レビューメディア「ジグソー」

緻密に作られた「音の箱庭」 - FURUTECH 「ADL H128」レビュー -

更新: 2015/03/16

はじめに

この度FURUTECHADL H128」のレビュアーに選出されましたえると申します。

 

私は外で音楽を聴く際は携帯性の高いBluetoothカナル型イヤホンを使い、

家で音楽を聴く際はモニタースピーカーを使用していました。

 

それは一人暮らしが終わるまでの事でした。

 

家族ができると、それまでのように好きな時に好きな音楽を鳴らす事は出来なくなりました。

 

そこでヘッドホンの出番です。

元々Victorのモニターヘッドホンは持っているので、

趣味でやっている合唱の音取り音源作成や、

集中して音を聞き分けたい時はヘッドホンを使用するようになりました。

 

今回のレビューを機に、さらに色々なヘッドホンを聞き比べ、音の違いや

そもそもヘッドホンの良さ、使いどころについても改めて考えてみました。

更新: 2015/03/16
ADL H128 とヘッドホンリケーブル iHP-35X の音質レビュー PREMIUM REVIEW

緻密に作られた「音の箱庭」

【音質レビュー ケーブル編 ~】

 

今回ヘッドホンのレビューに当たって、

ヘッドホンケーブルが2本ついてきました。

 

1本は通常のケーブル。

 

もう一本は「iHP-35M」オーディオグレード ヘッドホンケーブル。

製品HPを見た所

 

・伝送ロスを最小限に抑えるために銀メッキOCC素材を採用。
・コネクターの材質もすべて非磁性特殊銅合金を採用。
3.5mmステレオミニジャック:ハウシングは非磁性ステンレス材質
MMCXコネクター:ハウシングは制振性に優れた特殊精密セラミック材質
RoHS指令適合のシースは外来ノイズを低減。

 

どうやら非常にこだわっているということが分かります。

とはいえ、ケーブルまでこだわってオーディオを選んだことのない私にとって、

これがどれだけ音質に寄与しているのか、結構疑問でした。

 

実際に聞いてみた所、違いは「ありました。」

 

ソースとした音源は

 

・クラシック合唱グループThe SixteenAve Verum Corpus

・ニューメタル系バンドSlipKnoTNameless

・ミクスチャーロックRed Hot Chili PeppersOtherside

 

等々です。

ベース、コントラバス、低音のディストーションギターは、

厚みとキレがiHP-35Mと比べて通常品は少し薄いです。

iHP-35Mだと、上記楽器の音は一段きめ細かい音になります。

 

そもそも私がこのヘッドホンを使用して最初に感動したのは

「低音が濃密!」と言う事でした。

 

音量以上に、音の解像度の高さによって低音は存在感が増していました。

 

もちろん通常ケーブルだからと言ってヘッドホンの音の特性まで大きく変わる訳ではありませんし、ぱっと聞いてすぐ分かるというよりは「聞き比べれば感じ取れる」といった所です。

 

ただ通常品のケーブルだと一番このヘッドホンで感動した部分が薄れてしまいます。

 

ヘッドホンの強みを、さらにケーブルが引き出していて、

このヘッドホンに、このケーブルあり!という印象でした。

両製品、音作りの方向性が一貫している感じです。

 

ケーブルで音が変わる、というのは、中々新鮮で楽しい体験でした。

 

 

【音質レビュー ヘッドホン編 ~】

 

今回ソースは全てiPhoneUbioというアプリを使いました。

アンプは使用していません。ケーブルはiHP-35Mを使用しています。

 

以下、使用した曲目と音質について記述していきます。

 

 

VadrumFlight of the Bumblebee

https://www.youtube.com/watch?v=bj66lVi8Nas

クラシック曲にドラムを合わせた曲です。

弦は細かい機微まで感じ取れます。

タム連打の音色はバスドラに若干押され気味ですが、響きもしっかり残っています。

 

