レビューメディア「ジグソー」

Ultrabook、その魅力を体現する dynabook KIRA V832

Ultrabook。Intelが提唱する新世代のノートPC。高速起動と携帯性を両立し、充分な性能と長い駆動時間により、「外でする作業」と「家でやらねばならない作業」の垣根をなくした“ノートブック PC とタブレット機器の性能や機能を兼ね備え、薄型軽量で洗練されたデザインでありながら、極めて高い応答性とセキュリティー機能を実現(*)”する高性能ノートPC。
*:「インテル コーポレーション、モバイル利用の拡大と業界の成長機会について説明」2011/05/30
この規格は当初第2世代CoreプロセッサーであるSandy Bridge世代でリリースされたが、22nmプロセスルールに微細化された次世代であるIvy Bridge、高性能と低消費電力を両立したCPUでその真の性能が発揮されることになる。

一方、東芝という会社も現在デスクトップPCを逆転し、パソコンの代名詞になろうとしている「ノートPC」というデバイスの黎明期に大きな足跡を残した重要なプレイヤーである。1985年に海外で発売されたT1100こそが「ラップトップPC」という携帯型PCのジャンルを拓いたし、今でも東芝PCのブランド名として使われる「dynabook」は、1989年に世界初のA4ファイルサイズのノートパソコンとして発売されたDynaBook J-3100SSから使われる由緒あるブランドだ。このJ-3100SSは、当時として画期的な3kgを切る重量と、2時間半とはいえバッテリー駆動も可能で、外部に持ち出して場所を問わずPCを使うことができる「ノートPC」というカテゴリーの創造者でもあった。

そんな東芝がUltrabookに渾身の力作を送り込んだ。

東芝が培ったノートPCのノウハウに、第3世代Coreプロセッサーを用いた充分な性能と省電力性と、高速起動とタッチパネル対応を主眼に開発されたOSであるWindows8合わせて、Ultrabookの理想型として開発された東芝「dynabook KIRA V832」。その性能を見てみよう。
まず外観から。梱包がステキだ。通常の段ボール箱を開けるとその中には、1面にdynabook KIRA V832(以下KIRA)の画が入った黒い化粧ケースが現れる。
ちなみにこの化粧箱が入った輸送用段ボールコミの重量は3.1kg。
ちなみにこの化粧箱が入った輸送用段ボールコミの重量は3.1kg。
ナナメにカッティングされている蓋を開けると、購入後1週間以内の初期不良に対応する「東芝PCあんしんサポート」のフリーダイヤルの番号が書かれた袋が最も前面にある。最近製品の梱包の工夫で製品に出逢うまでを演出する、「見せ方(魅せ方)」が上手いメーカーが多いが、この美しい化粧箱と一番最初に目に飛び込んでくるのがユーザーサポート電話番号という梱包は美的感覚と、一般店で販売されユーザー層も幅広い日本メーカーの安心感の良いバランスだと感じた。
同梱物一式。マンガによる簡易ガイドが目を惹く。
同梱物一式。マンガによる簡易ガイドが目を惹く。
本体に行く前にまず付属品を見てみよう。本体の他には、ACアダプタに説明書類、インストール作業が必要なアプリケーションとクリーニングクロスが同梱されている。説明書はメインの説明書(dynabookガイド)の他に、2つのマンガによる簡易ガイドが付いている(スタートアップガイドとマニュアル紹介ガイド)。スタートアップガイドはその名の通り、箱を開けて一番最初にすべきことが書いてあり、付属品の確認やWindowsの起動とセットアップに関しての記載、マニュアル紹介ガイドは電子マニュアルである「パソコンで見るマニュアル」の起動方法と章の構成を紹介するガイド。電子マニュアルはリンクなどで参照しやすく、動画なども仕込めると言うことで紙のマニュアルにない良い点も多いが、「そもそもどこにあるかが解らない」という場合もある。その起動方法や場所を理解するために分厚い説明書を読ませるのは本末転倒だし、Windows8は7以前と比べてショートカットが配置されているデスクトップへのアクセスに一手間要る。そのあたりを解説しているのは親切だ。余談だが、このマニュアル類を入れたビニール袋を留めてあるテープだが植物由来の樹脂を利用とのこと。東芝の環境に対する取り組みの一端が理解できた。
再生可能な植物性の原料を使い、環境に配慮。
再生可能な植物性の原料を使い、環境に配慮。
そしてマグネシウム合金を天板に使ったという本体。「プレミアムシルバー」と名付けられた美しいヘアラインのシルバー仕上げの天板を開けると鏡面仕上げのディスプレイが現れる。表面がつるつるとしているために特に画面OFF時の映り込みは多い。
逆光気味でもこれくらいは映る。
逆光気味でもこれくらいは映る。
形状として「13.3型ワイド」と携帯性を重視するUltrabookカテゴリーとしては大きな画面に加えて目を惹くのはタッチパッドの大きさ。従来のノートPCと比べるとかなり大きい。Windows 8のマルチタッチ操作を実現できるように考えられている。
セパレートキーの周りからLED照明がされている。
セパレートキーの周りからLED照明がされている。
キーボードはセパレート形式でバックライト付き。端のキーはやや狭いもののキートップにわずかな凹みがつけられた形状は確かなタッチ感があり、使いやすい。ただ残念だったのがカーソルキー。上下のカーソルキーは、やや大きめに作っているキー最下段(スペースキーがある段)に2段に仕切って位置しており、Excelなどで上下の移動が多い場合はやりにくいと感じた。
上下カーソルキーはムリヤリ?の配置
上下カーソルキーはムリヤリ?の配置
インターフェース類は充実しており、右側には64GBまでのSDXCメモリカードとマルチメディアカードに対応したブリッジメディアスロットとヘッドホン出力とマイク/オーディオ入力共用端子とUSB3.0が1ポート、
右側は良く抜き差しする系の端子が
右側は良く抜き差しする系の端子が
左側面にはUSB3.0が2ポートとHDMI端子がある(他にACアダプタ接続もこちら)。
左側面にはUSB3.0が2ポートあるのがウレシイ。
左側面にはUSB3.0が2ポートあるのがウレシイ。
外観の質感と豊富な接続端子でこのPCに対する期待が高まる。

