第3世代 インテル(R) Core(TM) プロセッサー Top Gun Reviewの企画にて、Core i5-3570Kに引き続きCore i7-3770Kのレビューさせていただくことになりました。
前回のレビューでは最新のIvy BridgeコアのCore i5-3570Kと1世代前のSnady Bridgeコアの Core i5-2400を比較してCPU性能がどれくらい上がっているのか、省電力性はどうかということをレビューしました。
今回のレビュー課題は「前回のテーマ・内容をCore i7-3770Kで検証してCore i5-3570KとCore i7-3770Kの違いについてレビューをする」ということなので前回のテスト項目をベースに使用するCPUをCore i7-3770KとCore i5-3570Kにして比較します。
CPU :Core i7-3770K と 比較用 Core i5-3550K
マザーボード:GA-Z77M-D3H
CPUクーラー:KUHLER-H2O-620
メモリー :Cetus DCDDR3-16GB-1333
グラフィックカード:SAHD777-1GD5R0
SSD :PX-256M5P
HDD :MK5055GSX
HDD :MJA2500BH
電源 :EA-550-PLATINUM
OS :Windows 7 64bit
前回のレビューから変わったのはCPUとグラフィックカードとSSDです。
CPU:Core i5-3570K → Core i7-3770K
グラフィックカード:H657H1G → SAHD777-1GD5R0
SSD:PX-128M3P → PX-256M5P
のような変更です。
GPUはRadeon HD6570からRadeon HD7770になったのでゲーム系ベンチマークのスコアはかなり向上すると思います。
Core i7-3770K
Core i7-3770KとCore i5-3570Kのパッケージ
SAHD777-1GD5R0 グラフィックカード
◆CPUの仕様比較
Core i7-3770KとCore i5-3570Kの違いは動作周波数、キャッシュ容量、Hyper-Threadingの有無です。
Hyper-Threading機能に対応したCore i7-3770Kは4cores/8Thredsで動作します。
BIOS画面で確認したターボ・ブースト時のデフォルト倍率は下表のとおりです。
基本動作周波数が100MHz高いCore i7-3770Kがどの段階でも100MHz高い周波数で動作します。
前回比較に使ったCore i5-2400はSandy Bridgeコアの製品でターボ・ブーストの効き方も違っていました。
CPU-Z
Core i5-3570Kより電圧はちょっと高め
BIOSの画面
Core i7-3770KとCore i5-3570Kを使いベンチマークや普段使っているエンコードソフトでCPU性能を比べます。
どちらも倍率変更可能なCPUなのでターボ・ブースト時の動作倍率をBIOSから下表のように設定して1コアにだけ高負荷が掛かった時も、4コア全てに高負荷が掛かっている時も常に4.0GHzまで動作周波数が上がるオーバークロック状態でも同様のベンチマークをしました。
この設定だと両者の動作周波数が揃うのでオーバークロックでは埋められないキャッシュ容量とHyper-Threadingの有無の差がどう影響するのかを比較しやすいと思います。
◆OC時の動作確認に使用した動作倍率、ターボブースト時の倍率設定値
PC構成は先に記載したものでCPUのみ入れ替えています。
Windows エクスペリエンス インデックスはCore i7-3770Kへの交換でプロセッサスコアが0.1上昇して7.7になりました。
4.0GHzのオーバークロック動作の時にはプロセッサスコアとメモリスコアが各0.1上昇して7.8になりました。
プロセッサスコアの7.9まであとたったの0.1になりましたがこれがなかなか遠いみたいです。
メモリスコアの7.9はDDR3-1600やDDR3-1866のメモリで狙えるみたいです。
前回取得したCore i5-2400のスコアはプロセッサ:7.4、メモリ:7.6でした。
◆ CINEBENCH R11.5 (64bit)
CINEBENCH R11.5ではCore i7-3770KとCore i5-3570Kの差やオーバークロック動作させた時の差がわかりやすく出ました。
CPUの項目では8スレッド同時処理できるCore i7-3770Kのスコアが非常に高いです。
Core i7-3770Kの定格動作でもCore i5-3570KのOC動作時より高いスコアになりました。