Let It Go(ボーカルなしバージョン)

https://www.youtube.com/watch?v=uCyLO3rsCMA

Aメロで非常に小さい音量でうねる弦楽器の低音も簡単に聞き取れます。

Bメロ以降のマラカスも、さらさらと細かな音まで聞こえてくるので、マラカスを振ったときの手応えまで思い出しながら楽しめました。

 

 

SlipKnoTThe Nameless

https://www.youtube.com/watch?v=b9jsELTA3AM

一つ一つの音が細かくミキシングされた、いい音源です。

攻撃的な音楽を丁寧に聞かせようという心意気が感じられます。

歪んだギターの厚みも十分で、「綺麗に」聞こえます。

 

■吉川友「URAHARAテンプテーション」

https://www.youtube.com/watch?v=hO7lbfTmFdg

歌ものの試聴例です。単純につんくが好きなだけですが。笑

トラックも作りこまれていますが、細かい打ち込み、電子音も、そんなに意識することなく自然に聞き取れます。余談ですが、一度音の存在に気づけば、他のイヤホン等で聞いても聞こえるようになるんですよね。多分人間の脳が都合良く補正しているからだとは思います。

 

また音楽とは別で、PCで実写版「るろうに剣心 京都大火編」を見た所、BGMや効果音、

小さく一瞬だけ鳴るような、効果音が、低音から高音までよく聞こえました。

 

特に道場の床を踏み鳴らす門下生の足音が、

かなり遠くからでもはっきり「どっどっどっどっ」と聞こえてきたのには感動しました。

 

 

【総評】

今まで使っていたイヤホンやヘッドホンと比較しても

「音を聞き分けるために必要な労力」が格段と違います。

 

楽にいろんな音が聞こえてきます。

また後述する他のスピーカーとの比較で一番特徴的だったのは、

音の鳴っている「空間と場所」が非常にはっきりしている点です。

 

目を閉じると、感覚的にはバスケットコート2面分位の音響空間で音楽を聞いているような感じでした。

また音も「この辺りの場所から聞こえてくるな」というのが結構明確に判断できます。

 

だだっ広いコンサート会場の音とはまた違う、非常に緻密に作りこまれた「箱庭」のような音だな、と感じました。

 

更新: 2015/03/15
ADL H128 の使用感 PREMIUM REVIEW

「高反発・密着型」

次に使用感についてです

ヘッドバンドの開きは、振動抑制のため他のヘッドホンと比較しても固めです。

 

しかしイヤーパッドが高反発な素材を厚めに使っているため、

眼鏡をかけながら使っても耳が痛くなる事はありませんでした。

 

さらに既に持っていたヘッドホンでは、少し頭を動かしたり歩いたりするとすぐにずれてストレスになったのですが、そういったことも全くありません。

 

音漏れもこの密着感のおかげで非常に小さいです

 

なので屋外で使っても問題ありません。

期間中片道1時間程度の通勤(歩き20分を含む)で毎日使用してましたが、

快適で楽しい時間を過ごすことが出来ました。

 

(夏は暑そうですが、これは全てのヘッドホンの宿命ですね。)

 

音質は当然のことながら、装着感についても、好みや用途は十人十色です。

ヘッドホンにしろ何にしろ、合唱団の友人に使ってもらった時、一番に出るのは装着感の感想です

下記リンクで太っ腹にも無料貸し出しを行っているので、一度試聴してみる事をお勧めします。

 

http://www.furutech.com/ja/2014/12/04/10135/

更新: 2015/03/17
ADL H128 のデザインについて PREMIUM REVIEW

個性的なのに落ち着いたデザイン!

