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Link Aggregationでスループット2倍!チョッパヤなNAS『DS415+』

DiskStation D415+の箱
DiskStation D415+の箱

筐体側面のロゴがカッコイイ!
筐体側面のロゴがカッコイイ!


❏ 開封からセットアップまで

購入後、最初の作業として、DSM(Disk Station Manager)のインストールを行う必要がある。
初期セットアップのウィザードで 管理者パスワードを設定し、その後に 利用規約に同意して、その後にインターネット経由でDSMの最新バージョンをダウンロードする。よって、この時にインターネットに接続された有線LAN環境があるとよい。DSMのダウンロードに数分かかり、DSMのインストールには10分ほどかかる。
なお、この時に絶対にDisk Stationの電源を抜いてはいけない。インストール時にRAIDの構成も行えるが、これはDSMのインストール後に行なうことも可能だ。

MyDSのアカウントを要求されるが、これはインターネット経由で自宅のDisk Stationに簡単にアクセスするためのQuickConnectという仕組みに必要であり、ポートフォワーディングなどのルーターの難しい設定変更なしにアクセス可能だ。
しかしながら、この際にDisk Stationの内部ユーザーで認証を行なうことになるため、admin ユーザーのパスワード管理は慎重に行わなければならない。

また、Synology社が用意しているワイルドカード SSL証明書で運用されるため、特にカスタムのSSL証明書を設定せずともパスワードやデータが暗号化されるのはありがたい。
QuickConnect IDは任意で決めることができ、ユーザーごとのサブドメインが割り振られるおそらく、QuickConnectはDisk StationからSynology社のサーバーにトンネルを張り、そのトンネルをリバースプロキシしていると思われる。
日本からアクセスした場合、Synology社の台湾にあるサーバーを経由するようだ。

❏ Link Aggregation(IEEE802.3ad)の効果を検証!

さて、今回Zigsowレビューで届いたSynology DiskStation DS415+は高性能、高スループットを売りとしている家庭向け/中小規模オフィス向けのNASだ。

今回は、そんなDiskStationを性能評価するにあたり、Link Aggregationの効果についてフォーカスしてレビューして行きたいと思う。
Link Aggregationは複数のネットワークインタフェースを同時に使い、仮想的なネットワークインタフェースを定義する。そうして、物理ネットワークインタフェースを並列化してパケットを出すことが可能だ。Link Aggregationは帯域幅をかせぐための仕組みであり、エンタープライズ向けのストレージ製品ではよく使われる仕組みだ。
Link Aggregationは特別な仕組みではない。国際的規格IEEEでIEEE 802.3adとして規定されている業界標準の仕組みであり、ネットワーク機器のベンダーによってはリンクアグリゲーションとか、ポートトランキングや、ポートチャネルと呼んでいる場合もある。

このLink Aggregationの仕組みを使うには、IEEE802.3adに対応した少し高級なスイッチングハブが必要となる。もしも利用を考えているのであれば、事前にネットワーク機器の製品仕様を調べておくとよい。分からなければネットワーク機器のベンダーにIEEE802.3adに対応しているかどうか質問してみるとよい。
Link Aggregationには、ネットワーク機器側に明示的な設定が必要となるため、設定画面やコマンドラインにそれらしき項目がなかった場合、だいたい実装されていないと思って間違いはない。
Samsung SSDでドーピング
Samsung SSDでドーピング

Samsung SSDはDisk Stationのハードウェア互換性リストには含まれていなかったが、手元にある余剰のストレージで一番性能が高かったため今回のベンチマークに採用した。Samsung SSD 830を使ってLink Aggregationの限界性能まで発揮したいと思う。
接続元クライアントはRed Hat Enterprise Linuxを利用する。これはレビュアーが勤務している会社のLinuxディストリビューションで、日本で一番多く使われている。あとは用意するのが簡単だったためだ。

・計測機材
 Dell PowerEdge R720xd x 2台
 - Red Hat Enterprise Linux 6
 - IOR 3.0.1 … http://sourceforge.net/projects/ior-sio/
  ベンチマーク時のiorコマンドのオプションは次の通り
  # ior -vv -a POSIX -r -z -F -o /mnt/ds/testfile -k -e -i 1 -m -t 16m -b 512m -d 0.1
  # ior -vv -a POSIX -w -z -F -o /mnt/ds/testfile -k -e -i 1 -m -t 16m -b 512m -d 0.1
 Dell PowerConnect 8132 … 10GbE 24port

・計測方法:
ベンチマークにはスパコンのストレージ性能を計測する際によく利用するIORを使用しておこなった、IORはスパコンで有名なローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)が作成したベンチマークプログラムで、複数のクライアントから並列でベンチマークを実施することができる優れものだ。

