HUMはイヤフォンの分野では主にカスタムIEMや、高級ユニバーサルIEMのブランドとして知られています。このTaraも、約20万円のIEM（カスタム・ユニバーサル共に存在します）、Doloresの標準添付ケーブルとして使われているものですが、ケーブル単品でも販売されているというものです。

音質評価は、写真の通りAstell&Kern KANNと64AUDIO U3の組み合わせで行っています。

純銅製の太めのケーブルは、全般的に中低域がゆったりとしていて、高域のキレもやや甘めというのが一般的なイメージですが、このケーブルは良くも悪くも銅線らしさが感じられません。

帯域バランスでいえば低域がやや薄く、高域方向の伸びに優れるハイスピード系の音質です。トーンバランスはクール系で、アップテンポの楽曲の軽快さなどはなかなか心地の良いものがあります。

しかし銅線に期待される音場の濃厚さなどは感じられず、「Shape Of My Heart / Sting」などは少し味気なく感じられてしまいます。質が低いというわけではないのですが、64AUDIO製イヤフォンの持ち味である空間の濃密さが削られてしまう傾向があり、相性はあまり良いとはいえません。

試しにJH AUDIO Michelleでも使ってみましたが、高域の解像度は純正ケーブルよりも数段上であるものの、高域の強調感が強くなり少々聴き疲れする音になってしまいました。また、Michelleの高域の質感がU3と比べて劣っていることがシビアに表現されてしまいます。

圧倒的に低域寄りのバランスである、HEIR AUDIO 2.Aiでは、今まで組み合わせたケーブルよりはバランスが一般的な方向に近づきますが、これが良いかどうかは別問題で、圧倒的な低域の濃さが削がれてつまらない音になってしまう辺りは難しいところです。

販売価格（今回は9,000円）を考えればまずまず質の良いケーブルなのですが、銅線でありながら銅線らしくない音であるだけに、組み合わせはなかなか難しいところがあります。

他にも色々なイヤフォンで試してみたのですが、好相性と呼べるほどの組み合わせを見つけることは出来ませんでした。そういった相手があればもっと良い評価が出来たのですが、残念ながら見つからなかったことで評価も半端なものとならざるを得ませんでした。