さらに内部構造を見てみよう。
注:今回レビューにあたって内部の使用部材の確認や、このUltrabookの構造の工夫を確認するために分解をしています。正規のサービスマン以外が分解した場合、感電の危険性や保証が受けられなくなる可能性があります。
分解禁止の注意書き
分解禁止の注意書き
裏蓋は計11個所の(+)ネジで固定されている。大きさはNo.0。

長さとしては長短3種類あり、最も薄い手前側に当たる5つが短、中央のひとつが長で、残りの5つが中間長だ。
3種を間違えないように
3種を間違えないように
ヘッドホンジャックから逃げるようにスライドすると裏蓋が外れる。
断面積的にはバッテリーが半分以上を占める。
断面積的にはバッテリーが半分以上を占める。
クーリングファンにつながる銅材の下には密着していたため外して確認するのを諦めたが、CPU=Core i5-3337Uが鎮座している(ハズだ)。このCore i5-3337UはIvy Bridge世代のCPUで、2コア4スレッド、動作周波数1.80GHzの石だ。Ivy Bridge世代のモバイル向けCPUは内蔵グラフィックスはすべて高性能版の「HD graphics 4000」を積むので、超低電圧版であるU番(TDP17W)では上位のCore i7-3XX7Uとは動作周波数がやや低く抑えられているほかはL3キャッシュが3/4に制限されているだけで、Turbo Boost Technologyによる自動オーバークロックも有効と差が少ない(ちなみに  この石はTB時には最大2.70GHzで動作する)。かなり超低電圧版のCore i7に肉薄する性能が期待できそうだ。
BD82HM76 PCHことHM76チップセット
BD82HM76 PCHことHM76チップセット
隣にある大きな面積を占めているチップはUSB3.0ネイティヴサポートのHM76 Express Chipset(BD82HM76 PCH)だ。その下(ヒンジ側)に並んで見えるチップはSUMSUNGのDDR3メモリチップ「K4B4G0846B」。Ultrabookの方程式に倣い、メモリスロットは用意されないため増設はできないが、デュアルチャンネルの8GB(4GB+4GB)用意されるため、一般的な用途ではメモリ不足を感じることは少ないだろう。
メモリチップはSAMSUNG製、オンボード装着。
メモリチップはSAMSUNG製、オンボード装着。
その横にはSSDが見える。
読み出し524MB/s、書き込み速度461MB/sを誇る高速SSD。
読み出し524MB/s、書き込み速度461MB/sを誇る高速SSD。
規格はmSATA、型番からは東芝の「HG5シリーズ」のmSATA版128GB SSD、「THNSNF128GMCS」であることが解る。
証拠?
証拠?
コントローラチップはMarvellの刻印よりもTOSHIBAのマークがデカイカスタム品(TC58NC5HA9GST)。
コントローラチップはMarvellのカスタムチップ。
コントローラチップはMarvellのカスタムチップ。
LANポートを実装しない本機は無線LANモジュールも搭載する。IEEE802.11a/b/g/n準拠のWiFi機能とBluetooth 4.0に対応するIntel Centrino Advanced-N 6235が装着される。
