レビューメディア「ジグソー」

アベレージ高し!

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。長い歴史を持つグループには膨大な作品があるものです。その中でも名盤と呼ばれるものもあれば、高い評価を得ないものもあります。ただ一般に「通り」が良いのはそのグループの代表曲が収められているものになりがちです。長寿グループの中期の作品で、代表曲を一つも含まないために一般的知名度は低いながら、各曲の出来もプレイも良く、アベレージの高い作品をご紹介します。

CASIOPEA。もう何度もご紹介している日本フュージョン界の大御所グループ。途中活動停止時期があるが、アマチュアでの結成からはほぼ40年の歴史を数えるフュージョングループ。どちらかというとジャズよりだったクロスオーバー~フュージョンブームの真っ只中、1970年代末に現れ、ほぼ同時期のT(HE)-SQUAREとともに明解でキャッチーなジャパニーズフュージョンの大きな推進役だったグループ。

そんな彼らの活動は3期に分けられるが、1期は1980年代まで。3作目でドラマーが交替した以外は約10年間不動で、フュージョンブームの後押しがあってここが黄金時代と呼ばれ、「CASIOPEAカラー」が定着した時代。そしてここ5年ほどは彼等は「CASIOPEA 3rd」として第3期であることを明確にして活動している。メンバー的にはプロデビュー前から永くこのバンドのキーボードを務めた向谷実が外れ、オルガニスト大高清美が鍵盤奏者として加わっているだけで、他は第2期終末期とメンツが変わらないのだが、一番音色的に幅が広いキーボーディストの変更はその肌触りを大きく変えた。ただ活動再開以降不動のこのメンツで活動しているために「新生」CASIOPEAとしてカラーが定着しつつある。

結局現在地から俯瞰すると、その間の第2期が一番メンバーの出入りが大きく、音楽性も流動的だった。

...とは言っても実際は唯一の全期間在籍メンバーでリーダーのギタリスト野呂一生と前述のキーボーディスト向谷、第2期以降現在も行動を共にするベーシストのナルチョこと鳴瀬喜博の3人は不動、何度も入れ替わったのはドラマーだけ。

リズム楽器担当で、歴代ドラマーは作曲もアルバムごとに1曲くらいしか担当しなかったため大きな影響はないように思うかも知れないが、歌なしのテクニカルな楽曲というのは曲全体の印象を決めるのにドラマーのタメ方やプレイの影響が大きく、この第2期が一番作品のバラツキも大きい(フュージョンブームの後退で契約が難しいという問題があったのかも知れないが、レコード会社も頻繁に変わっており、その制作筋の意向やカラーの意味でも統一性がないのかも)。

その第2期の中では一番良かったかなとcybercatが感じるのが1992年~96年のドラマーが熊谷徳明であった時期。この後は第1期のドラマー神保彰がサポートドラマーとして出戻って支えるのだが、そうなると第1期後半との差はベーシストだけになってしまい、新味に乏しい。熊谷は元々CASIOPEAのファンだったと言うだけあって、彼が入った状態での新録ベスト選曲アルバム

もリスペクトに満ちていたし、現在もフュージョン畑で仕事をしているだけあってこのテの音楽に精通していた。

そんな熊谷参加のラストアルバムが本作“Flowers”。どことなく「遠慮」が感じられたそれまでのプレイから解き放たれたかのようなドラミングが神保にはない味わいで、いわゆる「代表曲」「名曲」と呼ばれる曲は一つも含まれていないのに、どの曲も非常に平均点が高い仕上がりになっている。

「THE MIND QUAKE」は第2期CASIOPEAらしい、存在感あるナルチョの歪んだベースに載せてギターとキーボードの長めのユニゾンでメロが取られる曲。熊谷のハネるドラムは神保のカタメのノリとはまた違うハネの破裂感が強いリズム。そして今となっては懐かしい向谷の「CASIOPEAらしい」キーボード音色(エレピやシンセブラス)が聴ける曲でもある。

「ABERDEEN」は向谷の色が出た面白い作。複数弦弾きがパターンに入った粘るベースパターンと、リリカルでややカワイイ部分がある向谷のつくるメロディが印象的だが、やはりこの曲も神保とはハネ方が違う熊谷のドラミングが印象的。

7分超の大曲「TRANCE EVOLUTION」は、ややオリエンタルなテーマと各プレイヤーにソロや魅せ場があってキメも多い、コンサート・ライヴでは受けが良さそうな曲。4人がテクニックをぶつけてプレイする曲である意味CASOIOPEA「らしい」が、後半は野呂のギターソロが長く、もう少し他プレイヤーフィーチャリングタイムがあっても良かったかな。

第2期の中では安定していたと思われたこのメンツもこの作品でおよそ4年の活動を終える。熊谷は他メンバーと比べて若く、もともとCASIOPEAファンと言うこともあって「遠慮」があったのかも知れないが、この作品では今までになく「叩いて」いる。それが、離脱の決心をしてからそれまであった遠慮を取り払っての「吹っ切れた」プレイであったのなら、少しサビシイが。
このメンツではこれがラスト。熊谷って良かったと思うンだけどなー...
このメンツではこれがラスト。熊谷って良かったと思うンだけどなー...
曲としては飛び抜けた代表曲はないのだけれど、熊谷のプレイが一番魅せたアベレージが高い作品です。

【収録曲】
1. BLOOMING
2. THE MIND QUAKE
3. TRANSIENT VIEW
4. JUST ONE WAY
5. ABERDEEN
6. SECRET MESSAGE
7. SEASONS
8. SUPER SENSE
9. MYSTIC LIE
10. TRANCE EVOLUTION
11. CANDLE LIGHT

「ABERDEEN」

  • 購入金額

    3,000円

  • 購入日

    1996年頃

  • 購入場所

18人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • 北のラブリエさん

    2016/07/15

    やっぱりドラムに注目するんですなあ。
    こんなイベントも有りますぜげへへ。
    amass
  • cybercatさん

    2016/07/15

    やっぱり聴く順はベース⇒ドラムス⇒歌/メロディ楽器になりますねー。

    !さとうかなでちゃんも出るんすねー。
    今回は電子ドラムでの演奏もあるとか(彼女のブログにも記事あった)。

    しかしその日は関東にはいない....orz

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