同じ4.0GHz同士で比較するとCore i7-3770KはCore i5-3570Kの1.216倍のスコアです。
CPU(シングルコア)の項目は1コア当たりの性能なので動作周波数なりの結果です。
4.0GHz動作時の0.1pts差は誤差の範囲なのでキャッシュ容量の差と言えるかは微妙ですね。
OpenGLのスコアはグラフィックカードの性能が大きく影響する部分ですが、CPUによる差が少しだけありました。
前回のTop Gun ReviewでCore i5-3570KとCore i5-2400を比較した際はRadeon HD6570搭載のグラフィックカードを使用していて、CPUを変えOC動作してもOpenGLのスコアは0.02fpsしか差が出ませんでした。
Radeon HD6570の性能がネックになっていたのかも知れません。
前回取得したCore i5-2400のスコアはCPU:4.98pts、CPU(シングルコア):1.30ptsでした。
◆ 3DMark11 (Performance)
3DMark11の総合スコアはわずかですがCore i7-3770KがCore i5-3570Kを上回りました。
CPUを使うPhysics TestではCPUとOC設定の違いがよく出ています。
Graphics TestはCPUによる差がほとんどなかったです。
CPUとGPUの両方を使うと思われるCombined TestですがCore i5-3570Kの方がスコアが良かったです。
前回取得したCore i5-2400のPhysics Scoreは6202でした。
他はグラフィックカードの影響が大きので省略します。
◆ 3DMark06 (デフォルト設定)
3DMark06の総合スコアはCore i7-3770K OC、Core i5-3570K OC、Core i7 3770K定格、Core i5-3570K定格の順になりました。
CPU ScoreはCore i7-3770K定格がCore i5-3570Kをわずかに上回っています。
前回取得したCore i5-2400のCPU Scoreは5496でした。
◆PCMark7
PCmark07の総合スコアもCore i7-3770K OC、Core i5-3570K OC、Core i7 3770K定格、Core i5-3570K定格の順になりました。
テスト項目ごとの結果を見るとVideo transcoding - downscalingはHTありのCore i7-3770Kが有利ですが、Graphics - DirectX 9、Image manipulation、Web browsing、Data decryptingでは動作クロックの高いほうが有利となり総合的には最初に書いたような順番になったようです。
◆CrystalMark 2004R3
CrystalMark2003R4は最大4スレッドのベンチマークで、4論理プロセッサを超える環境には不向きと説明されていますが前回のテーマ・内容を~ということなので一応実行しました。
やはりCPU性能のテストであるALU、FPUではCore i7-3770Kの性能を出し切れていない感じが出ています。
メモリのテスト結果はCore i7-3770Kの方が良かったです。
Core i5-2400のスコアはALU:65400、FPU:56827、MEM:48650でした。
◆ FINAL FANTASY XIV OFFICIAL BENCHMARK (LOW設定)
FFXIVのベンチマークではHTなしのCore i5-3570Kの方がわずかにスコアが良かったです。
動作周波数に100MHz差がある定格同士の比較でもCore i5-3570Kのスコアが勝っています。
実際のゲーム中にこの差が影響するとは思えませんがこういうこともあるんですね。
Low設定しかやっていないのはモニタサイズが1600x1200だからです。
Core i7-3770K 定格
Core i7-3770K OC
Core i5-3570K 定格
Core i5-3570K OC
◆ LOST PLANET 2 Benchmark
(テストタイプA DX11 、1280x720 ウィンドウモード)
テストタイプAは毎回キャラクターの動きが違って(AI動作)、テストタイプBがGPUベンチマークに適してるらしいです。ベンチマーク実行中にキャラの動きが違うのは気づきましたが、テストタイプBにしても場面が違うだけかと思ってテストタイプAでやってしまいました。
Core i7-3770K 定格
Core i7-3770K OC
Core i5-3570K 定格
Core i5-3570K OC
◆ 動画エンコード