 Wi-Fi + Bluetooth アダプタはCentrino Advanced-N 6235
Wi-Fi + Bluetooth アダプタはCentrino Advanced-N 6235
狭い躯体で問題となるアンテナ線の処理はヒンジの中を中空にして仕込むなど、メーカー製ならではの工夫が見られた。
無線モジュールから伸びるアンテナ線は中空になったヒンジの中に。
無線モジュールから伸びるアンテナ線は中空になったヒンジの中に。
メーカー製、特に小型化・軽量化に豊富なノウハウを保つ東芝製PCならではの工夫だと感じた。

現在、cybercat家には「モバイル系のPC」にカテゴライズできるPCが本機を含めて3機種ある。一つはSandy Bridge世代のCore i7を積むハイパフォーマンススレートPC、ONKYO TW3A-A31C77H(以下TW3A)。

当初の構成からメモリ倍増、

SSDは120GB化して

さらにOSをWindows 8 Pro

に換装してあるため、本機と比較するには好敵手だ。あとひとつは今から5年前のオールインワンモバイルPC、Panasonic Let's note LIGHT W7(CF-W7DWJNJR、以下W7)。

こちらはOSこそ購入時のままのWindows Vista Business SP1だが、メモリは倍増

して、SSD化もはたしており

可能な限りの増強を行ってある。
【cybercat家新旧モバイル系PC比較】
赤い文字が増強ポイント。
赤い文字が増強ポイント。
大きさとしてはフットプリントは意外なほど違わない。奥行き(短辺)は全て21cm内外で1cmと違わない。幅(長辺)は4:3画面のW7<画面の縁にランプしかないTW3A<13.3型ワイドと最大解像度のKIRAと2cm前後ずつ大きくなる。
左上あわせの図。上からW7、TW3A、KIRA。
左上あわせの図。上からW7、TW3A、KIRA。
高さ(厚さ)は一面同じ高さのスレートPC、TW3Aに対して、ノートPC系の2種は手前側が薄いが、ヒンジ側は厚くなる。しかしそれでもKIRAは厚い方でさえTW3Aに対して2mm以内の増加、薄い方ではなんとTW3Aの半分程度の厚さで、Ultrabookのアイデンティティであるスタイリッシュさを訴求している。前時代のPCであるW7は薄さ比較では光学ドライブ搭載というハンデはあるが、薄い方も厚い方もKIRAの2倍以上の分厚さで勝負にならない。
W7はKIRAの2倍以上厚い。
W7はKIRAの2倍以上厚い。
携帯性という意味では重さも見逃せないポイントだ。カタログスペックではKIRAが一番重い(約1.35kg)ことになっているが、実測値は0.1kg単位のはかりで量るとW7とは大差ない1.3kg。一方キーボードレスのスレートPC、TW3Aの1.1kgに対しては後塵を拝した。
さすがにスレートPCは軽い。
さすがにスレートPCは軽い。
いくら以前に比べてバッテリー駆動時間が延びたとは言え、泊まりの出張時などには欠くことができない純正ACアダプタ込みだとどうだろうか。TW3Aのやや大きめでゴツめのアダプタ&ケーブルのために差は縮まるが、依然としてノートPC2種(1.5kg)に対してスレートPCは1.4kgとまだ優位だ。しかし、Webブラウジングならまだしも、報告書作成などでまだ外せないキーボード

