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多機能すぎてホビー用途には明らかにオーバースペック...

ふとしたはずみで入手したTektronixのデータロガー DAQ6510/7700 です。

 

 

Tektronixにはベンチトップ型の高級DMM(デジタルマルチメーター)のDMM6500があるのですが、DAQ6510はDMM6500の測定用背面端子をごっそり削除(トリガ端子は残っています)して、オプションのマルチチャンネルスキャナユニットを搭載可能にしたものです。

 

DAQ6510/7700は、そんなDAQ6510に20chスキャナユニット(7700)を同梱したものです。

 

仕様は検索で...。というわけにもいかないので、本当に基本的な性能のみTektronixさんの公式webから引用します。

 

  • 電圧:100nV~1,000V(基本DCV確度:0.0025%)
  • 電流:10pA~3A
  • 抵抗:1µΩ~120MΩ
  • キャパシタンス:0.1pF~100µF
  • 熱電対、測温抵抗体、サーミスタを使用した温度測定(-200~1,820℃)
  • デジタイザ(1MS/s、16ビット、読み値の保存容量:700万回)
  • 12種類のプラグイン・スイッチ・モジュールと最大80チャンネルのキャパシティにより、あらゆるテスト・システムに対応可能

 

DMMの表示桁数としては6.5桁(1999999カウント)で、各chのスキャン速度はスキャナユニットにより変わります。7700は、方式としては一般的なリレーを使用しているのでそれほど速くはありませんが、300Vrmsの高電圧や熱電対にも対応するなど、汎用性の高いスキャナユニットです。

 

高速スキャンが必要な場合はphotoMOSリレーを使用しているスキャンユニットがあり、800ch/secのスキャンが可能とのことです。ただし7700のような高電圧入力(300Vrms)は不可能のようです。

 

 

DAQ6510はタッチパネル対応なので、基本的な操作はタッチパネルで行います。

画面も大きく、レスポンスもよいので最新のDMM(Tektronixさんの位置づけではデータロガーですが)はすごいなと感心させられます。

USBポートは測定データのコピー(本体内部に700万回分の測定データの記録が可能です)と、DAQ6510をスタンドアロンで自動制御するためのTSPスクリプトの保存用に使用します。

 

 

 

背面には、リモートコントロール用のUSB,LAN端子、それからトリガ関係の端子があります。DMM6500は背面に10A(前面端子はDAQ6510と同じ3A)まで測定可能な電流測定用端子があったのですが、DAQ6510はスキャナユニットを使用するために背面端子は削除されています。

 

 

7700スキャナユニットです。

カバーをあけるとリレーとねじ止め端子が並んでいます。2端子20chまたは4端子10chと、独立した電流測定専用の2chが用意されています。

 

 

 

 

正直言ってようやく入り口に立った程度の活用しかできていないのですが、写真映えはするので今後のレビューで電圧や温度を測定する際には可能な限り登場させようかなと思っています。

 

リモートコントロールは、VISAドライバをインストールして使用するとのことです。コマンドはSCPIとのこと。トリガコマンドに対するレイテンシーは、GPIBが最も小さく、次にUSB、LANは遅いようです。(データ転送はUSBが最速、次にLAN、GPIBだったかな...取説に記載されています。)

 

 

スタンドアローン制御用(用途としては同じTSP端子を持つTextronix製品の制御も行います。ただしDAQ6510ではTSP端子を使用するにはオプションボードが必要です)にTSPコマンドというものもあるようですが、こちらは全く手を付けられていません。

 

他に、3月までの購入ならば簡単にDAQ6510の制御プログラムが作成できる Kickstart2.0が無料でもらえるようです。

 

 

 

 

 

Tektronixさんの公式webに問い合わせ用の入力フォームがあり、必要事項を入力すると後日アクティベーションファイルのダウンロード方法の通知があります。アクティベーション用のファイルは共通というわけではなく、Tektronixの会員登録をした際のメールアドレスと紐づけされているようです。

 

担当者が変わった場合などは、Tektronixの会員ページでアクティベーションの追加メールアドレスを登録することができるようなので、それで対応できるそうです。

 

 

Amazonで買った安定化電源制御モジュールの電気特性の測定にDAQ6510を使ってみたりはしているので、後日安定化電源制御モジュールのレビューのときにこちらも更新したいと思います。

 

 

機能が多すぎて使いこなせないという自分自身の能力にかかわってくる問題以外は、現時点でDAQ6510本体に対する不満はないです。

 

取説はダウンロードするというひと手間がありますが、日本語版も用意されているので一安心です。

 

ただし、海外メーカーの測定器を使うときにはお約束のようなものですが使いこなそうと思うと日本語化されていない英語のドキュメントを読む必要があったりします(SCPIやTSPのコマンド解説が載っているドキュメントとかTSPのサンプルスクリプトとかが英語版のみだったと思います)。

 

