撮影場所を決めよう

 天体写真を撮るならどこかいいか?と聞かれたら、“街灯りから離れており、空が開けているところ”となるだろう。しかし、山奥がベストだとはわかってはいても、遠くまでそうそう行けるわけではないだろう。近場でできるだけ天体写真に適した場所を見つけるにはどうすればいいのだろうか。

 また、実際に星空の下に立ったとしても、星の並びが全く分からなければ写真は撮れない。適当に星空を写してもたぶん、つまらない写真にしかならないからだ。星を知り、星座を知り、できれば自宅で構図などの予習をしておくと、現地でスムースに撮影に入ることができるだろう。ここでは天体写真に向いた観測地の見つけ方と、星の見つけ方を解説する。


光害の素からできるだけ離れよう

 天体写真の大敵である光害(こうがい・ひかりがい)は、街灯やネオン、照明の光が空気中で反射・錯乱したものだ。上空で反射した光は淡い星の光をかき消してしまう。この光害から逃げるには、街からひたすら離れるしかない。もし、肉眼の限界といわれる6等星まで見たければ、都会から100km以上離れた山野にいかなければならない。よい空の下ならば素晴らしい作品が撮れる可能性は高まるが、街中でもちょっとしたポイントを把握すれば昨今のデジタルカメラならば撮影が可能な場所はたくさんあるのだ。

 街あかりがある以上、上空で反射してきた光害は防ぎようがないが、数m〜数十m程度の高さから反射してくる光ならば、その素となる光源からできるだけ離れればよい。具体的には、街灯、大通りのネオン、クルマのヘッドライトなどがある。これらは猛烈に明るく、天体写真にとって大敵だが、50mも離れればその影響は大きく薄まる。

 つまり、広い公園や海岸、河川敷など、開けていてできるだけ街灯が少ないところを探せばよいのだ。

 また、光源から水平方向に離れるだけでなく、上方向に離れるのもよい。街灯は基本的に下向きに光を放っている。街灯より上に出れば影響は小さくなる。たとえばマンションでも1〜2Fのバルコニーと6F以上のバルコニーを比べると、後者の方がはるかに街灯の影響は少ない。同じ場所でも高さによって光害の強さが違うということも覚えておこう。

 天体写真における背景宇宙の明るさは、その場所での光害の明るさで決まる。天体写真の適正露出は、その背景宇宙の明るさで決まるため、暗い星を写そうと、高ISO感度で長時間の露出を行っても、背景宇宙が明るければあっという間に飽和して真っ白になってしまうだろう。

郊外の河川敷。上空で反射する光害は防げないが、近距離光源(街灯・自販機)から離れれば、露出が1〜2段違ってくる。

光害の少ない天文適正地。街から離れており、標高もそこそこ高く、開けているところがよい。観光地の公営駐車場などが適しているだろう。

写真の構図を考えよう

 夜空には均一に星があるわけではなく、星が密集しているところや、明るい星がほとんど無いところなど、実はけっこうなメリハリがある。こうしたメリハリを写真の構図として取りこむことで、作品づくりができるのだ。

 また、星空は日周運動によって、天の北極(≒北極星)を中心に円運動をしている。北方向を撮影すれば、星の輝星はきれいな円を描く。天体写真を始めたならば、誰もが撮ってみたいと思う構図の一つだろう。

 こうした構図は撮影現場で考えるのではなく、自宅で構想を練っておくと成功しやすい。このときは、天文シミュレーションソフトウェアの「ステラナビゲータ」が便利だ。自分の使っているカメラとレンズの焦点距離を入力すれば、写野範囲を示す枠が画面上に表示される。場所と時刻をセットすれば、どの星が何時ごろに昇ってきて、何時ごろ南中するかなど、細かいシミュレーションが可能だ。

 ステラナビゲータには軌跡を表示させ、日周運動をシミュレートする機能もあるので、自分のレンズで何分露出すれば、どの程度の星が軌跡を伸ばすのか予想できる。

天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ9」

ステラナビゲータの写野枠表示機能とアニメーション機能で、星の軌跡の長さをシミュレート。どういう構図になるのか事前に把握できる。

目的の星を探そう

 星が好きな人ならすぐに分かる星座の星並びも、知らない人には何がどこにあるのかさっぱり分からない場合が多い。それでもオリオン座や北斗七星、カシオペア座など、メジャーな星座ならば分かる人もいるだろう。

 たとえば、北極星は北斗七星もしくはカシオペア座から見つけることができる。北極星は2等星とややくらいが、まわりに明るい星がないため、案外見つけやすいだろう。ただ、それ以外の星座となるとなかなかわからないかもしれない。「あの天頂付近に見える明るい星は何だろう?」などと思ったときに、すぐに調べられれば便利だ。

 一昔前ならば、星座早見盤を使うのがセオリーとされていたが、今では便利なデバイスが多数あるので、それらを使わない手はない。ニンテンドーDSソフトの「星空ナビDS」は、カートリッジ内に全方位センサーを内蔵しており、DSを向けた方向の星空を示してくれるものだ。その精度は公称で±5度以内。5度とは、腕を伸ばした手に持った5円玉の穴の大きさ程度だ。筆者が使った感触では、±1〜3度以内で使える精度を持っている。