とポインティングデバイス(マウス)

を組み合わせると2.0kgとなり、その優位性は逆転する。
ACアダプタを加えると差が縮まり、キーボード類を加えると逆転。
ACアダプタを加えると差が縮まり、キーボード類を加えると逆転。
では性能はどうだろうか。5年前のVistaノートが最新の機種に勝るわけがないので、ここからは同じWindows 8系OS、SATA6GB/sのmSATA SSDと条件が近い、Sandy Bridge世代ながら上位のCore i7を積むTW3Aと最新のUltrabookとして設計された本機、KIRAに絞って比較した。

まずUltrabookをUltrabookたらしめている高速起動性の比較をする。両機をパスワード自動入力のオートログイン設定にして、同時にスイッチを入れ、Windowsのスクリーンキーボードが使用開始できるようになった時点をストップウォッチで計測した。

【起動速度比較】

結果としてはKIRAが10秒ちょっと、TW3Aが17秒弱と約6秒の差が付いた。
差は6秒だが、1.5倍以上の違いがある、ともいえる。
差は6秒だが、1.5倍以上の違いがある、ともいえる。
6秒というとたいしたことがないようだが、KIRAはTW3Aの2/3で立ち上がってくるとも言え、「待たされ感」は大きく異なる。

ベンチマークとしてはTW3AがWindows 8環境下では「Windows エクスペリエンス インデックス」しかとれていないので、

それを実行してみると、「プライマリハードディスク」を除くすべての項目(プロセッサ、メモリ(RAM)、グラフィックス、ゲーム用グラフィックス)で性能向上が見られた。
内蔵グラフィックスなので、最低スコアはそこ。
内蔵グラフィックスなので、最低スコアはそこ。
グラフィックス周りはTW3AのIntel HD Graphics 3000に対してIvy Bridge世代で強化されたIntel HD Graphics 4000の効果だろうが、プロセッサに関してはSandy Bridge世代のIntel Core i7に対してIntel Core i5のブランドネームながら、Ivy Bridge世代であるKIRAが下克上した感じだ。

Windows 8世代のベンチマーク、3DMark

はなぜだかTW3Aで走らなかったので、KIRAだけの結果となるが、「Ice Storm」が30171、
「Cloud Gate」が3701、
一番重い「Fire Strike」でさえスコアこそ544だが完走しているあたりは
内蔵グラフィックスとしては確実な進化といえるだろう。

ストレージ性能はCrystalDiskMark Nano Pico Edition

で評価した。東芝製mSATA SSDである「THNSNF128GMCS」は、項目によって勝ち負けはあるが、総じてMemorightのmSATA 6Gbps SSD、「MRMAD4B120GC9M2C00」

と遜色ないスピードを示している。
ReadもWriteもあまり差がない
ReadもWriteもあまり差がない
このようにKIRAは前世代Core iシリーズの上位、Core i7を喰うCPU性能とグラフィック性能を持つ、高速起動可能なモバイルPCであることが解る。

PCを持ち出したとき、膝の上で使っているようなシチュエーションで気になるのが温度だ。中にはやけどしそうなくらい熱くなったり、熱風を吹き出したりするノートPCも少なくない。KIRAはどうだろうか。W7

