レビューメディア「ジグソー」

Riot Blueの3人の個性が良く表されている曲達が収められているCD

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。以前は、音楽活動をしているアーティストが楽曲をリリースするということは非常に敷居が高いものでした。採算度外視の記念制作的自主制作盤はともかく、きちんと「商品として」楽曲を届けるためには、レコード会社の目にとまり、デビューし、CD等をリリースして自分(達)の音楽を世に問うしかありませんでした。しかし、現在はネットを利用した配信やダウンロード頒布という手段があるため、以前よりは楽曲を届けるという点では敷居が下がりました。でも相変わらず「物理的なCD(など)」を頒布するのは、まだ多くの資金が必要です。その夢を、クラウドファンディングという手法で達成したアーティストの1st EPをご紹介します。

 

Riot Blue。女性VTuber3人による音楽グループ。リーダーでプロデューサーの明志雨音(あかしあまね)、癒やし担当詩姫(しき)、お笑いアイドル芸人??舞弦ウラ(まおうら)の、それぞれソロでも活動できるアーティストの3人によるユニットだが、面白いのはコンセプトが「バーチャルワールドと現実世界を行き来する」アーティストだということ。

 

もともとリアルの方の活動が先であったような一部を除き、VTuberとして活動している人の多くは、いわゆる「中の人」を感じさせないような行動をとっている。ネットスラングで言うところの「メタ発言」や「メタい」行動を慎み、纏っているVTuberのキャラクターや世界観からはみ出した、裏の話や現実世界とのかかわり、生身の体を感じさせるような行動を控えることの方が多い。活動内容が調理や工作などの場合、配信で生身を映し出さざるを得ないこともあるが、それらも「手元カメラ」までがリミットで、それ以上生身を晒さない方針のVTuberがほとんど。

 

しかし、Riot Blueは活動の目標を、自分たちが武道館のステージにたって、演奏し、歌うことに置いているため、リアルの体でも活動している。VTuberとしてのイメージを大切にするためか、そのリアルの体を晒すときには覆面やサングラスをつけているので、顔の造作こそわからないが、「中の人」を積極的に晒して活動しており、月に一度は実写オンラインスタジオライヴ配信を行っているし、実際に観客を入れてのリアルライヴもすでに複数回実施している。

 

そんな彼女たちが、オリジナル楽曲が収められたCDをリリースした。

 

Riot Blueとしての二年間(2023年12月で活動二周年)の活動を、次の三年目につなげていくために、オリジナル楽曲でのCDリリース。それを目指してクラウドファンディングを実施したのだ。このクラウドファンディングは「All in方式」、つまり目標金額に達しない場合でもファンディング成立とし、CDは制作するという形式だった。つまり、制作費用が足りなかった場合でも、メンバーが自己負担し、CDそのものは何が何でもリリースするという決意を持った企画。

 

「三人で歌うオリジナル楽曲1曲分とMV、リターンのCD制作」実施のための目標金額として、70万円が設定され、それ以上の支援が集まった場合のストレッチゴールとして、100万円まで到達したなら「各メンバーのソロ曲を一曲ずつ、計3曲を追加で制作」ということでファンディングが開始された。

 

彼女たちのいつもの配信で聴くカバー曲ではなく、彼女たちの創った楽曲を聴いてみたく、自分も支援してみた。1,000円~100,000円まで用意された支援コースの中で、選んだのはひかえめ中間位程度となる10,000円の「オリジナルCD【二年生】コース」。

 

■クラウドファンディング「オリジナルCD【二年生】コース」リターン内容

・お礼のメッセージ(デジタル)
・参加証明証(デジタル)
・参加証明証(オリジナルカード)
・オリジナルCDへクレジット表記
・オリジナル曲音源先行配信①②
・制作進捗デモ音源①
・オリジナルCD
・制作進捗報告動画①楽曲制作編

 

結局ファンドは成功し、開始三日目で当初目標の200%を越え、瞬間的にストレッチゴールをもオーバーランしてしまったのもあり、150万円の追加ストレッチゴール(各メンバーソロ楽曲3曲分のMVを制作)が設定されたものの、これもあっけなく大きく越えて、最終的に一ヶ月間で達成率272%で終了した。

 

それ以降、12月16日に全員曲のコード進行を創ったうーたん(舞弦ウラ)が♪ラララ♪で仮歌を入れたデモ音源、1月2日に「制作進捗デモ音源①」として歌入れ前のカラオケ状態の表題曲、2月22日に「制作進捗報告動画①楽曲制作編」として、各曲の制作状況や担当などを3人が語った15分ほどの動画、3月14日に表題曲「青のかけら」とうーたん個人曲「LaLa☆Urara」の先行公開(オリジナル曲音源先行配信①②)、4月26日にできあがったCDの開封動画と参加証明証(デジタル)と言う感じでリターンが届けられてきた。

 

