レビューメディア「ジグソー」

これが判るのはオ・ト・ナ♡

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。ライヴアレンジとオリジナルアレンジが大きく違う曲があります。だいたいにおいてライヴアレンジの方がシカケが多く煌びやかで、人目(人耳?)を惹きます。しかし、スタジオアレンジにはライヴにない良さがある、そんなことが時が経って判ってきたそんな作品をご紹介します。

CASIOPEAは現在も「CASIOPEA 3rd」として活躍する日本のトップフュージョングループ。彼等の最も輝いていたのは今を「3rd」と呼ぶなら「1st」のころ。それも後期だ。

この3rdは「第3期」を表しているのだが、彼等は結成以来2度しかメンバーチェンジをしていない..ということではない。「大きな変革」が2回あった、ということなのだ。

第1期はリーダーでギタリストの野呂一生とベーシストの櫻井哲夫、キーボードの向谷実の3人がキーパーソン(デビュー前まで遡れば向谷はあとからの加入で「オリジナルメンバー」ではない)。これにドラマーとして前期(~1979)は 佐々木隆が、後期(1980~1989)は神保彰が加わる。この第1期後期が世のクロスオーバー~フュージョンブームともあいまって大きく彼等が躍進した時期。

第2期(1990~2006)は野呂と向谷は変わらずも、リズム隊が脱退した格好に。そしてベーシストがチョッパー(今でいう「スラップ」)の達人、鳴瀬喜博に交替。ドラマーは長続きせず、日山正明が3年ほど、熊谷徳明が4年ほど務めたあとは旧メンバーである神保彰が正式メンバーではなくサポートメンバーとして出戻って支えた(一時期元T-SQUAREの則竹裕之とのツインドラムであった時期もあり)。

その後一時的な活動中止を挟んで、2012年以降は明確に「第3期」であることを示す「CASIOPEA 3rd」として活動しているが、メジャーデビュー以来在籍を続けていた向谷がついに抜け、メンバーは野呂と鳴瀬、それにCASIOPEA史上?初の女性プレイヤーとしてキーボードの大高清美が加わった(ドラムスは相変わらず神保がサポート)。

それぞれの時期に音色的・楽曲的特徴があるが、フュージョンという分野が「テクニック」と言う部分の比重が大きいジャンルでもあるせいもあり、皆若くテクニックを表に出すのにためらいがなかった?そして4人全員がテクニシャンであった第1期後半がブームに乗ったレコードセールスも相まって一般的には「黄金期」と呼ばれる。

この第1期後半には何度かライヴアルバムが出ているが、海外での評価も高い彼等の代表作といえるのが以前ご紹介した“MINT JAMS”。

この作品はライヴ録りながら、一般的な「コンサートの録音盤」ではなく、レコーディングのためにわざわざ設定されたライヴの録音。ごく少数のオーディエンスを招き、しかしその存在すらほとんどをミキシングで消したミックス。ベスト盤のニュアンスを持った選曲に4人の「一発」に賭ける完璧な演奏で名盤の誉れ高い。

その白熱の、しかしオーディエンスノイズを消し、スタジオ録音と聴き間違うほどのCOOLで完璧な演奏により、その後も初期の曲は“MINT JAMS”盤アレンジが一番識られたテイクとなったし、その後の彼らの長い歴史において「何かを変える」場合も“MINT JAMS”盤が下敷きとなるのがほとんどだった。

しかし“MINT JAMS”盤はライヴアレンジ。それに先立つスタジオ盤アレンジがあった。特に“MINT JAMS”の最初の2曲で人気の高い「TAKE ME」と「ASAYAKE 朝焼け」は本作が直接の下敷きとなる。

とは言っても、このアルバムのテイクも実はオリジナルアレンジではない。実は彼等は初期にはよく曲の焼き直しをやっている。これはデビュー作・2ndとそれ以降がドラマーが違ったため、新メンバーの神保テイクを作りたかった..というのもあるのかも知れないが、本当にこの初期の曲は名曲揃いで、何度ものテイクを変えた録音に耐えるものでもあったためだ。

