HP Pavilion Desktop PC e9160jp Premium Review

HP Pavilion Desktop PC e9160jp (以下 e9160jp)は、HP Pavilion Desktop PC e9000 シリーズのエントリーモデルにあたるが、そのパーツ構成に一切の妥協はない。 CPU にはAMD Phenom II X4 810を搭載(オプションでPhenom II X4 925に変更可能)しているにも関わらず、販売価格は69,930円(税込)からとコストパフォーマンスが非常に高いのが魅力だ。

特筆すべきはAMD Phenom II に ATI Radeon HD 4850 を組み合わせることで、動画関連の処理性能が大幅にアップすることである。 今回はハイアマ向けデジタル一眼レフカメラを取り上げ、RAW現像や動画処理を中心にその使い心地を見ていくことにしたいと思う。

※AMDスーパーバリューキャンペーン期間中は59,850円(税込)から  (300台限定)

HP Pavilion Desktop PC e9160jp
ハイスペックな構成だがコンパクトなボディ
名称 HP Pavilion Desktop PC e9160jp/CT 秋モデル
CPU AMD Phenom™ II X4 925
GPU ATI Radeon™ HD 4850(1GB)
RAM DDR3 SDRAM 4GB
HDD 1TB x 2 (RAID 0)
OS Windows Vista Home Premium 32bit
試用した e9160jp の主なパーツ構成(HP Directplus で購入時に変更可能)

AMD Phenom II と ATI Radeon HD でハイエンドデジカメをフル活用!

では早速、本機のパフォーマンスについて見てみたいと思う。 マルチコア CPU や GPU を活かせるアプリケーションとして身近なのは、やはりデジカメのRAW現像と動画編集だろう。一昔前ならば、扱うのさえ不可能だった2000万画素を超えるRAWデータとHD動画編集が、果たしてどのレベルの体感速度で実行できるのが興味深いところだ。 テストケースとして我が愛機、キヤノン EOS 5D Mark IIで撮影した写真の RAW 現像とフルHD動画の編集を試してみたい。

キヤノン EOS 5D Mark II
フルHD 動画撮影にも対応したキヤノン EOS 5D Mark II

ちなみにこのEOS 5D Mark II、高級機でありながら zigsow でも所有者が多い人気のデジイチだ。 有効 2,110万画素 35mmフルサイズ CMOSセンサーを搭載し、フルHD動画撮影機能をもつ。

実のところ、EOS 5D Mark IIには機能、画質ともに満足しているが、フルパワーで使うと…その膨大なデータサイズのために私のPCでは編集作業が極めて重く、現像や編集をするのに嫌気がさすほどストレスが溜まっていた。 かくしてRAW画像撮影の機能は、撮っても現像せずにHDDを消費するだけなので、JPGでの 撮影をメインにしてしまい、いつしか宝の持ち腐れになってしまっていた。だが今回はこのレビューのため、久しぶりに画像サイズ設定をJPG・LサイズからRAW+Lサイズの設定に変更してみることにした。

これがマルチコアの威力!RAW現像で Phenom II の実力発揮

愛用している市川ソフトラボラトリーのSILKYPIX Developer Studio Proは、AMD Phenom IIをはじめとするマルチコアCPUへの最適化がなされたRAW現像ソフトだ。

使い方は非常にシンプルで、RAWデータを読み込んでパラメータを調整し、現像処理をするだけ。 もちろん、レタッチや覆い焼きなどの、少し手の込んだ作業もできる。 バッチ処理に対応しているため、複数の画像を個別にパラメータ調整をした上で、一括して現像処理行程を走らせることも可能である。