そして支援からちょうど半年後の2024年4月27日に、現物のCDが届いた(当初実物カードの参加証明証は同梱予定だったが、後日発送になったので、5月8日現在唯一未着)。

「青のかけら」の物理CD。(初期)ストレッチゴールを達成したので、3人の個人曲を含む4曲入り。
「青のかけら」のCD。(初期)ストレッチゴールを達成したので、3人の個人曲を含む4曲入り。

 

cybercatの曲
オリジナルCDへクレジット表記=CDにはcybercatの名も刻まれている

 

全員曲と3人それぞれの個人曲の計4曲が収められたCD、それぞれ曲は聴き応えがあった。

 

まず表題曲の全員曲である「青のかけら」は三人歌唱だが、いわゆるハモリやユニゾンになっている部分はあまりなく、順にソロ歌唱廻しが基本。うーたんが考えたコードのラフに対して、メンバー三人がメロディを持ち寄って「Aメロは○○の」「サビは△△の」「ブリッジは××の」という感じで三人のアイデアを合体させて創ったもののようだ(リターン動画の「制作進捗報告動画①楽曲制作編」には、どの部分に誰のメロディが採用されたかが語られているのだが、限定動画の内容なのでここでは伏せる)。ピアノはパンダピアニスト?イオ氏、ベースはPinkish Crownの藤咲恵里佳氏、アコギとヴァイオリンはうーたんが弾いていて、ドラムスは打ち込みではあるものの、かなりバンドっぽい仕上がり。Aメロ⇒Bメロ⇒サビ⇒Aメロ⇒Bメロ⇒サビ⇒Cメロ⇒落ちサビ⇒ラスサビの構成で、Cメロ前までは三人が1ブロックをひとりずつ歌い、Cメロと落ちサビはフレーズごとに分け合い、ラスサビ全員歌唱という造りだが、中性的な声の雨音さんから入り、切ない感じの透明感高い詩姫ちゃんの声や、艶があるうーたんの声を経て、最後に全員歌唱に雪崩れ込んでいくのは、聴いていて高揚感がスゴイ。躍動感溢れる楽曲。

 

つづく「LaLa☆Urara」は、どこを切ってもうーたんらしさに溢れている。うーたんは、「お笑いアイドル芸人」を名乗っているだけあって?芸達者で、配信でもヴァイオリン、ヴィオラ、ギター、キーボードにオタマトーンまで操るし、しゃべりも楽しいおもしろキャラなのだが、歌詞にも曲にも、途中ラップ?も挟んだ歌い方にも彼女らしさが溢れていて、非常に楽しい曲。聴いていてハッピーになれる。

 

ピアノの弾き語りという感じで始まり、バンドが途中で加わってドラマチックに盛り上げるのは、詩姫ちゃんの個人曲「Regulus」。全天の一等星の中では一番暗いと言われる獅子座のα星、Regulusを歌っている。これは歌詞が良い。♪霞んで見えなくなっていた/本当の光/『君はレグルス』♪ゆったりとしたバラード調の曲に、詩姫ちゃんの優しいヴォーカルが被さり、癒やされる。

 

ラストはリーダー雨音さんの「LOST END」。この曲でも藤咲氏のベースが入り、そのプレイが、タム廻しも多く使ったドラムパターンと絡んでグングン前に進ませるロックチューン。静と動の切り替えがはっきりした曲で、1コーラス終わった後のブレイク、間奏後半の語りの部分から曲に戻るところの半速進行、その後のリズム復帰でバーンとくるところなど、アレンジも良く、キャッチー。サビ歌詞の♪灰になりたくて♪は「ハイ(High)になりたくて」ともとれる、前進力ある曲。

 

最近ダウンロード販売であれば、比較的制作費用を抑えて楽曲リリースすることも出来るが、やはり形になったCDというものがあると、活動が「実になっている」という印象が強くなる。3年目という一番勝負をかけなくてはならないタイミングの活動を後押しするアイテムとして使えるアイテムでもある。

 

クラファンの成果としては、後は各曲のMVが制作されているはずなので、それを楽しみに待ちたいと思える曲達が詰まったCDでした。

 

【収録曲】

1. 青のかけら

2. LaLa☆Urara

3. Regulus

4. LOST END

 

「青のかけら」

 

◆Download / Stream https://linkco.re/H4AaGDDb

更新: 2024/05/08
必聴度

楽曲は「らしさ」溢れているが、普段はしている楽器演奏がうーたん以外ないのが....

今回メンバーの演奏としては、うーたんのプレイのみが収められたが、配信では詩姫ちゃんや雨音さんもギター弾いてるし、Riot Blueとしてのバンド配信の時は雨音さんはベースも弾いているので、次の作品では三人のプレイも期待で!

  • 購入金額

    10,000円

  • 購入日

    2023年10月27日

  • 購入場所

    うぶごえ(オリジナル楽曲制作プロジェクト)

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