と、比較的身近な技術だけに、実使用も一番身近な面からいってみよう。
先ほども名前を出したWindows7の「Xp mode」だ。
誰ですか、お前それしか使えないから誤魔化してるんだろとか言ったのは。
図星なんで言わないで下さい。
仮想OSといっても正真正銘のOSなので、その分のライセンスが必要になるのだが、「Xp mode」に関してはWindows7のPro以上にその分のライセンスが含まれている形になる。
そしてそれを使うための仮想PCソフト「Windows Virtual PC」もあわせてダウンロードすればあっという間に仮想環境の出来上がり(余談だがXP modeは別の仮想PCソフトで動かしても問題ない。VM wareにはインポート機能もある)。
今回使用するPCはレビュー用に用意されたパーツを含めて下記の構成。
CPU:Intel Core i7 3770
M/B:Intel DQ77MK
MEM:DDR3 1600 16GB(XPmodeの割り振り2GB)
HDD:HGST 320GB Deskstar HDT721032SLA380
OS:Windows7 Ultimate 64bit
実際の設定はハードウェア的な機能だけにマザーボードのBIOS(UEFI)設定画面から行う。今回使用するIntel DQ77MKは「Security」というタブがあり、その中にVT関連の項目がある。
今回使用できる「VT」は2つあり、CPU側の「VT-x」とチップセット側の「VT-d」だ。一般的に現在IntelVTというとCPU側のVT-xの事を指す場合が多く、マザーボードでの設定項目名も「Intel Virtualization Technology」と「Intel VT for Directed I/O (VT-d)」とVT-x側がメインの名前になっている。
ちなみにH77チップを搭載したIntel DH77DFと3570Kの環境だと…
同じSecurityの項目が随分スッキリしていてVT-d等の項目がない。この辺がQ77&無印3770の効果か。
で、そもそもXp mode…というかWindows7の「Windows Virtual PC」は当初IntelVT(VT-x)が「必須」だった。つまり対応していない環境や無効になった状態だと起動時に弾かれてしまったという訳。しかし今はその制限が撤廃されているので「必須」ではなく「推奨」といったところ。
VT-dに関しては特に記述が見当たらないので…効果が無い可能性が高いがとりあえずやってみよう。
VTの項目をそれぞれ・両方オフにしても見た目上は変わらず起動する。但しVT-x設定をオンにした方がXP modeの起動は速くなっているようだ。
そこで起動時間を計測。XP modeを完全にシャットダウンした状態からの起動速度と、恐らく通常利用で多用される休止状態からの復帰速度をVT(両項目)有効・無効状態、そしてVT-x or VT-dのみ有効の状態で計測してみる。
VT-x/VT-d無効 :シャットダウンからの起動→59秒 休止状態からの復帰→8.2秒
VT-xのみ有効 :シャットダウンからの起動→48秒 休止状態からの復帰→6.7秒
VT-dのみ有効 :シャットダウンからの起動→59秒 休止状態からの復帰→7.3秒
VT-x/VT-d有効:シャットダウンからの起動→52秒 休止状態からの復帰→6.8秒
VT-xを有効にすると起動・復帰共に確実な速度向上が見られている。今回使用したPCは2008年製の古いHDDを使用しているので、最近のHDDやSSDならより速くなるだろう。
普通はあり得ないだろうがVT-dのみ有効の場合はあまり速度変化が無く、休止状態からの復帰が少々早い程度だ。
…が、何故か両方有効にするとVT-xのみの時より起動が遅くなってしまっている。何かの間違いかと思って何度か計測したのだが…結果は変わらず。HDD古すぎたか?
尚、休止状態からの復帰の場合ほぼ同等。手動ストップウォッチなので誤差もあるし同じようなものか。まあきっとその分パフォーマンスがよくなるんだよウン!
しかし起動速度以外、XP mode動作中の使用感は正直なところ差がわからない。「Windows Virtual PC」内のOSがシングルスレッド動作に限定されてしまうのもあるかもしれないがとにかくわからん。
とりあえずベンチマーク…少々古い世代だが定番のCrystalMark2004R3を使用。
マザーボードの「Intel Virtualization Technology」と「Intel VT for Directed I/O (VT-d)」を両方オン・片方オン・両方オフの4パターンで計測だ。念のため複数回計測して真ん中辺りのスコアを出したものを結果としている。
HDDのスコアはおかしくなったのでスルーで、CPUとメモリが関連するAPU/FPU/MEM辺りが今回のポイント。
…いや、確かにそれぞれ有効にした方がスコアは上がっているのだが体感できる差なのかと言えば疑問符を付けざるを得ない。途中からVT無しでもXp mode起動OKにした理由がなんとなくわかる。Core i7 3770の元の性能が高すぎて力技のゴリ押しが効いてしまっているようだ。
ためしにXPmode内とホストOS(Windows7)側で同時にCrystalMark2004をぶん回してみた。VTは双方有効なので先ほどの左上のスコアと比べていただきたい。メモリこそ双方から同時アクセスしたせいでスコアが低下しているが、CPU周りのスコアは大した低下が見られない。CM2004R3自体が4スレッドまでの使用とはいえどんだけ余裕あるんだよお前は。
とりあえずXp mode(Windows Virtual PC)単体起動においてはVTあろうが無かろうがCore i7 3770のゴリ押しパワーでなんとかなってしまうというここまでひっぱっておいて台無しなオチを作ってしまった。どうすんだよこれ!
他の方のレビュー結果をカンニング…じゃなかった拝見すると、どうやら複数の仮想PCを同時稼動させる等重負荷がかかった時により本領を発揮するようなので、私が今回やったようなXp mode単発起動というフツーな使い方ではこの結果も妥当なところのようだ。
とはいえ次回のお題であるトラステッド・エグゼキューションテクノロジーをオンにすると強制的にこちらのVT2項目も有効になる。きっとこれが次回につながるハズ…というかつながってくれ。
余談だけど我が家のメインPC、Xeon E3-1260L+B75という組み合わせでVproプラットフォームではないもののVT-x・VT-d双方使用可能。XPモードもソレで動かしていたのでVTに関しては今まで「よくわからんけど仮想化にいいんだろ」くらいな感じて使っていたので勉強するいい機会でした。
逆に全く使った事がないコレ以降のレビュー、果たして付いていけるのか…