レビューメディア「ジグソー」

羊はオオカミになれるか

 さて、今回は、インテル(R) Core(TM) i7-4790K の徹底レビューです。

 最初に白状しますが、当方、自作歴こそ10年近くあり、マシンも3台目になりますが、至って腰抜けのユーザーであり、揃えるパーツはロースペックの枯れたものばかり。コスパ重視で、型落ちで安く購入できると喜ぶといった、ZIGSOWでレビューを書かれるような方々からすると風上にも置けない奴です。

 当然、オーバークロックなんて危険なことは、これっぽちもやろうなんて思ったことはなく、全く別世界のお話でした。今回も、私のような者が選ばれるはずはないと高をくくっていましたが、思いもかけず、レビュアーに選出されました。

 うれしさもつかの間、「本当にちゃんとできるだろうか」という不安の方が大きくなりましたが、もう後に引けないので、身の程知らずのレビューにチャレンジします。

 

● 羊の皮について

 与えられたテーマは、「自作PC等に インテル(R) Core(TM) i7-4790K を組み込み、オーバークロックに挑戦する」というものですが、当方が補足として申請したのは、

1 古いキューブ型ベアボーン(shuttle k45)の筐体と電源はそのままにマザーボードをcore i7-4790K 対応の最新のものにして羊の皮をかぶったオオカミにする

2 中学生の息子に初めての自作マシン制作を経験させたい

というものでした。

 しかし、2はともかく、1はのっけから「大丈夫か」という内容です

 

 

 

 shuttle k45は、2008年発売のキューブ型ベアボーンで、190×280×170mm(W×D×H)という極めてコンパクトな筐体と、フロントパネルに写真などを飾ることができる遊び心が受けて、そこそこ人気だったマシンです。

 

スペックとしては、

 

 対応CPU        Core 2 Duo、Pentium Dual-Core、Celeron Dなど
 CPUタイプ       LGA775
 チップセット      Intel 945GC+ICH7
 メモリスロット     PC2-5300/4200 DDR2 SDRAM×2(最大2GB)
 グラフィックス機能   Intel 945GC内蔵
 拡張ベイ        シャドーベイ×2
 拡張スロット      PCI×1
 HDDインターフェース  Serial ATA 2.5×2、Ultra ATA/100×1

 

といったところです。

 

 これに、CPUは当時のミドルレンジである Core 2 DUO E7200 (2.53GHz)を組み込み、メモリは最大の2GBを積んで、長らくメインマシンとして使っていました。しかし、数年前に当方が地方に単身赴任となるのに伴い、現在は留守宅用のサブマシンとなっています。

 

 最近は、中学生の息子が半ば自分の物のように使っていますが、生意気にも遅いなどと文句を言うものですから、ディスクをHDDから240GBのSSDに交換し、実用的には今でも問題ありません(ただし、息子は、最新スペックのものが欲しいとうるさいです)。

 

 

 それでは、オオカミに変身させる前に、この羊さんの現状を確認しておきましょう。

 まず、CPUの状態ですが、こんな感じです。ちなみに、E7200の省電力機能により、アイドル時のCore Speedは定格の2.53GHzではなく、約1.6GHzにクロックダウンします。

 

 今回のレビューをするにあたり、初めてベンチマークソフトなるものをインストールし、走らせてみましたが、その結果が次のとおりです。

 

 

 うーん、これを見ると確かに遅いですね。6年前のものだから仕方がないけど。

 ちなみにWindowsのエクスペリエンスインデックスの評価ではグラフィックスが足を引っ張っていますが、プロセッサ自体はまあまあです。

 

● オオカミのもと 

 今回の Core(TM) i7-4790Kを載せるにあたり、当然ながらマザーボードを交換する必要があります。今回選んだのは AsRock の Z97M-ITX/acです。

 

 

 AsRockのマザーボードは初めてですが、オーバークロックに定評がありそうなのでチョイスしました。なお、AsRockにはNON Z OC テクノロジーがあり、H97でもオーバークロックが可能との情報もありました。値段的には惹かれるものがありましたが、今回は確実にミッションをこなさなくてはならないということもあり、ここは素直にZシリーズとしました。

 

 shuttle k45 はオリジナルのマザーボードを載せていますが、Mini-ITX仕様のマザーボードと交換可能なことについては実例の報告がありますので心配はしていませんでした。問題は、電源の容量です。もともと搭載されているものは100Wのコンパクトなものであり、さすがにこれではダメじゃないかと思われます。

 

 そこで、まず、この電源を交換するということを考えました。

 

s huttleでは、オプションとして次のような300Wの電源を用意しており、1万円強で購入することができます。しかし、これ自体結構高いことと、オーバークロックを考えたとき300Wではいずれにせよ足りないのではないかということが懸念されました。