まずは前回と同様に1440x1080 長さ10:00 (600秒) 容量1.11GBのTSファイルをBonTsDemux + FFmpeg rev.18607(2009年頃のlibfaacが使えるバージョン)にて1280x720 長さ10:00 のmp4ファイルに変換しました。
FFmpegのバイナリは「お気に入りの動画を携帯で見よう」というサイトで公開されているものをしようしています。
変換はBonTsDemuxにファイルを投入してそのままmp4にする普通の使い方(?)です。
たぶんTSをm2vとwavに分割しながら、それをffmpegに渡してる。
動画部分のコーデックにlibx264、音声部分のコーデックにlibfaacを使っています。
細かいオプションはデフォルトのままではありませんが説明が難しいので省略します。
全部同じソースと設定で変換しています。
BonTsDemux + FFmpeg rev.18607 (1440x1080→1280x720)
※変換作業に掛かったトータルの値ではなく作業中にワットモニタに表示された値
の最小値と最大値です。値は常に上下してるので参考程度
この結果を見るとエンコードでHyper-Threadingが効果的に活かされていないどころか遅くなっていて残念・・・となってしまいますすが、Core i7-3770Kでエンコード中のCPU使用率をモニタリングしていると40%~50%程度で推移していることがわかりました。
Core i5-3570Kはというともっと高い70%~100%の使用率です。
つまり、現状は確かにHyper-Threadingを効果的に活かせていないが、Core i7-3770Kにはまだ十分な余力を残しているということです。
前回のCore i5-2400の結果は325秒、92~100Wでした。
試しにCore i7-3770KのHTを無効にした場合は定格:253秒、OC:237秒になりました。
今後のエンコード作業を効率的に済ますために使用率が上がらない原因を見つけて、もし個人で改善できるレベルなら改善したいと思い追加でテストを行いました。
ここからはCore i7-3770KのHTをBIOSからON/OFFしてテストしています。(毎回CPU入れ替えるのが辛いので)
まずは使うソフト類は変更せずに(ソフトを探してインストールしてという手間が少ないから)FFmpeg rev.18607のオプション設定を変えながらマルチスレッド処理の邪魔をしているオプションがないかを探してみました。
そこで見つけた原因っぽいのが動画サイズ変更です。
1440x1080から1280x720にサイズを変更しない場合はCPU使用率が50%~80%まで向上しました。
BonTsDemux + Nero AAC コーデック + FFmpeg rev.18607
(1440x1080→1440x1080)
この方法だと一応はHT ONの方がHT OFFより速くはなりました。
しかし変換後のファイルサイズが大きくなってしまう(1280x720:182MB → 1480x1080:339MB)、作業完了までに掛かる時間自体も長くなってしまうというわけで解決策にはなりません。
次にFFmpegを最近のバージョンに変更してみました。使ったのはFFmpeg rev.44854です。
FFmpegはバージョンによって使えるオプションが違ったりしてプログラムだけ適当に変えてしまうとエラー吐いて動かなくなります。オプションを調べて設定を書きなおす作業が嫌でずっと古いバージョンを使っていたのですがせっかくのCore i7-3770Kが性能を有効に使えないままでは勿体ないのでバージョンアップしました。
FFmpeg rev.44854では音声コーデックのlibfaacが使えないので、代わりにNero AAC コーデックを使うようにしました。
FFmpeg rev.18607の時はBonTsDemuxからFFmpegを呼び出して、BonTsDemuxでm2v+wavに分離しながらFFmpegで一発でmp4に変換していましたが、この方法が使えなくなったのので処理を3段階に分けたバッチファイルにして実行しています。
No.1. BonTsDemuxでTSをm2v+wav形式に分離
No.2. Nero AAC コーデックでwavをaacに変換
No.3. FFmpeg rev.44854でm2v+aacからmp4に変換
他に使えなくなったオプションを削除して、代わりになりそうなものに置き換えました。
先に書いておきますがバージョンアップとオプションを変えた影響で、エンコード時の圧縮率と画質が向上した代わりに処理が重くなってしまったようです。
2年分もバージョンが進んでるので同じような設定をしたつもりでも結構が変わってるのかな?