そもそもADLというブランド名は「Alpha Design Labs」の略です。

HPでブランド概要を見ると

 

『世界のオーディオファンに高く評価され、アクセサリーとケーブルのハイエンド製品を提供し続ける「FURUTECH」! その「FURUTECH」がさらなるオーディオ市場の拡充を目指し、良質で高いコストパフォーマンスのオーディオ用アイテムを 広くお客さまにお届けするために「ADLALPHA DESIGN LABS)」ブランドを展開しております。』

※引用元:http://www.furutech.com/2013/02/10/6297/

 

となっています。

コアファンから理解されている良さを、より多くの人に知ってもらう、

その手段としてデザインに重点を置いているという事でしょう。

 

実際ヘッドホン売り場を眺めて分かったのは、

コア向け製品はびっくりするほどデザイン性を無視したものが多いと言う事でした。

 

デザインが良ければモノとしての愛着につながり、それが使用頻度につながります。

優れた製品であっても、使われてこそです。

 

改めてこのヘッドホンを見てみると、

 

カップにはADLの銀色のロゴとリング。非常に統一感があります。

またヘッドバンドとイヤーカップは太く頑丈な回転軸で繋がっており、これのおかげで密着度の高い装着感が得られています。

 

そして一番特徴的なのはイヤーカップです。

斜めになった逆三角形で、耳によくフィットします。

 

ケーブルはヘッドバンドの中央真下から、

垂直に下へ向かって伸びています。(この辺適当なヘッドホンが多いです)

 

また三角形の上頂点はヘッドバンド部の、

さらに回転軸を止めているねじ穴のぴったり真下に来ています。

 

デザインは門外漢ですが、他にもイヤーカップの角度とか、

色々こだわりがあるものと思われます。

 

とがったデザインなのに、重心バランスの取れた非常に落ち着いた印象を受けました。

 

また、イヤーカップ、イヤーパッド、ヒンジ、ヘッドバンド、ケーブルまで

全てが頑丈な素材で作られており、それも含めて「品質への妥協のなさ」がよく伝わるデザインでした。

 

そしてもう一つ、カップを手で押さえると、

iPhone50%程度の音量でも手がびりびり震えます。

 

密着度の高いイヤーカップの形状や頑強なカップの素材も相まって、

本当にエネルギーの無駄がない感じです。

 

このようなエネルギーのロスを無くす、というアプローチは、

やはりケーブルにこだわり続けたフルテックならではのように感じました。

 

 

あえて一つ、個人的に気になった点を挙げると、回転軸部分のとがり具合が、

正面から見たときに少し目立つように感じました。

 

トータルでは個性がありつつも幅広い層に訴求できるデザインで、

私の好みのど真ん中でした。

 

更新: 2015/03/16
ADL H128 で聴くべき曲、ジャンル PREMIUM REVIEW

クラシック以外。

しょっぱなから「クラシック以外」と書いていますが、クラシック音楽だって楽しく聞けます。

密度の高い豊かなサウンドを、定位の良い空間で鳴らしてくれます。

 

ただ他社のヘッドホンと比較をした際、1つ非常に弦楽器の音を生々しく響かせる機種があり、

それの印象が強く残ってしまったため、「クラシック以外」と書かせていただきました。

(逆にそのヘッドホンは、バンドサウンドや打ち込み等の表現がもったりしていました。)

 

このヘッドホンの持ち味は何といっても、低音のパンチの強さと緻密さ、

一定の広さの空間がはっきり感じられること、そして定位の良さです。

 

特にバンドサウンドを、ライブハウスやライブ喫茶で鳴らしているような音については、

もうこのヘッドホンは最高峰なのではないでしょうか。

 

もちろん広い空間での演奏が前提のサウンドや、逆にもっと狭い空間の演奏(弾き語り系)も、

緻密にまとめてくれるので非常に楽しめます。

 

更新: 2015/03/16

ヘッドホン探索記~まとめ

今回のレビューを機に、ヘッドホンの勉強をするために大手家電量販店に行き、
主に2万以上の価格の様々なヘッドホンを試聴してきました。

 

