8月のことだった。たくさん美味いものを作るべく、毎日自炊すべく、ちょっと張り切った冷蔵庫を買っていました。母親が病院から帰宅したので、おいしいものを食べさせようと思って、買っていたんだ。

小脳出血してしまった母親は、リハビリテーション病院で奇跡的な回復を遂げた。歩けるようになり、笑顔が増えて、なぞり書きも音読も、歌をうたうことも出来る人になった。それでも嚥下障害と認知機能の劇的な低下は問題になった。医師や看護師が複雑な表情であったことを忘れられない。回復しても社会復帰にはまだまだ程遠い道半ばであったからであろう。

悲しいことに帰宅して3週間目には嚥下障害の悪化で食べられなくなった。液状栄養剤を処方してもらい、少しずつ飲ませ、足りなそうなときには点滴もしてもらった。が、低栄養でとうとうのっぴきならねー状態になり、5週間目には近隣病院に入院を検討、6週間目にそれを実行せざるを得なかった。

結局、この冷蔵庫にはたくさんの液状栄養剤や、経口補水ゼリー、経口栄養ゼリーしか入れられなかったんだ。もっといっぱい、果物と野菜、肉が詰まっているはずだった。刺し身もあって、おいしいものを食べもらえるはずだったのだが、それができなくなったことを悲しく思う。