レビューメディア「ジグソー」

音楽の届け方

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。以前は、ライヴかCD(アナログレコードその他も含む)といった物理媒体しか届ける手段がありませんでした。それが今ではダウンロードやサブスク配信など形が残らないものもありますし、CDもプレス単価と最小ロット数が下がったおかげで、プロのアーティストでも正式なディスコグラフィーの他に、公式BOOTLEGのような、ファンクラブやイベント限定のものなどもリリースされるようになって、様々な形で音を届けることが出来るようになりました。今までの形にとらわれず、その時点で出来る形で「音」を届けようとするアーティストの作品をご紹介します。

 

スガシカオ。アーティストの中には、永く所属レーベルを固定して、安定した製作環境の中で活動する人と、自分の納得できる環境を求めて、環境を変えていく人がいる。スガは明らかに後者。インディーズからメジャーに移り、キティ⇒オーガスタとレーベルを移った後、一度インディーズに潜る。そのあとビクター系のSPEEDSTAR RECORDSでメジャー返り咲きするが、TVやインストアライヴといった「通常のプロモーション」とは違う、ネット系アピールなども柔軟に行っている。インディーズ時代には「配信限定」というリリース形態が多かったが、メジャーに戻ったあとには公式BOOTLEG

といった「正規オリジナルアルバム」にカウントされない作品がリリースされている。

 

そんなBOOTLEG系の作品の中でアコースティックにこだわった作品の2作目が本品“ACOUSTIC SOUL 2”-1作目はこちら↓-

正規アルバムで扱うにはチョット「違う」、実験的でプライベートな作品が収められており、スガの「表(メジャー)」に現れづらい部分も識ることが出来る。

 

発芽」。初期からスガのサウンドブレーンである森俊之が参加した曲。クレジットには「作詞・作曲・編曲:スガシカオ」となっているが、コードの付け方には森のセンスも入っている感じ。ドラムスは比較的単純な音とリズムの、「リズムマシン然」としたものだが、その淡々とした「乾いた」感じが、森のローズ風エレピの小粋なバッキングを「濃く」感じさせる。さりげないベースはこの作品では唯一打ち込みでなく、名手松原秀樹が弾く。時にバッキング、時にオブリ、そして軽い感じのソロと変幻自在な味を魅せるのはギターの天才田中義人。

 

ヤグルトさんの唄」は、スガが母親に向けて歌った歌。なかなかストレートな歌で、直接老いた母に言えない言葉を紡ぐ。♪ぼくの苛立ち/孤独と希望/あなたは知ってたんでしょう?/人はみんな/誰かの命を支えて生きる/愛情にくるまってると/それに気づかない♪♪春に咲く花をまた/一緒に見に行こう/だからあと少しだけ/どうか 一緒にいて♪ほとんど歪んでいない音で、合いの手を入れる田中のギターが味わい深い。

 

ぼくの街に遊びにきてよ(Acoustic ver.)」は、転調が印象的な曲で、小林武史の作。この曲だけはギターは編曲者でもある間宮工が弾く。ラストが、サビに戻って終われば据わりが良いのに、終止形で終わらないのが印象的(Ⅰ(tonic)で終われば座りが良いのに、Ⅴ6(dominant)で終わる)。

 

この作品、スガが「地獄のロード」というツアー「Hitori Sugar Tour 2020」に合わせて創られた。このツアーは、冬に企画され、ステージ上はスガ独り、スタッフはローディと制作だけで、スガを合わせた3人で楽器や機材を手運びし、会場設営も自分たちでしながら全国の小規模な会場を回るという弾き語りツアー。スガの息吹を感じられる「近さ」ながら、安直にカラオケに頼るのではなく、サンプリングマシンやループマシンなどを使って、ライヴ感はありながらも「薄く」感じさせない演出で、約2時間たっぷり楽しめる。

 

本来、2月頭から4月半ばまで続くはずだったこのツアー、ザンネンながら新型コロナウイルス(COVID-19)の蔓延防止のための国からの集会中止要請を受け、3月からの公演が延期となったため、ライヴ後半の東京公演以降の各会場で販売されるはずだったこの作品も、現時点では通販だけがその入手方法になっている。

 

1作目の“ACOUSTIC SOUL”はダウンロード販売もあるが、この作品に関してスガは「CDショップでは売らない。ダウンロード販売もしないし、サブスクにも出さない」とのこと。内容としては結構実験的であったり個人的な歌であったりするので、なんとなくそれは理解できる。

 

通販以外ではライブ会場物販のみで入手できるはずだったこの作品、現在ライヴの延期でそのルートが絶たれている。

 

でもスガは、ライヴを楽しみにしていたファン向けに、3/12から5日連続で、「毎日インスタライブ」と銘打ち、このミニアルバムの作品や即興曲など数曲をInstagramで毎日自宅から届けている(最終日の本日3/16は21:30~)。「自宅から中継」という以前なら夢物語のようなシチュエーションだが、機材・環境の進化・進歩で比較的簡単にできるようになった今、それを素早く取り入れてファンに音楽を届け続ける彼の姿勢が頼もしい。

 

音楽の届け方には決まった形はないのだな、また、届ける形を自分で制限することはないのだなと感じた作品と、ここ数日の出来事でした。

紙ジャケで、レコード風装丁。
紙ジャケで、レコード風装丁。

 

【収録曲】

1. 発芽
2. 1+1
3. ヤグルトさんの唄 
4. ぼくの街に遊びにきてよ(Acoustic ver.)

 

「発芽」

 

Instagram:suga_shikao

更新: 2020/03/16
必聴度

スガの音世界に魅せられているなら、さらに★+1で

いかにもプライベートCDという感じで、曲数は少ないし、若干音もチープだが、実験的な曲やプライベートな曲もあり、スガの世界を堪能できる。

  • 購入金額

    2,000円

  • 購入日

    2020年02月08日

  • 購入場所

    スガ シカオ OFFICIAL GOODS ONLINE SHOP

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