とTW3A

で実施した負荷による温度上昇実験を再び実施した。

すなわち、負荷内容は
・起動後すぐにOCCTを10分回し、終了後直後にあらかじめWoopie Video DeskTopを用いてディスクにダウンロードした約10分のYouTubeファイルを再生する。
というもの。
今回はTW3Aと違ってOCCT時にも異常停止がなく、例によって3cm間隔で通した糸の交点を目安に負荷前と負荷後PC裏面の温度を非接触型赤外線温度計

で測定した。なおOCCTとWoopie稼働は、洋服を着た膝の上での操作を再現すべく、今まで同様綿トレーナーの上で実行した。
負荷動作は当然ひっくり返して実行した
負荷動作は当然ひっくり返して実行した
その結果を3℃上昇ごとに色分けし上昇3℃以内を黄色、3℃超~6℃以内を薄いオレンジ、6℃超~9℃以内を濃いオレンジ、9℃超~12℃以内を赤、12℃超をピンクとして温度分布を調べた。
写真の手前側がヒンジ側。
写真の手前側がヒンジ側。
その結果、12℃越えは1エリアもなく9~12℃が1個所だけでとても優秀。ムラなく4~5℃程度の上昇で均一化されており、どこかの個所が熱くて気を付けなければならないという事もない。

KIRAはモバイル性と性能に加え、起動の速さと低い温度上昇という快適性まで高い性能を持つUltrabookであることが解った。

基本性能は十分であることを立証したKIRA。実際の使用感はどうなのだろうか。

久しぶりに直販系メインでないメーカー製PCを手にしたので、まずそのプリインストールソフトの豊富なことに驚かされる。主なものだけでもセキュリティソフトやパスワード保護ソフトのような基礎的なものから、ビジネスでも使えるオフィスソフト、高細密な画面を生かすべく画像編集ソフトや動画編集ソフト、TVのネットワーク化に以前から熱心な東芝製PCらしくテレビ連携ソフトなどなど盛りだくさんだ。
豪華絢爛な「すべてのアプリ」
豪華絢爛な「すべてのアプリ」
そのTV連携ソフトである「RZスイート」を立ち上げると、家のネットワークが見えた。cybercat家は奇しくもTVは東芝製のREGZAだが、それと連繋するのはもちろん、同一ネットワーク上にあるRECBOX

まで見える。
RECBOX上の地デジ番組が見える。
RECBOX上の地デジ番組が見える。
RECBOXにあるコンテンツも再生可能だった。ただし、通信環境の問題か音楽番組はトークの部分はほぼ破綻なく聞き取れたが、曲の部分は再生がやや引っかかったようなところもあり、通信速度がやや足りないようだ。
音楽番組はテンポが乱れるところもある。
音楽番組はテンポが乱れるところもある。
・・・cybercat家の無線LAN親機↓

そして量販店で売られ、ユーザー層が幅広いメーカー製PCとしてユーザーサポート系のソフトが多いのが特徴だ。まずマニュアルやサポートソフト類がどこにあるのかを示すナビゲーションソフト、各ソフトの使い方を動画で説明したソフト、マニュアルは電子化されリンクでつながれ見やすくなっており、さらにWindows 8化されたことでなくなったスタートボタンの利便性を補うべく、デスクトップアプリにはランチャーまで用意され、多彩なソフトへのアクセスを容易にしている。
見やすくリンクでつながれた電子マニュアル
見やすくリンクでつながれた電子マニュアル
デスクトップアプリのランチャー
デスクトップアプリのランチャー
オレンジで色づけたサポート系ソフトの充実度に東芝の幅広いユーザー層が伺える
オレンジで色づけたサポート系ソフトの充実度に東芝の幅広いユーザー層が伺える
さらにそのWindows 8に関連してはストアアプリも用意される。

オフィスソフトは定番、「Microsoft Office Home and Business 2013」がプリインストールされる(ユーザーによるアクティベーションが必要)。Office 2013はWindows 8のタッチ系操作との親和性をあげた最新バージョン