 そのほか、ZAWARDの FLEX450というFlex ATX規格の450W電源があり、やはり1万円強の値段で手に入ります。しかし、大きさ的には入りそうだったものの、shuttle k45への取り付け(固定)が可能かどうか分からず、購入に踏み切れませんでした。

 

 結局、もともと「筐体と電源はそのままにマザーボードを Core(TM) i7-4790K 対応の最新のものに」するというのが申請内容であったこと、新たに1万円をかけるなら、もう少し余裕のある電源とケースを購入した方が将来性があることなどを考え、

 

 まずは、このままマザーボードだけ載せ替えて、Core(TM) i7-4790Kを走らせることができるかを検証する。

 

 ダメなら第二段階として、別に用意した電源を用い、息子に組み立てさせた上(これが申請した第2テーマになります)、オーバークロックまで挑戦するという方針をたてました。

 

 

 ● 羊の解体と変身

 現状のshuttle k45のカバーを外したところです。正面のパネルには息子の趣味のアニメの絵が入っています。

 

 しかし、このマシン、コンパクトなのはいいのですが、マザーボードが Mini-ITX よりも縦が長い独自仕様となっており、取り回しが極めてシビアです。マザーボードを取り外そうとしても、リテールと交換して取り付けたCPUクーラー

がつっかえて出てきません。(T_T) 

 

 仕方なく、CPUクーラーを取り外すことによって、ようやく分解することができました。

 

いよいよ交換用のオオカミの骨格こと AsRock の Z97M-ITX/ac です。

 

 shuttleのマザーボードと比べると、コンパクトさの中にも高級感が漂い、青色のヒートシンクやメモリスロットも格好良く、これだけで息子は舞い上がっていました。

 そして、オオカミの心臓こと Core(TM) i7-4790K とそのリテールクーラーです。

 

 これを今回新たに購入したメモリとともに取り付けます。

 

 

 そして、shuttle k45 に組み込み 、祈るような気持ちでスイッチをオンしました。

 ・・・が、やはりというべきか、パワーランプは点いたものの、CPUファンは回らず、どうも通電していないようです。

 

 うーん、やはりこの電源ではダメか。電源コネクタも20ピンしかなく、24ピンのZ97M-ITX/acに無理矢理付けているし(マニュアルでは一応、可能なように書いてありますが)。

 ここであまり無理をしてパーツを壊しては元も子もありません。羊は羊で、やっぱりオオカミにはなれなかったということで、次のミッションに移りたいと思います。

 

● 山羊の試練

 羊である shuttle k45が失敗したからといって、いきなりハイスペックなタワーなどに変えてはレビューの趣旨を逸脱してしまいます。そこで、羊より少しばかり強靱な肉体と性格を有するといわれる山羊のイメージで、次のキューブ型ケースと500wの電源を購入しました(併せて1万円もしないという点もポイントでしたが)。

 

 Elite 120をshuttle k45と並べてみると、同じMini-ITXのケースながら、二回りぐらい大きい印象です。

 

 外寸の割に内部の余裕はあまりなく、ドライブを取り付ける部分が半分くらいを占めています。マザーボードを取り付ける部分の上部にはスペースがあるように見えますが、背面部分に通常サイズのATX電源を取り付けると、そこも埋まってしまいます。

 それでも、shuttle k45よりは、はるかに取り回しがしやすいので、中学生の息子に組み立てを委ねることにします。プライバシーの問題があるので、敢えて顔は出していませんが、うれしそうに、にやけながら作業をしています。どうも、組み立てたマシンは自分のものになると確信しているようで、こちらとしては微妙な心境です。

 

 

 マニュアルを見ながら配線を行い、起動用のSSDも取り付け、20分ほどで、ようやく組み上がりました。

 

 

 そして、今度こそはと、ドキドキしながらスイッチオン。CPUファンも回り、無事起動したと思ったら、次のようなエラーメッセージが出てしまいました。

 

 Windowsによる修復を試みましたが、何度やっても立ち上がることはなく、結局、OSの再インストールをせざるを得ないはめになりました。どうも、パーツが大幅に変わり過ぎ、起動ドライブを単純に載せ替えただけでは対処できなかったようです。

 

 そうしたトラブルもありましたが、OSの再インストール後は、無事起動することができました。下の写真は、起動後の様子ですが、早くも息子の趣味が反映されつつあります。

 

 ● オオカミの実力

 外見はともかく、中身は立派なハイエンドマシンですので、早速その実力を見てみます。

 まず、CPUの状態ですが、次のような感じです。アイドル時のCore Speedは800MHzと、Core 2 DUO E7200よりも低くなっています

 

 しかし、shuttle k45でも用いた CINEBENCHを走らせて負荷をかけると、定格以上にアップし、パワー爆発といった感じになります。

 

