レビューメディア「ジグソー」

世代を超えた音楽、世代が混ざる音楽

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。自分のカラーを大切にして「古くさい」と言われようとも一途に自分の目指す方向性を極めようとする芸術家もいれば、新しいこと/新しい分野にチャレンジする芸術家がいます。ある分野で確固たる名声を築いたアーティストが、世代を超えて新しいジャンルに挑戦した盤をご紹介します。

Victor Feldman、ヴィブラフォン奏者であり、ピアニスト。でも実はドラムが一番プレイ歴が長いというマルチプレイヤー。イギリス出身だが後にアメリカに活動拠点を移す。その後もジャズ界でリーダー作を出す一方Steely Danの名盤

に参加するなど、ジャンルを超えた活躍をした。彼は1987年に53歳の若さでこの世を去るが、本作はその3年前の作品。

日本ではL.A.スーパーリズムとして発売
日本ではL.A.スーパーリズムとして発売

この“Call of the Wild”は“Victor Feldman's Generation Band”名義の作品だが、ジャンルはFusion。それも結構日本式Fusionに近く、イメージとしては長谷部徹+田中豊雪のリズム隊時代のTHE SQUAREやMALTAを彷彿とさせる、比較的わかりやすいメロディーとリズムに、キラリと光るソロを乗っけた感じ。またそのハッピーさの底辺にはTHE GADD GANG

でもみられる様なアメリカンR&Bの味がある(彼はイギリス人だがカラーが明るくアメリカっぽいw)。

このFusionアルバムを出すに当たって、なぜに"Generation" Bandと称したか。まず彼の息子であるTrevor Feldmanがドラムスを叩いている。さらに10~15歳も年下のRobben FordTom Scottらとの共演もあり、当時50歳のVictor Feldmanが彼ら30歳代を中心とする若手wミュージシャンと世代を超えて共演する、という意味なんだろう。

バンド、言っても曲で多少の出入りはあり、参加したのはドラムスは通しで息子のTrevorだが、ベースにMax Bennett、Nathan East、Roscoe Beck、ギターはRobben FordとTim Weston、サックスはTom Scottが何曲かに、シンセサイザーとしてはLarry Williamsが数曲に参加といった感じ。....スルドイ人は気がついたかも。Max BennettとRobben Ford、Tom Scottの3人は“Tom Cat”時代の“Tom Scott & The L.A.EXPRESS”のメンツ。そのためなのか、自分の所持するビクター盤は“Victor Feldman's Generation Band”としてでなく“L.A. SUPER RHYTHMS”と L.A.EXPRESS

を彷彿とさせる名前でうりだされてたw(アルバム名も“Call of the Wild”でなく、シングルカットされたキャッチーな「Chasin' Sanborn」に変更)

アルバムの最初は列車の効果音から始まる愉しいナンバー、「Inside Track」はハッピーなTom ScottのR&Bテイストあふれるサックスに、ギターのタッチがちょっちブルージーなRobben Fordのソロが絡み、シンコペーションを多用したリズムにVictorのローズが軽やかだ。エンディングのNathan Eastのはじけぶりもイイ!

 

(本来の)タイトルチューン「Call Of The Wild」はリリカルなミドルテンポなチューン。唱うTom Scottのテナーに絡むコンガはVictorで、多才なところをみせる。Tomは他にあまり演奏を残していないLyriconのソロも取る。2回もあるRobbenのブルージィなギターソロではのちにTHE BLUE LINE

で組むことになるRoscoe Beckの淡々としたリズムリードが印象的だ。

 

そして意味深なwタイトルをもつ「Chasin' Sanborn」。Tomが先達David Sanbornのようにファンキーでスウィンギーな演奏をする。ここでのRobenは音がイイ!ピッキングの強調された音作りで、コンプレッサーの効いたカッティングとオーバードライヴが効いた歌うソロがいい感じだ。

Victorはソロをバリバリ取るという感じではなく、後輩達の演奏をバックで支える場面が多い(ひとりバンドの「Tiny Town」や「Sail Away」のようにCOOLなローズソロが聴ける曲もあるけど)。世代が下のミュージシャンの若い音で刺激を受けて、自分もまた次のステージに行く。

斃れるなら前のめりに、そんな人生だったのだろうか。今でも変わらず彼の演奏は愉しい。

【収録曲】
1. Inside Track
2. Call Of The Wild
3. Heart To Heart
4. Chasin' Sanborn
5. Tiny Town
6. Sail Away
7. Western Horizon

Victor Feldman Website
残念ながらココ↑ではGeneration Band時代の曲は聴けません(VIDEO MUSIC LESSONのページでドラム、生ピ、ローズとヴィブラフォンをマルチに演奏する彼の生前の姿が見られますがw)

 

「Chasin' Sanborn」

更新: 2020/06/07
必聴度

とっつきやすさと、各プレイヤーの個性の発露がちょうど良い「あんばい」

日本の「フュージョン」のイメージで国外のフュージョンを聴くと、かなり軸がずれていて「アレ?」と思うことも多いが、本作はそんなことはない。1980~1990年代の「フュージョン」を日本で聴いていたひとはハマるハズ!

  • 購入金額

    3,500円

  • 購入日

    1988年頃

  • 購入場所

22人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • kazさん

    2011/09/12

    カッコイイです!!

    >アメリカンR&Bの味がある
    ほんとだ、アメリカンぽい。(笑)
    メロウな感じも好きですが、底抜けに愉しそうな演奏も好みですね。(^^)
  • cybercatさん

    2011/09/12

    kazさん、いつもありがとう!
    >カッコイイです!!
    結構佳曲・好演揃っているんですが、なぜか歴史に埋没しちゃってます。
    victorが亡くなったせいか、彼の作風?の中では異色であるからか、はたまた版権の問題か....
    でも時々まだ見かけますけどね!

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