更新: 2019/03/07

測定値の統計処理

[2019/03/07追記]

 

DAQ6510はTSPスクリプトなどでスタンドアロンでの自動測定が可能ですが、そこまでしなくても測定値の簡単な統計値を求めることができます。

 

先日購入したKKmonの安定化電源モジュールの出力電圧を調べてみました。

↓の画面イメージは、KKmonの安定化電源モジュールで5Vを出力した時の統計値です。

設定電圧5.00Vに対し、出力(avg)は5.01Vです。KKmonの安定化電源モジュールはこの0.01V程度の誤差が発生しやすいように思います。

 

標準偏差は0.09mV程度なので、結構優秀です。

こんな測定がほぼ設定不要で、画面のスワイプのみで表示されます。

次は3Vです。
5Vよりは偏差は少ないですが、それでも測定値は3.007Vです。電圧のふらつきを示す標準偏差(画面ではStandard Dev)がやはり0.09mV程度と優秀なのを考えると、設定分解能の限界で偏差が発生しているように思えます。

次は1.5Vです。
1.5Vでも0.01Vの誤差が発生するのは結構きついような気がします。この電源モジュールの先でさらにDC/DCコンバータを入れるのなら問題ありませんが、1.5Vで動作するICには直接接続は難しいかもしれません。(きちんと測定して、例えばこの場合なら1.49Vに設定すれば電圧的にはほぼ偏差0になります。)

 

さらにスワイプのみでグラフ表示もできます。
なかなかの多機能ぶりに使うのが楽しくなってきました!

 

最後に一つ情報を。DAQ6510のUSBメモリへの画面ハードコピーは、HOME+ENTERの同時押しで保存できます。これが英語版しかないリファレンスマニュアルには書いてあるのですが、日本語のユーザマニュアルには書かれてないようです(見つけられませんでした)。

 

次回更新時には、TSB(TSP Script Builder)か、Tektronixさんのご厚意でライセンスをいただいたKickStartでなにか測定した結果を載せたいと思っています。

更新: 2019/03/12

本体のみ&プログラム無しでデータロガー

前回更新で、TSB か KickStartを使ってみようと書きましたが、少し寄り道して本体のみでデータロガー機能を試してみました。

 

今回は手元にあるHi-res WALKMANの連続再生時間を測定してみました。

測定に使用したSONYの NW-A16はHi-res WALKMANの入門機ですが、SONY初?のmicroSD対応WALKMANということで結構人気だったように思います。

  

 

まだ7700スキャンユニットは使っていません。1chのみの測定ですが、ホビー用途ではそんなものかもしれません。

 

設定で重要なのは、トリガとバッファの設定です。

 

まずはトリガ設定から。設定できるトリガの種類は何種類かありますが、今回は SimpleLoop を選択しました。

 

次にCount設定。この数値は、バッファに何回分の測定値を記録しますか?ということですね。

次のDelayと測定したい時間に応じて設定します。

 

FLAC(96kHz, 24bit)1曲ループ再生で、20時間近くは再生できるかな?と思い、

 

10秒に1回測定(Delay設定)

23時間位( 6回/分 × 60分 × 23時間) ≒ 8000 Count としました。

 

 

次に測定値を一時保存するバッファーの設定です。

『USBメモリーに直接保存できるかな?』と思ってバッファーの名前をusbにしてみたのですが、USBメモリーの直接保存はできませんでした。

 

ここで、Style が Standard となっていますが、Standardでは無いほうを選択するともっと詳細な測定結果が保存されるようです。

 

設定ができたので、いよいよ測定です。

 

接続図はかけてないのですが、NW-A16に100均のイヤホン2分岐アダプターを挿し、片方にイヤホン(MDR-NC33だったか..)、もう片方にDAQ6510を接続します。負荷としてイヤホンが接続されてないと本来の再生時間と違った結果になるかもしれないと思ったからです。

 

ただし、NW-A16とMDR-NC33の組み合わせの場合、NC機能を有効にすることもできるのですが、今回は2分岐アダプターがあるためにNC機能はONにできませんでした。その他DSEE HXやClear Audio、イコライザーなどの機能は全てOFF、Volは15に設定して測定開始しました。

 

10秒に一回の測定なので画面を見ていてもあまり面白くはないのですが、下半分をグラフ表示に設定すると、少しづつグラフが伸びてゆきます。

 

測定途中(約6.5時間経過)のスクリーンキャプチャです。問題なく測定できています。

 

そして約23時間が経過しました。測定終了です。

ん? 

