことができる数少ないアプリケーションだ。

ダークノイズは、画面中にぽつぽつと現れたり、画面の端に熱カブリとなって現れる。

真っ暗なダーク画像を撮影し、引き算をすることでこのノイズをきれいに消すことができる。

一方、もう一つのノイズであるランダムノイズは同じ画像を何枚も撮影し、ピクセル値の平均を取ることで少なくなっていく。左の画像は上から1枚、2枚、4枚を合成したもの。徐々に滑らかになっていくのが分かるだろう。


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