でタッチパネル搭載のKIRA(V832)とは好相性だ。Excelなどのプルダウンがタッチパネルで拡大表示になるなどのOffice側の機能と、Windows 8のゼスチャーに対応したマルチタッチのタッチパッドにより、マウスがなくともかなりの作業が問題なくできる。ただ、このタッチパッドだが、(特に右)クリックに癖がある。

パッド部分からボタンにあたる部分が特に独立していないデザインだが、ボタンの反応がやや内側なのだ。パッドの下側にはボタンの目安にか中央で途切れたラインが出っ張っているが、この真上を押した場合に反応がないことが時々ある。その場合、そのラインより内側(タッチパッド上部側)を押すと反応する。パッド部分とボタン部分の境目がないので、できるだけ端を押そうとするとうまく反応しないのだ。むしろ内側のパッド部分の端?と感じるところのほうが反応がよいのが、感性と一致しないか。

話をソフトに戻すとAdobeの定番画像編集ソフト「Adobe Photoshop Elements 11」と動画編集ソフト「Adobe Premiere Elements 11」が同梱されているのが心強い(付属するSDカードからのインストールが必要)。特に本機にはデジカメ/デジビデの定番保存媒体の地位を獲得しているSD・SDHC・SDXCメモリーカードに対応したメモリーカードスロットが備わる(MMC共用)。ただこのスロット、内部的にキーボード部分と干渉するため半分しか入らない。
SDカードはキーボードの縁の部分までしか入らない
SDカードはキーボードの縁の部分までしか入らない
デジカメからの画像転送を行う際の一時的な挿入にはなんら問題ないが、内部SSD容量を補うためにSDカードを常設して使う、という用途には使えない。薄さとのトレードオフという形だが、一般的にSSDなど記憶装置の交換が考えられていないUltrabookとしては残念なポイントである。

これら、豊富なソフトのために圧迫されているのがSSD。型番(THNSNF128GMCS)からは128GBであることがわかるSSDだが、実際にはWindowsの回復用パーティションや、リカバリー用エリアに容量が裂かれ、いわゆる「Cドライブ」としては約95GBの割り当てでしかない。初期状態ですでに54GB弱の空き容量しかない。そこにOfficeとAdobe 2ソフトをインストールすると空き領域は40GB弱になる。-いくつか標準添付でないソフト

をインストールしたのと、逆に競合するウイルス対策ソフトなどをアンインストールしたため、標準状態とは若干異なる-

この40GB弱という残容量は、Photoshop ElementsやPremiere Elementsを用いてRAW現像や動画編集をバリバリ行いたい向きには心もとない容量となる。それゆえに先に述べたSDカードスロットのつくりが余計に残念に感じた。

今回KIRAで一番興味を持ったのが、音へのこだわりだ。スピーカーは名門harman/kardonの手になる。Ultrabookが訴求する薄さ・軽さといった方向性と、オーディオ的要求というのは実は相容れない。特にスピーカーは原理的にスピーカー口径やスピーカーボックス容量が要求する大きさと、振動をしっかりと支える重量、というまるで反対方向の要求がある。

分解したときにスピーカーの構造も確認した。かなり変わった形状をしている。楕円形というか長円形のスピーカーユニットはL字型のハウジングの一方の端に収められている。
隅に押しやられたスピーカー
隅に押しやられたスピーカー
そして逆側の端はポートとして開口しているという構造。
ロングポートは低音増強の工夫か
ロングポートは低音増強の工夫か
ボディ内側との接触ポイントは硬質スポンジのような材質で充填されており、振動が伝わるのを低減させている。
ボディと接する裏側(というか取付時は上側)の防振対策も万全。
ボディと接する裏側(というか取付時は上側)の防振対策も万全。

そして最大の特徴はこのスピーカーは「下向き(正確には若干外向き)」に付いている、ということ。
下側やや外向きに開口しているスピーカー
下側やや外向きに開口しているスピーカー
一般的には耳に直接音が届くようリスナー側に開口しているものだが、このPCのスピーカーは間接音(反射音)として設計されているわけだ。