比較して改めて、本機の音の良さに加え、

どのようなシーンでも人前で使いやすい(ゴツくない笑)デザインに魅力を感じました。

 

 

Audio-technica ATH-A900X
広い空間でなっている印象のヘッドホンでした。
でも距離感は十分わかりますし、コンサートホール等の再現に向いていそうです。
レビュー機と比較すると、音質の緻密さはそこまでではない感じでした。


■パイオニアSEMX9
割とどの音も同じくらいの距離感でなっている感じでした。
ヘッドホンを使うからには、やっぱりある程度色々な方向から音が鳴っていた方が楽しい気はします。

 

Focal Spirit One
低音がかなり控えめの、あっさりした音でした。
非常に思い切った音作りです。

 

■ゼンバイザー HD8-DJ

低音の響き方が独特!

多少音量を上げないと迫力が得られませんが、金管の音色が印象に残る、いいヘッドホンでした。

 

AKG Q701
オープン型にもチャレンジ。
密閉型よりも耳の負担は少ないものの大きいし音漏れが激しいしで、
用途はかなり限定されてしまいます。


音質は、一つ一つの音の主張が強く聞こえ、非常に好みでした。


SURE SRH940
高音がややシャリっとしていました。
空間は広く定位も抜群に良かったです。

 

■ソニー(機種名を記録し忘れてしまいました・・・)

バイオリンの音色が非常に生々しく、ビックリしました。

ヘッドホンでこんなに存在感のある音が再現できるんですね。
そして、何より装着感が素晴らしかったです。


他にもいくつも聞きましたが、印象に残ったのは以上です。

 

個性の違いで片づけられる部分もあれば優劣が決められる部分もあり、
さりとてオールマイティなヘッドホンなどあるはずもなく、
聞き比べて飽きませんでした。


 

ここで改めて、何故イヤホンではなくスピーカーでもなく、

ヘッドホンを使うのかについて考えました。


やはり、周囲の人や環境から独立して、いい音をしっかり聞き「取り」たい、

という思いがあるからでしょう。


では何故そこまでしていい音で聴きたいか?というと、


きっと本当に感動した音が過去にあって、


その感覚を音質追求という手段で再現する為じゃないかなぁと、思います。

 


今回レビューをしたフルテック「ADL H128」ヘッドホンは、音質は他の機種と比較しても最上級でした。
純粋な音質を求めてヘッドホンを探し続けている人にはきっといい選択肢になりますし、
ヘッドホンやオーディオにそれほど詳しくない人には、

万人向けなデザインと共に新たな感動を提供できるような、いいヘッドホンだと思います。


実際歌仲間も音には皆びっくりしていました。

私自身もこんな音の世界もあるんだなと、同時に勉強させていただいたレビューでした。

 

本当にどうもありがとうございました。

17人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (4)

  • cybercatさん

    2015/03/16

    レビューお疲れ様でした!
    >ケーブルはヘッドバンドの中央真下から、
    >垂直に下へ向かって伸びています。(この辺適当なヘッドホンが多いです)
    なるほど〜そういうことか。
    面白い位置から出てるなーとは思ってたのですが←自分ってホントに理系?(^^;;
    自分とは着眼点が違って勉強になりました。

    でもケーブルはやっぱりiHP-35M一択ですよねーw
  • えるさん

    2015/03/16

    コメントありがとうございます、
    私も理系(笑)で、デザインはほんの少し触れたことのある程度なので
    大したことはかけてませんが(^_^;)

    そして通常ケーブルはもはやレビューの為にしか使いませんでした。笑
  • harmankardonさん

    2015/03/16

    レビューお疲れ様でした.

    ケーブルの取付位置は,デザインで決まると思っていました.
    AKG,sennheiser,ULTRASONEなんかは,センターに来ておらず,ケーブルが邪魔にならないような接続位置にしているものとばかり...

    それから,音の好みはやっぱり人それぞれですね.
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