 そして、 CINEBENCHの結果は次のとおりで、 4.40GHz駆動のCore i7 4770Kに勝っており、さすがです。

 

 Windowsのエクスペリエンスインデックスの評価では、プロセッサ等が高いのは当然ですが、同じSSDを使っておりながら、CPUに引っ張られる形でディスクの成績もアップしています。

 

 体感的にも、Windows7の起動時間は15秒程度で、あまりに速いため、4つの光が集まって光るシーンが飛ばされて見えないほどです。また、ソフトの起動、ページの切り替え、あらゆる動作がキビキビしており、全くストレスというものを感じません。

 正直、これまでハイエンドCPUはコストパフォーマンスが悪く、自分には無縁だと思っていましたが、ここまで圧倒的な速度の違いを見せつけられると、そうした考えは大きく揺らぎます。次に購入するときは、少なくとも、もうワンランク上を選ぶことにしようと思います。

 さて、次にいよいよ懸案のオーバークロックに挑戦です。

 全くの初心者ですので、お手軽にマザーボードに付属してきたA-Tuningの OC Tweakerを使うことにします。CPU Ratioを標準の44.0から45.0にスライドさせてapplyを押せば、最大4.5GHzまでクロックアップします。

 

この状態で、 CINEBENCHを走らせてみます。

 

負荷時には4.5GHzで動作し、電圧も1.261Vまで上がっています。

そして、 CINEBENCHの結果は、872と更に向上したことが確認できました。

そこで、調子に乗って、Ratioを46に上げてみることにしました。

 

CPUも最大46倍までいけるようスタンバイです。

 

 しかし、この状態で CINEBENCHを走らせたところ、数秒もたたないうちに、ブルースクリーンとなりシャットダウンしてしまいました。全く何の対策もしないと、ここが限界のようです。覚悟はしていましたが、本当に心臓に悪いです。どうかこのあたりで勘弁してください。

 たった0.1GHzアップかとも思われますが、考えて見ると、定格は4GHzであって、標準で4.4GHzまでクロックアップするのですから、大したものです。個人的には十分満足しています。

 

● 羊は本当にダメか(補足)

 実は、Elite 120を組み立てている過程で、あることに気付きました。shuttle k45の筐体から出ているスイッチ・LEDケーブルは10ピン全部が固まった形の端子となっており、それをそのままZ97M-ITX/acのシステムパネルヘッダーに取り付けていました。

 しかし、割り付けられている機能はマザーボードごとに異なるのが通常であり、そのままでは対応していない可能性があります。

 そこで、それぞれのマニュアルを確認したところ、やはり次のように異なっていました。

  

(shuttle k45の配置)

 

(Z97M-ITX/acの配置)

 

 もっとも、パワースイッチの位置は同じなので、LEDの機能を無視すれば起動くらいはいけそうな気もしますが、実際に動かないので、やはり配線の違いは大きいのでしょう。時間があったら、市販の変換用ピンヘッダを買ってきて再挑戦してみたいと思います。 

 

● その後の羊(追加)

 やはりというべきか,完全に息子(この春から高校生になりましたが)の私物と化してしまい,親である自分の方がロースペックマシンで我慢しています。もっとも,本人はノートパソコンの方が欲しいようなので,大学に進学した機会にでも買い与えた際には,石だけでも取り返すつもりです。

 なお,これはマザーボードの問題かもしれませんが,手持ちのプリンタでの印刷がうまくいきません。

 

 デバイスとプリンターではきちんと認識するし,ドライバも最新のものにしていますが,印刷しようとすると原因不明のエラーが出て印刷できません。プリンター自体も調子は悪いですが,別のパソコンを接続すると印刷はできますので,このマシンに原因があると思われます。

 こうしたときにサポートを受けられないのが自作マシンのつらいところですが,承知の上での挑戦ですので納得はしています。

 

● 更にその後の羊(再追加)

 単身赴任からの復帰を契機に、息子から取り戻しました。すったもんだはあったものの、代わりにハイスペックのノートパソコンを譲ることで決着が付きました。

 OSもWindows 10に更新し、できるだけ長く活躍してもらうつもりです。懸案だったプリンタとの接続についても、新たに購入したOKIのものに付け替えたところ、無事印刷できるようになりました。マシンのせいにしていましたが、やはり、プリンタの問題だったようです。

 

17人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (1)

  • kensanさん

    2016/12/01

    2014年年末に一時帰国時に作った自作6号機はi7-4790(Kではありません♪)でした。
    私もOCなどいまだやった経験なしです。

    PCゲームをまったくしませんし、組み立てたPCは最低3年使いたい主義です♪
    でも子供さんには良い経験だったかもしれませんね。

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