贅沢な一時間 ─芳醇な葉巻の世界─

全ては儚い一時間のために

「嗜好品」というものは、本当に手がかかる。こだわるほどに高価になり、管理が難しくなり、楽しむまでの手順も煩雑になる。だが、一度その魅力を知ってしまうと、その煩雑な手順までもが楽しくなってしまう。まったく、趣味人というのは一筋縄ではいかない人種である。

ワインなどと並べて語られる事もある葉巻も、手のかかる嗜好品だ。葉の種類、原産地、作成手順、保存方法、カットの種類、そして着火方法にいたるまで、様々な要因で味がガラリと変わってしまう。特に重要なのは保存だ。温度は15度から20度、湿度は68度から72度に保つのがベストといわれる。その奥深さを堪能するには「ヒュミドール」という専用の保管ケースが必要で、数週間から時には数年寝かせる事によって、その魅力的なフレーバーを楽しめるのだ。専用のケースで寝かせ、葉の香りを楽しみ、吸い口を好みの形にカットし、たっぷりと時間をかけて満遍なく着火…。これだけの手間を掛けても、紫煙をくゆらせる至福のひとときはたった1時間ほど。なんと「贅沢な一時間」だろう。この刹那の幸福に葉巻愛好家たちは惜しみなく時間を投資する。そのため、素晴らしい逸品を手に入れたはいいが、もったいなくて吸うに吸えない、というジレンマを抱えてしまう事もしばしばなのだが…。

男たちを惹きつけてやまないシガーの魅力

この「贅沢な一時間」に魅了された著名人は多い。有名原産地であるキューバの国家元首フィデル・カストロ、カストロの影響で葉巻を始めたといわれる伝説の革命家チェ・ゲバラ、シカゴマフィアの「ギャングスター」アル・カポネ、またマーロン・ブランドやチャールズ・チャップリン、フランク・シナトラ、マイケル・ジョーダンなど、世界的に有名な「男が憧れる男たち」に愛好家が多いのも葉巻の特徴だ。

 


H.Upman Naturals
(zigsowユーザーのみ閲覧可能)

CIGAR COLLECTION(zigsowユーザーのみ閲覧可能)

 

 


COHIBA(zigsowユーザーのみ閲覧可能)

 

 

第35代アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディも愛好家として有名だ。そしてこんなエピソードがある。ある日、彼は主席報道官を呼んでこう言った。「私は葉巻を大量に入手したいんだ。明日の朝までに」。報道官は「どのくらいですか?」と聞き返した。ケネディは答える。「H.Upmannを1000本ほどだ」。かくして翌日の朝、報道官が手を尽くして集めた1200本の葉巻を前にニッコリと笑ったケネディは、机の上にあったキューバとの交易禁止を決める書類にサインをした。大統領といえども、その葉巻の魅力に抗う術はなかったようだ。zigsowユーザーさんのもちものは、ケネディが愛したH.Upmannの中でもかなりレアな逸品。ケネディが見たならば、おそらく舌舐めずりした事だろう。

zigsowユーザーさんのもちものにある「Romeo Y Julieta」(ロメオ・イ・フリエタ、写真右)は、イギリスの首相ウィンストン・チャーチルが愛した葉巻。第二次世界大戦中、極太の葉巻を手に国民を鼓舞する姿はあまりにも有名だが、そのパートナーであったのが「Romeo Y Julieta」だ。彼が好んだことから長さ178ミリ以上で直径18.65ミリ以上のものを「チャーチルサイズ」と呼ぶようになった。一方、zigsowユーザーさんのもちもの「COHIBA」はキューバのカストロが「最高の葉巻を作れ」と指示して生まれたブランドで、カストロ自身も愛飲した銘柄。このSigloⅠはコロンブスのキューバ発見500年を記念して作られたシリーズだ。コイーバは1968年創立とシガーメーカーにしては新しいが、すでに最高級シガーといえば必ず名前が上がるほどのブランドで、「ハバナシガーの王様」とも言われている。ちなみに、SIGROシリーズはⅠからⅥまであり、中でもSIGROⅥはハバナシガー最高峰と言われる葉巻ファン垂涎の逸品だ。

葉巻の発祥と現在

 

Davidoff(zigsowユーザーのみ閲覧可能)
さて、数々の男たちに愛され、時には著名人たちのトレードマークとして存在感を誇示してきた葉巻は、いったいいつ頃に作られたのだろうか。実は、まだはっきりと分かっていないのだが、古代マヤ文明の時代にはすでに存在していたという説が有力で、メキシコのパレンケ遺跡にある石柱には葉巻を吸う神の姿が刻まれているという。ヨーロッパが介入する以前のアメリカ先住民たちも広く喫煙の習慣を持っており、大航海時代の到来と共に全世界に広まっていった。