実際に聴いて見ると左右の広がりが気持ちいい。とても狭いベゼル部分に押し込められたスピーカーから出ているとは思えない高品質。もちろん、低域は相対的に弱く、やや高域が立った感じの音のキャラクターとはなるが、「音」ではなく「音楽」として十分評価できる。

ではこの反射を使った音作り、というのはPCを置くところの材質で音色の変化があるのだろうか。4種類の材質で比較してみた。まず、最近レビュー対象品の写真を撮るときに背景として使っているキャンバス地の布の上(これは食卓にかけてある)、布を取り去った木製の食卓、流しにつながるステンレスのシステムキッチン上、そしてソファのように合皮とスポンジを貼った椅子の上(ピアノ/キーボード演奏用の椅子)。

まず布は高音がやや強い感じでハイハットが刺さり気味、少し腰高のようだ。
キャンバス地の布の上
キャンバス地の布の上
これを取り去って机の木をむき出しにすると、布をひいたときと同方向の音色だが、響きがいい感じでリバーヴがかかったよう。
木製ならではの響きがある。
木製ならではの響きがある。
ステンレストップのシステムキッチンの上はどうか。下に向けたスピーカーによってキンキンするかと思いきや、意外に悪くない。当然堅めの音になるが、リバーブが深くて耳には心地よい。
やや硬くはなるがキツくはない
やや硬くはなるがキツくはない
スポンジ入りの合皮貼りの椅子は締まりすぎでベースが聞こえず、今一歩だった。
表面が柔らかくて底面をミュートした感じになったのかも知れない。
表面が柔らかくて底面をミュートした感じになったのかも知れない。
特に木のテーブルとシンク横のステンレスの結果が良く、木製やスチール製の机の上で聴くことを主眼に置いてチューニングされているのか、と感じた。左右に広がる音像と、やや腰高ではあるが、低域まできちんと聴こえる。

では、持ち運んで聴く利便性を損なうという意味では邪道だがインシュレーター

をかませるとどうだろうか。PCのゴム足が付いている部分にインシュレータを挟んでPC本体を机面から離してみた。
こんな感じで4つの素材で比較。
こんな感じで4つの素材で比較。
いずれの素材でも定位が立って分離が良くなった印象だ。ただ、顔を動かすと定位や分離が大きく変動することと、低域がややヌけて腰高になってしまったのが残念。ベストポジションを見つければ、直置きより良い場面もあったが、かなりセッティングが神経質な印象となってしまった。本機においてはテーブル/デスク直置きでの使用が、反射音も含めて上手く味付けされていると感じた。カーステレオなど非定型で特殊なスペースでの音作りにもノウハウがあるharman/kardonの面目躍如といった感じだ。

この高音質で軽いPCの用途としては持ち運び可能なジュークボックス的な用途にも適しているといえよう。タッチパネルを使ってジャケット写真から曲を選ぶような感覚が楽しい。実際に使用すると以下のようになる。

使用ソフトはSONY WALKMANの楽曲管理ソフト「x-アプリ」。なお、「x-アプリ」の動作は画面解像度を1920✕1080に落として実行している。元解像度の2560✕1440だと、ジャケットやタイトル名が小さすぎて、指では選択できないのだ。x-アプリ側には画面表示の大きさを可変する仕組みがないので、KIRAの解像度を落とすしかないのが残念だった。

この点を調整していさえすれば、ジャケット写真から曲を選ぶ感覚はまさにジュークボックス。そしてUltrabookであるKIRAであれば何処にでも持ち出せる軽さと、長時間駆動を両立しうるはずだ。

実際に駆動時間を計測してみた。「x-アプリ」にATRAC Advanced Lossless 132kbpsで取り込んだ複数の曲を、再生ボリューム50、ディスプレイの明るさ40、電源プラン「バランス」で連続再生した。再生ボリューム50というとかなり大きめの音で、ややざわついた飲食店のような場所でもテーブル全体に聞こえるくらいの音量だ。この状態での連続再生時間は5時間19分。公称の9.5時間よりは短いが、半日以上の「もち」で、実用上は充分といえるだろう。

