レビューメディア「ジグソー」

J-POPと歌謡曲の分水嶺って?

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。新しさと伝統の分水嶺。曲を聴いたときに「新しさ」前面に感じるか、「懐かしさ」や「なじみやすさ」を感じるかは意外にちょっとした差です。今で言うとJ-POPとして万人にウケる曲・アーティストとなるか、歌謡曲系の曲として若者にダサいと言われるようになるかはアレンジや売れた曲のイメージなどわずかなファクターで決まってしまうことも少なくありません。実力あるR&B系バンドでありながらヒット曲が比較的歌謡曲系のノリとアレンジを持っていたため、ツウ向けのアーティストとなってしまったグループの「ほぼ」最後の燦めきを閉じ込めた作品をご紹介します。

もんた&ブラザーズ。ハスキーで男っぽい声のヴォーカリストもんたよしのりを中心に組まれたバンド。ベースにR&Bを持ち、カントリーやブルース系のフレーバーを持つ曲を多く手がけたが、デビューアルバム

に収められた「ダンシング・オールナイト」の大ヒットで、その曲の持つ歌謡曲チックな面にフォーカスがあたり、(世のオッサンが女性のいる店でカラオケに歌う曲としてよく歌われたこともあって)今で言うとJ-POP系のアーティストというよりは歌謡曲系のグループとして捉えられるようになってしまった。

もともとブルースと演歌など日本的なフレーバーを持つ曲は音階が似通っている(半音遷移がない俗に言う「ヨナ抜き」)。したがってブルースは少しアレンジを替えると歌謡曲~演歌調になってしまう。ビッグヒット「ダンシング・オールナイト」がそういう毛色を持っていたため、徐々に彼等を好む年齢層が限られていったのは不運なこと。

そんな彼等の3枚目のアルバムにして、スポットライトがあたった作品としては最後のアルバム。2nd

で固定されたメンツは変わらないが、この作品ではキーボードに伊藤暁が加わっている。

「DESIRE」。意外だが、彼等の2番目のヒット曲はこの曲(最も売れたのはもちろんダントツで「ダンシング・オールナイト」)。Marty Braceyの刻むタイトなリズムとちょっと懐かしい感じのオクターヴを♪ンパッンパッ♪と行き来するスラップ(というより当時の言葉ではチョッパー)ベースの渡辺茂が所々で入れる遊びがセンスがよい。高橋誠と豊島修一のツインギターが奏でる音色の落差が面白い。

「抱きしめたい(Just Only Tonight)」最初からなるカウベル風の音が表と裏をひっくり返すシカケが入っているが、ピアノのコードの付け方と刻んでるベースとギターのオブリが結構TOTOのセカンド

あたりを彷彿とさせるハードなナンバー。ギターソロはLukeばりのハードなものなんだけど、左chでずっと鳴ってるクリアめの音色のギターのカッティングが「ハードロック」という感じではなくしている。

「サマー・ナイト・ドリーム」。ホンキィトンク調ピアノが彩る軽くシャッフル気味のこの曲なんかブルーステイストと歌謡曲テイストの差はごくわずかだと判る。もう少しゆっくりめでヘヴィな音なら、この歌詞このアレンジのままでもブルージーなサザンロックで十分通用する。

聴き直してみると、彼等が歌謡曲カテゴリーに片付けられてしまったのはほんのちょっとしたこと(歌謡曲が悪いわけじゃないけれど、人気・売り上げという点では購買層を狭める)。ただこのアルバムのアレンジはヤマタツとの活動が有名な椎名和夫が3曲手がけるだけで、のこりは彼等自身。そういう意味では彼等はセンス的にそっちだったのかなぁ...

結局彼等はこのあと2枚(ベストアルバム除く)のアルバムを出して解散。アナログレコード時代のアーティストだった彼等の作品のCD化もここまで...というこであんまりその後は評価されなかったカンジ。ほんの少しの差でもっと命脈を保てたかも知れないと思うとオシイ。
前作(Half&Half)に比べて一人増えている
前作(Half&Half)に比べて一人増えている
楽曲の良さの割りには、「古くさい」イメージが付いてしまっているグループ。でもよく聴き込むと結構イイ。そんなスルメみたいな作品です。

【収録曲】
1. DESIRE
2. 流離
3. 声にならないLOVE SONG
4. Keep on Rollin’
5. 抱きしめたい(Just Only Tonight)
6. 夜明けまでに
7. Show Time
8. サマー・ナイト・ドリーム
9. 時の彼方に
10. 帰りたいあの街へ

「DESIRE」(動画は企画モノなので、その後円広志「大阪 Broken Heart」→H2O「僕等のダイアリー」→岸田智史「重いつばさ」→クリスタルキング「蜃気楼」と続きます)

  • 購入金額

    1,500円

  • 購入日

    1995年頃

  • 購入場所

16人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (8)

  • 北のラブリエさん

    2015/11/30

    分水嶺・・・ザ・ベストテンとか夜ヒットに出てた人は歌謡曲でそれ以降はJ-POP、とか乱暴なことを言ってみるw

    ヒット曲が寿命を縮めることって結構ありますよね。
  • cybercatさん

    2015/11/30

    そうですねェ...
    それだとアイドル系はビミョーですね。

    >ヒット曲が寿命を縮めることって結構ありますよね。
    特に初期のころのビッグヒットは本人も、周りも、ファンもゆがめてしまうことがありますね。
  • 北のラブリエさん

    2015/11/30

    まあJ-POPって言葉は”宣伝文句”でしょうから本質的にはあまり変わらないと思います。
    Jリーグとどっちが古いんだろう。
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