一曲目は代表曲「ASAYAKE 朝焼け」。初出の“SUPER FLIGHT”盤(ドラマー佐々木)に続き2度目の収録。ギターのカッティングのみが目立ち、リズムはパーカッションがメインでドラムスはタムの回しやシンバルワークによるオカズだけで明確なビートが感じられなかった初出版のイントロと違って、通しでカウベルが4分音符で鳴るビートが強く感じられる作り。デッドなバスドラムとリズムマシン然とした堅いハンドクラップで本ヴァージョンのテンポがやや遅めに感じられるが、実際にはほとんど変わらない。違うのはAメロに入ったあとのキーボードがメロを取っているところのギターのバッキング。そのパターンからすると明らかに“MINT JAMS”の「元」はこちらだ。一方その後現在に至るまでライヴでは必ず演奏されるこの曲は、導入のベースとドラムがユニゾンで決めるイントロラストからいわゆるメロディが始まるまでのブリッジが12小節であるのと、エンディングはギターのカッティングとリズムを合わせた喰い喰いのキメで終わるのにむしろ慣らされてしまったが、それは初出版のアレンジで当テイクは前者は4小節で後者はフェードアウトと軽めの造り。逆に新鮮。

「EYES OF THE MIND」は第1期後期のメンバーで直前にスタジオ録音(アルバム“MAKE UP CITY”)されているにもかかわらず、再録された。これもASAYAKE同様イントロが短い(16小節⇒8小節)が、全体の展開は新しい分その後も演奏されるヴァージョンに近い。リバーブを効かせたギターに対して少しデッドなキーボードの対比が面白い。

「BLACK JOKE」も既に3回目の登場となる。1st

のDavid Sanborn+Brecker Bros.のラッパ隊が入ったCOOLなクロスオーバー風アレンジではなく、神保のイントロデュースとなった3作目のライヴ盤、“THUNDER LIVE”のアレンジをさらに高品位にスタジオで再現した風情。佐々木よりもさらに緻密でカッチリ系の神保にこの超高速6連符系イントロをやられると世のドラマーは絶望したくなるw

実はこの作品は初の外人プロデュース作品。それが当時のLAフュージョンシーンの大御所ドラマー兼プロデューサーのHarvey Mason。CASIOPEAとしてはHarvey先生に聴いてもらうためにありったけの良い曲を持ってきた、というところか。Harveyはそれまで東海岸風COOLさが目立っていた彼等の曲に西海岸的ポップさを付け加えて、これが後の彼等の大ブレイクにつながる。

ここに取り上げられた曲はそんな訳で彼等の初期の代表曲。繰り返し繰り返しライヴで取り上げられ、FM放送などでしきりに流された。それらはこのHarveyのポップなアレンジが核となっている(前述したようにHarveyはイントロをやや短く切り詰める傾向にあるので、長さの面では後のライヴでは元の構成に戻されたが)。

名盤“MINT JAMS”のアレンジがどうしても耳に残るが、それはこのポップなスタジオ版が下敷きにあってこそ。先に派手なライヴを聴いてしまうと地味~に感じてしまうけれど、実はCASIOPEAのポップテイストはこの作品から始まった。

そう考えると噛めば噛むほど...の名盤です。
メンバーみんな若いな(そして髪が長いw)
メンバーみんな若いな(そして髪が長いw)
【収録曲】
1. ASAYAKE 朝焼け
2. A PLACE IN THE SUN
3. TAKE ME
4. LAKAI
5. EYES OF THE MIND
6. BLACK JOKE
7. LA COSTA (INTRO)
8. LA COSTA
9. MAGIC RAY
10. SPACE ROAD

「BLACK JOKE」

  • 購入金額

    2,800円

  • 購入日

    1992年頃

  • 購入場所

24人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (4)

  • パッチコさん

    2014/07/04

    カシオペア大ファンです!
    3rdがいつの間にか?復活してますよね!
  • cybercatさん

    2014/07/04

    パッチコさん、
    >カシオペア大ファンです!
    同年代?w

    3rdはホントにイツノマニ...って感じでしたよね。
    当初は向谷のきらびやかな音色と軽妙な司会wがないCASIOPEAって考えられませんでしたが、オルガニスト大高のゴージャスなプレイもいいですね。
  • パッチコさん

    2014/07/04

    向谷氏は以前、ビジネスショウに出店した際に向かいのブースにおりました。ずいぶん前ですけど。
    隣のブースでは高橋幸宏氏がなんて、バブルな感じでしたね。

    カシオペアはライブが楽しいバンドですよね。

    きっと同年代ですw
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