このKIRAはともすれば似たような特徴になりがちなUltrabook規格のPCに
・2560✕1440とフルHDの1.33倍の解像度(画素数としては1.78倍)の高細密な画面
・harman/kardon製スピーカーによる机の上にポンと置いただけで気軽に楽しめる高音質
という他にはない訴求点を加えながら、
・充分持ち歩ける軽さ
・第3世代Coreシリーズによる軽快な動作
・初心者にも優しい厚いサポート
を実現した、万能選手といえるノートPCだった。

しかし、改良が望まれる点がないわけではない。
・低容量なSSDは店頭モデルにおいても大容量モデルをラインアップする/もしくはアップグレードパスをもうけること
・メーカー製PCらしく豊富なアプリ群や、初心者向けのガイドは親切設計である一方、そうでなくても少ないSSD容量を圧迫しているため、それらを必要なくなれば「簡単アンインストール」できるしくみをもうけること
・アプリ側の対応が進むまでは、2560✕1440の解像度は一般的ではなく細密に過ぎる場面もあるので、簡単に一瞬で解像度が変更できる仕組みがあれば良い。具体的には照度や音量調節のようにFnキーやCtrlキーなどとの同時押しで、一発変換できるようなショートカットがあれば便利だと感じた。
・タッチパッドのボタン部分は反応位置をもう少し端に移動し、確実に押せるようにすること。

上記のような若干気になる点はあるが、dynabook KIRA V832は現時点での理想にかなり近いUltrabookだと感じた。この速くて、軽くて、きれいで高音質と隙がないUltrabookは趣味にも仕事にも使い倒せるだけの力を持ったマシンだと感じた。画面の細密さ、音場の造りの上手さはぜひお店で触れてみることをオススメする。今までのUltrabookとは違う「なにか」が感じ取れると思う。

末筆とはなりましたが、今回このような機会を与えてくださった株式会社東芝様、zigsow事務局様に御礼申し上げます。またレビューアップまでの応援など常に支えとなってくれたおものだちの皆様はじめzigsowerの方々に感謝いたします。

ありがとうございました。

【V832/28HS仕様】
OS:Windows 8 64ビット
CPU:インテル Core i5-3337U(2コア 4スレッド、動作周波数 1.80GHz(TB時最大 2.70GHz)
チップセット:モバイル インテル HM76 Expressチップセット
システムメモリー:PC3-12800(DDR3-1600) SDRAM 8GB(4GB×2)(デュアルチャネル対応)
メモリースロット: オンボード、交換不可
SSD:128GB SSD(Serial ATA対応)
ディスプレイ:タッチパネル付き 13.3型ワイド(16:9) WQHD 最大2,560×1,440ドット
グラフィックシステム: インテル HD グラフィックス 4000
サウンドシステム:インテル ハイ・デフィニション・オーディオ準拠
無線LAN:インテル Centrino Advanced-N 6235、IEEE802.11a/b/g/n準拠
Bluetooth:Bluetooth Ver.4.0
Webカメラ:92万画素
スピーカー:harman/kardon ステレオスピーカー
マイク:内蔵モノラルマイク
メモリーカードスロット:SD・SDHC・SDXCメモリーカード/MMC 共用スロット
インターフェース:USB3.0ポート×3、HDMI端子×1、
         ヘッドホン端子(ステレオ ミニジャック)×1
         マイク/オーディオ入力(3.5mmΦモノラルミニジャック)共用×1
内蔵バッテリー:動作時間約9.5時間
        充電時間約約3.5時間(電源OFF時)/約4.0~8.0時間(電源ON時)
本体寸法:316.0(幅)×207.0(奥行)×9.5~19.8(高さ)mm
質量:約1.35kg

東芝製品カタログページ:ウルトラブック dynabook KIRA V832・V632(2013年4月)

コメント (8)

  • cybercatさん

    2013/05/08

    れいんさん、まだまだ後半ありますん(^u^;)
  • れいんさん

    2013/05/08

    もう分解したら
    満足してしまいました
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