テストに使っている10分間の動画は変換後のファイルサイズが182MB→154MBになりました。
画質っていうのは動画見てるくらいじゃ自分は判別できないレベルなんですが、ファイルサイズが小さくなったので劣化してるんじゃないかと思い動きのあるシーンを何箇所か静止画にして拡大してみたらrev.44854の方がノイズっぽいのが少なかったという感じです。
録画したものの画像を個人で楽しむ以外の目的で使ってしまうと怒られてしまうので比較画像が貼れません。ご了承ください。
BonTsDemux + FFmpeg rev.44854 (1440x1080→1280x720)
掛かった時間(全体)は上に書いた手順No.1~No.3迄の合計です。
m2v+aac→mp4はNo.3の作業に掛かった時間です。
エンコード中のCPU使用率はHT:ONのがだいたい70%~100%の間を推移、HT:OFFだと90%~100%になります。
rev.18607のCore i7-3770K(定格 HT:OFF):253秒(表外に追記した数値)と
rev.44854のCore i7-3770K(定格 HT:OFF):287秒(全体)/264秒(No.3のみ)
を比べるとHTなしのCPUでは処理にかかる時間が伸びています。
→(私の使用方法・設定では)rev.44854のエンコードは処理が重くなった
rev.44854のCore i7-3770K(定格 HT:OFF):287秒(全体)/264秒(No.3のみ)
rev.44854のCore i7-3770K(定格 HT:ON) :251秒(全体)/229秒(No.3のみ)
を比べるとHTありの処理速度が上がっています。
→Hyper-Threadingが有効に活用できるようになった
それで最後にrev.18607の時はHTなしの方が高速だったので
rev.18607のCore i7-3770K(定格 HT:OFF):253秒と
rev.44854のCore i7-3770K(定格 HT:ON) :251秒(全体)/229秒(No.3のみ)
を比べると処理に掛かった時間がほぼ同等になりました。
これは変換する動画の長さが10分なのでこの程度の差になってしまうんですが30分の動画では
rev.18607のCore i7-3770K(定格 HT:OFF):772秒
rev.44854のCore i7-3770K(定格 HT:ON) :743秒(全体)/673秒(No.3のみ)
という結果も出ました。
→rev.44854で圧縮率が上がって処理が重くなったにも関わらずHyper-Threadingにより同等以上のスピードで処理できるようになった
ちょっと無理矢理な気もしますがどうでしょう?
◆消費電力
アイドル状態とOCCTのCPUテスト実行時の消費電力も計測しました。
同じ世代のCPU同士なのでCPUテストの時は動作周波数とHyper-Threadingの有無で順当に差がついている感じです。アイドル時はほぼ同等です。
Core i7-3770KとCore i5-3570Kを比較してみて4Cores/8Threadsの効果がよく出るソフトもあればあまり出ないソフトもありましたが大抵の場合は上位のCore i7-3770KがCore i5-3570Kに負けることはないという結果になりました。
ただ、Hyper-Threadingがあまり効かない用途で使用してオーバークロックすることまで前提にして検討する場合は値段が安いCore i5-3570Kにも選択するメリットがあると言えそうです。
エンコードのところは最初から新しいバージョンのFFmpegを使ってたら「CPU変えたらやっぱり処理時間が短くなったよ。めでたしめでたし」ですんなり終われた気がするんですがどつぼに嵌まりました。
躓いたこともそのまま書いたほうがそんなこともあるんだね程度の参考になるかと思ってどうにか書きましたが、結果苦しいレビューになりました。書いてる自分でも何がなんだがわからなくなりそうな状態なので読んだ人に伝わらないのではないかと・・・。
最終的にはエンコード環境が良い感じに更新できたので大満足です。
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発売がTop Gun Reviewの締め切りタイミングと被っていたので、すぐにはインストールできなかったんですが落ち着いたのでWindows8 Proをインストールしました。
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