EOS 5D Mark IIの画素数は2,110万画素とかなり大きく、RAWデータは1枚あたり26〜29MB程度にもなる。このRAW画像は情報量が多いことも、実際の写りに関しても大満足なのだが、なんといっても現像作業が苦痛でしかない。早速、今回レビューをさせて頂いたマシンを用いて、現像してみたところ、なんと一枚あたり約7秒程度で処理が完了した。今まで使っていたマシンの約2倍の速度である。 しかも、バックグラウンドでバッチ処理をしている最中でも、他の RAWデータの編集をストレスなく行うことが出来たのはマルチコア+GPUの恩恵だろうか。これだけ高速に処理が出来ると、今回素材として用意したヴィンテージ時計の美しい輝きが再現できるまで何度でもパラメーターの調整をしようという気持ちになるというものだ。

SILKYPIX Developer Studio Pro の動作画面
マルチコアに最適化されたSILKYPIX Developer Studio Proを使い、ビンテージのパテックフィリップが持つ存在感を完璧に再現。(写真協力:COUZT CAFE 藍い月)
バッチで一括現像しながらの作業も軽快だ
バッチで一括現像しながらの作業もサクサクと軽快だ(写真協力:COUZT CAFE 藍い月)
マルチコアCPUに最適化されているだけあって各コアがフルに活用されている
マルチコアCPUに最適化されているだけあって各コアがフルに活用されている

ATI Stream でデジカメの動画機能を最大限楽しむ!

CyberLink PowerDirector 8 でフルHD動画編集

写真は撮ったままを出しても作品として成り立つが、動画の場合は不要な部分のトリミングやシーンをつなぎ合わせ、音声の調整などを経て一本の作品として完成させる必要がある。 素人にはなかなか難しそうな分野だが、せっかくのフルHD動画撮影機能を生かして、写真とはまた違った趣味の作品を作り上げてみたい。

フルHD動画対応編集ソフト CyberLink PowerDirector 8
フルHD動画対応編集ソフトCyberLink PowerDirector 8

CyberLink PowerDirector 8はマルチコアCPUや ATI Stream に対応した動画編集ソフトだ。 編集結果を動画ファイルへエンコードする際に GPU を用いた高速化が図られている。

手始めに、知人宅の柴犬を題材に1分程度のムービーを作成してみた。 必要な部分だけを切り出してトランジション効果でつないだだけだが、不思議とこれだけでもストーリー性がグッと出てくる。

元の素材がフルHD画質なので、画質を損なわないように AVCHD で出力してみたところ、ATI Stream を有効にしたときの方が 30% 近い速度改善が見られた。 Phenom IIのサポート役として RadeonのGPUが有効に働いている裏付けと言えるだろう。

動画ファイル出力時にはATI Streamによる高速化が可能
動画ファイル出力時にはATI Streamによる高速化が可能
動画出力時の ATI Stream の効果
AVCHD出力にかかった時間。ATI Streamを有効にした方が30%近く高速化された。

CyberLink MediaShow Espresso で高速動画変換

先ほど PowerDirector 8 で作った AVCHD画像はフルHD画質なので、そのままでは配布する事が出来ない。 そこでCyberLink MediaShow Espressoで適切なファイルに変換してみたいと思う。

ATI Streamに対応した動画変換ソフト CyberLink MediaShow Espresso
ATI Streamに対応した動画変換ソフト CyberLink MediaShow Espresso

CyberLink MediaShow Espresso は PowerDirector 8 と同じく CyberLink 社製の ATI Streamに対応した動画変換ソフトだ。 UI は非常にシンプルで、ファイルをドラッグ&ドロップで追加し、メニューから変換後の形式を指定するだけだ。 iPhone や PSP といったモバイル機器への使用を想定されており、各種設定がプリセットされているのが非常に助かる。

iPhone 用、PSP 用、Youtube 用にそれぞれ変換してみたところ、どれも30秒程度の時間で終わってしまった。 元動画が1分だったので、約半分の時間で変換できたことになる。 フルHD動画からの変換スピードとしては非常に速い。こういう速度差を体感すると簡単には今までのマシンには戻れなくなる。

iPhone や PSP などの主要なポータブルデバイスはプリセットされている
iPhone や PSP などの主要なポータブルデバイスはプリセットされている
ATI Stream を使用しているときにはロゴが表示される
ATI Stream が有効なときには経過時間の隣にATIロゴが表示される

ATI Catalyst のインストールを忘れずに!