8000ポイントの測定は終わっていますが、NW-A16はまだ再生し続けていました..。(汗)

NW-A16の製品ページを確認してみたところ、FLAC(96kHz, 24bit) NC OFFの場合、公称連続再生時間は40時間でした...。 SONYの省電力技術を舐めていました...。

DAQ6510は設定どおり動いていたのですが、そもそもの測定条件の計算が間違っていたという..。しかも40時間の測定って、2日がかりの測定ですか...。

ちなみに、再生していないときは 0.0*mVrms とかの電圧なので、再生/停止は簡単に見分けられます。

下の図は、測定がうまくゆくかどうか確認していた時の画面キャプチャーです。グラフの左端4サンプリングくらい?が再生停止中のACV測定値です。

 

測定した結果は、USBメモリにコピーすることができます。ファイル形式はcsvです。

 

EXCELに読み込ませると↓な感じで記録されていることがわかります。
意外といろいろな項目が保存されています。

NW-A16の連続再生時間は再測定が必要な結果になってしまいましたが、今度はTSPで簡単なプログラム?を書いてみたいと思います。

更新: 2019/05/30

Tektronixさんのセミナーに参加してきました

[2019/05/30更新]

 

Tektronixさんの新たな試みということで、大阪でもセミナーを開催してみようということになったようです。

 

2日間にわたりいくつかセミナーがあったのですが、今回は『PythonでTektronixさんの計測器を制御しよう』というセミナーに参加してみました。

 

他のセミナーよりも人気があったのか、通常20人程度用とも思える会議室に30人ほどが押し込まれ、暗黙の了解で私も含めた参加者の方々が3人掛けのテーブルの両端に行儀よく座っていたら『まだ参加者の方が来られる予定なので詰めて座ってください』とのことですし詰め状態でのセミナーでした。

 

セミナーの中身は、3部構成でした。

最初がPythonの簡単な紹介からPythonをつかったTektronix計測器の制御

次がTektronix計測器のスクリプト実行機能を使ったサブシステム化

最後がTSP-Linkを使った自立要素高めのTextronix計測システムの紹介でした。

 

実際のところ、Python風味が感じられたのは第1章のみ..。まぁ無料のセミナーですからね、ある意味仕方がありません。

 

ただこのセミナーも『無駄だったのか?』というと、そうでもありませんでした。

前回更新の最後に、『次はTSB(Test Script Builder)の紹介でも..』と書いていましたが、なかなか更新できずにいました。

 

『仕事が忙しくて時間がなかったから』というのも理由の一つではあるのですが、なによりも困ったのが、TSBでスクリプトを書く意味がよくわからなかったためでした。

 

というのも、TSBで作成したスクリプトはDAQ6510内部で実行されるのですが、『内部で実行するだけならほかの計測器とか電源ON/OFFとか制御できないよね?』という疑問があり、それならPCを使ってPythonで制御したほうが自由度が高くて良いなと思っていました。

 

今回のセミナーではその部分に軽く触れており、Pythonで全ての制御をおこなうのではなく、その中でDAQ6510だけで行える制御の部分をTSBなどでスクリプト化(Pythonからコマンド送り込んでも一緒ですが)してPythonからそのスクリプトをコールする形を想定しているそうです。

 

セミナーのデモでは、なぜか if文でbeepを鳴らしまくるという、わかりやすい結果ではあるものの、実際のプログラムではあまり使わないデモでした。

 

『DAQ6510のbeep機能って意外と多機能なんだ』という驚きもありましたが、beep鳴らし終わったら最後の測定値をpythonに返すとか、終了判定するまでの全データをbinary転送してグラフ化するとか、そんなに長く説明はしなくてもよいので『beepデモに数行追加するだけでこんなこともできますよ』というデモを追加してもらえると嬉しかったです。サンプルコードがあればコマンドとか処理の流れは自分で調べます。

 

セミナーの最後に、アンケートを記入して返すとDAQ6510ノートがもらえました。

 

  • 購入金額

    270,000円

  • 購入日

    2018年12月29日

  • 購入場所

    Tektronix

16人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (5)

  • タコシーさん

    2019/02/19

    なんかすごい機械を購入しましたね 私には使いこなせないというか使い道が判らない..(~_~;)
    取説が日本語なら(それでもチンプンカンプン?)....いやいや、私にはなんともならんでしょう。
  • aPieceOfSomethingさん

    2019/02/20

    タコシーさん、コメントありがとうございます。

    多機能ではあるのですが、基本はテスターなのでここまでのものが要るのか?というツッコミは当然あろうかと思います。

    テスターを使っていて『何ポイントかの電圧や温度をリレーで切り替えて測定したいな..』と思うことが何度かありまして、リレーをマイコンで制御すればいいのかな?というのがメーカー製の測定機になった感じです。

    ぼちぼち使ってゆこうかと思います。
  • aPieceOfSomethingさん

    2019/02/22

    TektronixさんからKickStart 2.0のライセンスファイルもいただいたので、後日KickStart 2.0のレビューも追加しようと思います。 フリーで使えるTSB(Test Script Builder : こちらは普通にプログラムを書く感覚のソフトです)もいつかレビューしようと思っています。

    が.. 機能が多すぎてなかなか時間が足りません。
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