現在の形での販売は、1840年創立の「H.Upmann」や1845年創立の「Partagas」が老舗として有名。その後も1970年代まで次々と新ブランドが誕生し、現在は中南米を中心に数十社が生産を行っている。葉巻の一大生産地といえばキューバをまず思い浮かべるが、それ以外の国にも有力なブランドは多数存在する。たとえば元々キューバの企業だったのだが、キューバ葉巻の在り方に疑問を抱き、1990年に製造の全てをドミニカ共和国に移したブランドがzigsowユーザーさんのもちものの「Davidoff」だ。徹底した品質管理と専用の良質な農園を持つことでキューバブランドに負けない最高級の傑作を世に送り出し続けている。品質のブレの少なさやラッパー(最も外側の葉)の美しさも評価が高い。他にも、キューバに負けじと最高品質を求め続けるニカラグアのシガーブランド「PADRON」がある。特に創立40周年を記念して販売した「パドロン1926 40thアニバーサリー」はシガー専門誌で世界一の称号を得たほどの名品。キューバ産以外で唯一偽造品が存在する葉巻としても知られている。ちなみにお値段は、1箱40本入りで35万円也。

「葉巻を味わうことはひとつの出来事であり、くつろぎそして楽しみの期待のひとときでなければならない」(Davidoff創設者ジノ・ダビドフ)

至福の時を楽しむために…

TALISMAN(zigsowユーザーのみ閲覧可能)
CIGAR CUTTER(zigsowユーザーのみ閲覧可能)

葉巻に対して「きつくて苦い」という印象を抱いている人もいるが、正しい楽しみ方をすれば決してそんな事はない。愛好家には釈迦に説法ではあるが、興味があっても試したことがない人のために、いま一度シガーの楽しみ方をおさらいしよう。
葉巻きはラッパーという葉で吸い口が閉じられているため、吸う時にはまずここに吸い口を作る必要がある。その際に特別な道具が必要になるのだが、吸い口の口当たりの良さを重視するならシガーパンチがオススメだ。慣れてくれば、zigsowユーザーさんのもちもののようなフラットカット(ギロチンのように吸い口をカットする)やナイフを使って楽しむのもいいだろう。ナイフをサッと取り出しスマートにカットする姿は男のダンディズムを感じさせる。さて、吸い口に穴を開けたら、火をつける。まずは葉巻全体を軽くあぶり、先端にゆっくりと回すように着火する。この時、タバコのように吸いながら火をつけるのは厳禁。手に持ったまま、ゆっくりと。火が付いたら、軽く優しく吸ってみる。もちろん、肺には入れずに口の中で味わい、煙を吐き出す。注意すべきは灰だ。タバコを吸う人は灰をこまめに落としがちだが、葉巻の灰は固いので3センチ程度まで放っておくべき。前述したイギリス首相チャーチルは、演説の時に灰が落ちないように針金を仕込み、聴衆に「いつ灰が落ちるのだろう」という緊張感を与えて自分への集中力を切らせなかったという逸話もある。それは極端な例だが、その灰が先端の温度を調節してくれるので、常にある程度の灰が付いているのがベストなのは間違いない。あとは、焦らずに1分間に1度くらい吸って煙を味わえば、忘我の時を味わえるのだ。

Humidor(zigsowユーザーのみ閲覧可能)
 

冒頭にも書いたが、葉巻きは適切な環境で寝かせる事によって、味わいがさらに熟成される。その奥深さを存分に味わうのであればヒュミドールに保管し、数ヵ月後、1年後、数年後と分けて味わうべきだろう。ヒュミドールはそれなりに値段も張るがzigsowユーザーさんのもちもののようなインテリアとしても見た目の良いものが揃っているので、ぜひとも購入しておきたい。ワインと同じく、葉巻も熟成されて味が大きく変わる。一般的に、最も味わい深いのは5年から7年寝かせてからと言われているほど。数ヶ月後、数年後に味がどう変化するのかを想像するのも、葉巻の大きな楽しみ方のひとつだ。

無論、吸いたくなれば、我慢する必要はない。もう一度、数本入りの葉巻を購入し1本だけ味わえば良いのだ。こうして、ヒュミドールの中で自分だけの葉巻が育っていく。数年後、より濃密に味わい深くなった葉巻を楽しみながら、その年月に想いを馳せてみよう。数年分の重みを持つ「贅沢な一時間」…。それこそが葉巻の真骨頂なのだ。