ATI Radeon HD の能力をフルに生かすには ATI Catalyst と呼ばれる ATI Radeon 用のドライバとユーティリティソフト群をインストールする必要がある。 動画変換を行う場合には Avivo Video Converter パッケージも別途インストールする必要がある。 どちらも以下の手順で入手できるのでインストールしておこう。

  1. AMDの「ATI Video Converter で高速動画変換!!」のページを開く
  2. "Download" で対応 OS をクリック
  3. ATI Catalyst と Avivo Video Converter をダウンロード&インストール

Phenom II X4 955 も動いた!パーツ交換で自分なりのカスタマイズも

お詫び
製品版の e9160jp では Phenom II X4 955 は動作しないことが判明いたしました。 本記事で使用した評価機は製品版とは異なる BIOS が用いられていたために Phenom II X4 955 が動作しておりました。 お詫びして訂正いたします。

ケースのドライブベイは 5.25 インチ x 2、3.5 インチ x 2 で、初期構成では少なくともそれぞれがオプティカルドライブとHDDで1つずつ使われている(カスタマイズ構成に依存)。 また、空きスロットは PCI Express x 16 x 2 スロット(空1)、PCI Express x 1 x 1 スロット(空1)、PCI Express x 4 x 1 スロット(空1)。コンパクトなボディなので物理的な干渉などに注意する必要があるが、パーツの拡張を考えてみるのもおもしろい。

ちなみに写真を見ていただくと分かるように、CPUへも非常にアクセスしやすい(というか一番手の届きやすいところにある)。 CPUクーラーは固定レバーを緩めれば簡単に外すことができる。将来的にはクーラーの交換なども試してみたいと思う。 ちょうど手元に先日入手したばかりのPhenom II X4 955 Black Editionがあったので差し替えてみると…BIOSの設定などもなくあっさり動いてしまった。 最初はエントリーモデルの Phenom II X4 810 モデルを買い、パフォーマンスを上げたくなったら、後から CPU を交換する、といった使い方が可能なのは本当に嬉しいところだ。

なお、個人でのパーツ交換は完全自己責任であり製品保証対象外となるので注意していただきたい。

※評価機での実験結果であり、すべての製品での動作を保障するものではありません。

e9160jp のケース内部
ケース内部
クーラーを固定しているレバーを上げれば簡単にCPUをはずすことができる
クーラーを固定しているレバーを上げれば簡単にCPUをはずすことができる
Phenom II X4 955 が認識された
Phenom II X4 955が認識された

e9160jp はデジイチユーザーにオススメなハイコストパフォーマンスマシン!

  • クアッドコアの AMD Phenom II X4 搭載で優れたコストパフォーマンス
  • ATI Radeon を組み合わせれば ATI Stream に対応した動画関連ソフトが快適に動作
  • 最初は基本構成のマシンを買って後からパーツの追加・交換するのもおもしろい

ここまで数日間 HP Pavilion Desktop PC e9160jp を使ってみたが、コンパクトであるものの非常に高いパフォーマンスを発揮するマシンだと感じた。 RAW現像や動画変換、動画編集に強く、最近のデジタル一眼レフカメラの機能を最大限に生かすための環境としては非常に良い選択肢ではないだろうか。 もちろんこの価格であれば改造のベースにしたり、ゲーム専用の遊びPCとして使い倒すのもありかもしれない。

現状では GPU のパフォーマンスを活かせるソフトはあまり多くはないものの、キャンペーン期間内に購入すれば Windows 7 への無償アップグレードを受けることができる。 今後、対応ソフトがますます増えてくることを期待したい。