ヒーローの傍らにはいつも名車がいた
胸のすくようなアクション、心温まるヒューマンドラマ、ため息つくような恋の駆け引き…。僕らの胸を躍らせてきた数々の映画。スクリーンの中の主人公の傍らには、いつもその時代を彩る名車がいた。20世紀の初頭に誕生した自動車は、ほぼ同時期に登場した映画にとって最も付き合いの長いパートナーだ。またカットの端に何気なく映り込んだ車一台で、その時代背景までもが鮮やかによみがえる。僕らの生活にしっかりと根付いた自動車は、単にヒーローの窮地を救う相棒という役回りだけでなく、物語の時代を裏付ける重要なキーマンでもあるのだ。今回はそうした映画の中の名車たちにスポットを当ててみよう。
物語の中の味のある名脇役たち
ハリウッドの絶頂期、アメリカ映画の主人公はマッチョと車と拳銃だった。絶望的なピンチの数々を乗り越え、超人的な活躍で悪の親玉をなぎ倒す。その姿はまさに世界の警察官、当時のアメリカを象徴するものだった。そんなマッチョの代表格といえば、やはりシュワちゃんことアーノルド・シュワルツェネッガーだろう。80年代から90年代にかけてターミネーター、コマンドーなど年一回ペースで大作アクションに出演してきた彼は、ジェームズ・キャメロン監督とタッグを組んだ1994年公開の映画「トゥルーライズ」で、大統領直属の秘密機関「オメガセクター」の凄腕スパイ・ハリーを演じる。彼はジェイミー・リー・カーティス扮する美しい妻ヘレンが浮気しているのではと思い悩み、職権を乱用して彼女を尾行するのだが…。
この尾行シーンで妻ヘレンが乗っていたのがホンダCR-X。CR-Xは1983年から1997年まで3世代発売されたが、映画の中に登場するのは初代のバラッドスポーツCR-X(アメリカではCIVIC CRXとして発売された)。ジグソーユーザーのもちものである「SiR」は1.6L DOHC VTECエンジンを搭載した2代目の後期の型だ。CR-Xはコンパクトで燃費が良く滅法速いという、まさに当時の日本車を代表する一台。80年代末から90年代は、日米の貿易摩擦は激しさを増し、自動車を中心にジャパンパッシングの模様が連日TVで流されていたものだが、それとは裏腹にCR-Xを始めとする日本車がアメリカ人の生活にすっかり溶け込んでいた様子がうかがい知れる。