 逆に、特定の星や星座を探すこともできる。例えば、「ベガはどれだろう?」と思ったら、名前をセットすれば、画面上にベガの方向を示した矢印が表示される。

 iPhone/iPadアプリケーションである「iステラ/iステラHD」も同様の機能を持ったアプリだ。いずれもiPhone/iPad内蔵の加速度センサーを使って方位と特定している。

カートリッジ内にセンサーを内蔵しているため、DSがデジタル早見盤になる画期的なソフトだ。「今見ている星空」を知ることもできるし、「知りたい星・星座」をセットすれば画面上に矢印が表示され、DSをその方向に動かせば、目的の対象までいざなってくれる。
http://www.astroarts.co.jp/products/hoshizora-navi/

iOS用アプリの「iステラ/iステラHD」でも同様のことが行える。GPS内蔵機種ならば、その観測地での夜空を的確にシミュレートする。まずは肉眼で見える明るい星がなんなのかを確認し、画面上と実際の夜空のスケール感覚の違いを把握することから始めるとよいだろう。
http://www.astroarts.co.jp/products/istellar/ http://www.astroarts.co.jp/kachoufugetsu-fun/istellarhd/

試写で構図を合わせよう

 写真の構図はカメラのファインダーを覗いて合わせる。一般写真では何ら問題のないこの行為が、天体写真では実は難しい。その理由はファインダーの暗さにある。肉眼では見える星々もファインダーを通してみるとほとんどが見えなくなる。レンズの明るさによるが、1等星は見えても2等星以下はまず見えないと思った方がいい。

 ライブビューでも星はほとんど写らない。ライブビューの表示は、いわば1秒間に10〜30コマの動画撮影をしたものなので、1コマあたりの露出時間は1/10〜1/30秒しかない。星を写すには少なくとも2〜3秒のシャッター速度が必要なので、ライブビューでは1等星のような明るい星以外は写らないだろう。

 となると、構図合わせには実際に試写を繰り返すしかない。ISO感度を最大まで高くし、1〜3秒程度の露出で撮影し、プレビューで構図を確認するのだ。星の並びさえ確認できればよいので、適正露出である必要はなく、ノイズでザラザラでもかまわない。

 天体写真に慣れるまでは、1等星など明るい星を含む構図にチャレンジしよう。織姫星(ベガ)や牽牛星(アルタイル)を含む“夏の大三角”は、秋でも十分撮影できる対象だ。夜半には東の空から冬の星座の代表格であるオリオン座が上がってくる。オリオン座を含む“冬の大三角”も狙い目だ。

デジタルカメラの最大のメリットである、“撮影直後に結果を確認できる”恩恵を最も受けられるのが天体写真だ。露出にしろピントにしろオートは全く使えないし、構図合わせでもファインダーでは星が見えないからだ。そこで高ISO感度設定で数秒露光し、構図やピントのチェックに使いたい。明るい星だけ写っていれば十分なのだ。

構図合わせでは水平出しを必ず行おう

 星景写真では地上風景が入るので、写野の縦横が正確に垂直水平になるようにチェックする。ファインダーでだいたい合わせてすますことが多いが、人間の目は思ったよりシビアで、2〜3度傾いただけでも分かってしまう。レタッチソフトで回転させることは簡単だが、写野面積はけっこう損なわれてしまう。試写後のプレビューで何度も確認し、水平をしっかり出すようにしよう。

朝焼け(画面左端)の撮影中に不意に流れ星が飛び込んできた(画面中央付近)が、カメラが水平ではなかったため、イマイチな作品になってしまった。地平線が入ること多い天体写真では、水平出しは特に気になってしまうのだ。

ライブビューでピントを合わせよう

 星は遙か彼方からのやってくる光であり、面積がゼロの「点光源」という特徴を持つ。点光源は、カメラのオートフォーカス(AF)にとって、ピント合わせが苦手な対象のひとつだ。実際、星にレンズを向けてAFを稼働させてもなかなか合焦しない。たまに合焦してもとんでもないところで止まっている場合がある。

 つまり、天体写真にはAFは使えないと思った方がいいだろう。かといって、ファインダーで合わせるのも難しい。ファインダーの精度範囲内では、点光源の星にとってベストフォーカスとはいえないからだ。

 そこで、最近のデジタルカメラについているライブビュー機能を使う。実際に撮影した画像でピントを合わせるので、理論的に公差などのズレは発生することはない。ただ、ライブビューはあまり感度が高くないので、できるだけ明るい星でピントをあわせるようにする。1等星を画面の中心に入れ、ライブビューで中心部を拡大表示してみよう。最大倍率でピントをマニュアルで追い込めば、十分なピントが出ているといってよい。

無限遠の点光源である星は、シビアなピント合わせが要求される。AFが効かない場合も多く、ファインダーによるピントも精度が不足気味。ライブビューで追い込むのが確実だ。


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