Link Aggregationの効果を最大限に発揮するようにベンチマーク時のロードジェネレーターは2台同時に実行している。Link Aggregationを組むにあたり、Disk Station側とネットワーク機器側のポートの設定を変更した。
ネットワークインターフェースの設定でBondを作る。モードは 802.3ad
ネットワークインターフェースの設定でBondを作る。モードは 802.3ad

組み合わせるネットワークインターフェースを2つ選択する
組み合わせるネットワークインターフェースを2つ選択する

LAN 1 と LAN 2 が Bond 1 に変化すれば完了
LAN 1 と LAN 2 が Bond 1 に変化すれば完了

※このタイミングでネットワーク機器側のポートの設定を 802.3ad を使うように変更すること。
左がLAN1、右がLAN2
左がLAN1、右がLAN2

・計測結果
ベンチマーク1
ベンチマーク1

NIC 1本でベンチマークした場合、MTU 1500でRead 118.7MB/s, Write 107.5MB/s、
Jumbo FrameでMTU 9000の場合、Read 123.1 MB/s, Write 119.2MB/s と5%程度向上した。
ベンチマーク2
ベンチマーク2

さらにNIC 2本でLink Aggregationを有効化した場合、Read 234.7 MB/s, Write 231.6 MB/s とNIC 1本の時と比べてスループットが約2倍に向上した。

SSDで最高性能は計測できたので、次にハードディスクでRAID構成時のスループットについて確認した。
今回のレビューにあたり、Western Digital WD Red 2TB WD20EFRXを4本新規購入し同様のテストを行なった。RAID構成はSynology Hybrid RAIDではなくRAID5で行なった。
ベンチマーク3
ベンチマーク3

HDDの結果は、
MTU 1500: Read 117.1 MB/s, Write 108.8 MB/s
MTU 9000: Read 123.2 MB/s, Write 115.4 MB/s
MTU 9000 w/LA: Read 233.3 MB/s, Write 230.8 MB/s
となり、SSDに迫るスループットが発揮できていることが分かる。SSDはHDDよりもレイテンシーが低い事が、NASに対しても程度効果が多少ある。

・まとめ
概ね期待通りの性能が発揮できたのではないだろうか。Link Aggregationを使うことでネットワークインターフェースの帯域幅を2倍にでき、NFSスループットが2倍になった。
しかも今回はJumbo Frameを有効化した効果も体感することができた。

❏ おまけ:騒音チェック
NASを家庭内やオフィスに設置することを検討する時にどうしても気になるのがノイズレベル(騒音の度合い)だ。
今回は実際にハードディスクを4本フル搭載した状態で、デジタル騒音計を使ってDisk Stationの停止時と稼働時における室内のノイズレベルを計測した。

・測定機材
サンコー THANKO RAMA11O08 [小型デジタル騒音計]

・測定結果
室内のノイズレベルは 36.3 dB、Disk Station の起動時は数秒間ファンがフル回転となる時のノイズレベルは 45.2 dB、Disk Station の通常稼働時はノイズレベルが 37.8 dB という結果となった。
なお、これは室内のノイズレベルを計測した結果であり、製品スペックに記載されているノイズレベルとは値が異なる点に注意して頂きたい。

・まとめ
日常生活で「静かだ」と感じられるのは 45 dB (デジベル) 以下だと言われており、望ましいノイズレベルは 40-60 dB と言われている。Disk Station 起動時には 45.2 dB と少しうるさく感じるかもしれないが数秒間なので許容できる範囲であり、相対的に見て静かなNASだと言える。

※このレビューの内容は私の勤務先とは一切関係なく、また、ベンチマーク結果は参考までに掲載しており、すべての環境において今回と同じ性能が出ることを保証するものではありません。

20人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (4)

  • mkamaさん

    2014/10/26

    Link Aggregation(IEEE802.3ad)のレビュー待っていました。
    とても興味深く拝見しました。
    顧客にこのクラスのNASを提案する時にとても参考になります。

    (もしお時間があれば)
    クライアントがWindows環境の場合、どのくらい性能がでるのでしょうか?

    (もしお分かりになれば)
    LAN2ポートによるSMB 3.0 マルチチャンネルはサポートされているのでしょうか?
  • テイラーさん

    2014/10/26

    残念ながら手元にWindowsがありません。あとIORというベンチマークツールはMPICHという分散コンピューティング環境で動かすことになるので、Windows上でセットアップするのは大変だと思います。

    あと、別の方がWindows環境でベンチマークされていますので、こちらをご覧ください。それほどスループット出てなさそうです。

    北のラブリエさんのレビュー: こいつ、そこらへんのNASとは違いますぜダンナ。
    http://zigsow.jp/review/360/281043/

    仕事で提案されるのであれば、それほど高くはないので、ぜひ1台経費で購入を検討をされてみては?
  • 北のラブリエさん

    2014/10/26

    こんばんは。
    これから追記するつもりですが、私の計測値は実は仮想Windows7からなのでもうちょっと出るかもしれません。
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