KLIMAX DS徹底攻略 第六話

スタジオのシステムと聴き比べる

■筆者それでは早速KLIMAX DSを聴いてみましょう。

▼武田氏まずは誰でも知っている曲からかけてもらえますか。

■―そうですね、宇多田ヒカルあたりをかけてみましょうか。

▽太田氏いいですね。宇多田のCDはアレンジがすごく良いですからね。それから、STUDERのD730とPro ToolsでリッピングしたものとKLIMAX DSの3つで聴き比べてみましょう。D730とPro Toolsは普段から聴き慣れていますので。

■―わかりました。それでは宇多田ヒカルのWait & Seeをかけてみます。

▽村井氏うーん。KLIMAX DSは音が艶々としていますね。ただしエンジニアが意図している音はD730が再生した音だと思います。善し悪しではなくて。

▽太田氏KLIMAX DSは奥行きといい幅といい、立体的な音がしますね。

■―私もこの立体的な音楽表現が気に入っています。

▼武田氏サビのところでSEが「ショーン」と横から回り込んでくるところがKLIMAX DSはリアルですね。イントロのコーラスが壁の奥に「すーっ」と消えていくところもいいですね。D730やPro Toolsだと中々見えてこない。

その後も、手嶌葵や鬼太鼓座、ベン・ハーパーからボブ・マーリーまで様々な曲を再生した。

▽村井氏アコースティックギターの定位がすごく分かりやすいですね。面白いほど「こっちですよ、あっちにいますよ」というのがよく分かります。それから、定位だけでなく音域的にも分解能が高く聴き取りやすいです。

▽太田氏太鼓の音はD730で聴いた方がドロドロとした「来る」という感じがしました。ただし低音の制動はKLIMAX DSの方が断然良かったです。太鼓の連打にも全く音の芯が揺るぎませんでした。定位や空間の描き方は申し分ないですね。

▼武田氏こういった通常のプレーヤーでは再生できない音(KLIMAX DS)を聴かされると我々エンジニアはまた手直しをしたくなってしまいますね。こういう再生装置が標準になればエンジニアリングも変わってくると思います。

KLIMAX DSをコンソールに接続 STUDER D730 Pro Tools

スタジオマスターを聴いて

■―今まではCD音源を聴いていただいたのですが、次はLINNレーベルのスタジオマスター音源を聴いて下さい。

▽太田氏小さい音と大きい音とでクオリティが変わらないところがすごいですね。普通は変わりますよ。小さい音はボケるはずなんですけどね。

▽村井氏これを録音したエンジニアはKLIMAX DSで最高の音を再生できるように作っているのでしょうけれど、それにしてもこういう受け皿の大きい再生装置が相手では化粧をしていいのか、露わにしていいのか、マスタリングに困りそうですね。

▼武田氏うちのスタジオではノイズ対策のためにSCSIのHDDを使用しています。データが出入りするときにCPUに負担をかけなければ、それだけデータにも悪影響を及ぼさないからです。スタジオマスターのような上位フォーマットを扱うにはDSシリーズのようにNASからDAの直前までをFLACで伝送するというのは理に適っていますね。

DYNAUDIOのパワードスピーカー