未だかつてない音楽再生。聴いたことが無い鮮度感。うねりのように押し寄せる音の洪水。初めてエミネントシリーズを聴いたオーディオファイル(愛好家)の多くは、驚嘆の声を上げる。
これが今まで聴いていたディスクなのかと。音程がしっかりと感じられる低域や、伸びるのに刺々しくならない高域。厚みも艶も十分な中域が分離良く、怒濤のように押し寄せてくる様がそう言わしめるのだろうか。
それは今まで数多くのカートリッジメーカーが挑戦し続けている大命題でもある。その答えに近いような再生がなされているのは一体何故なのか。それを開発者である松平氏本人に訊ねてみた。
【zigsowラウンジ編集部(以下編集部)】本日はお忙しい中、お時間を頂戴致しましてありがとうございます。今回は 2003 年に突如、エミネントが登場した経緯も教えて頂きたいのですが・・それをお伺いする前に、少し違った角度から質問をさせて頂きたいと思います。とても抽象的になるのですが、松平さんにとって音楽とは、どのようなものですか
【松平氏】 (笑)音楽ですか・・音楽とは、などとあまり考えたことは無くて、自分が好きだから。もう、ただそれだけですね。良い音で聴きたいというのは、この業界に入ってから始めたことで、それまではもう、心地良いから聴く、音楽が好きだから聴く、という気持ちでしか向かい合ってきませんでしたね。
【編集部】なるほど。そういたしますと、やはり心地良いのは CD ではなくて、アナログの方だったということになるのでしょうか
【松平氏】音楽とのふれあいはアナログが殆どでしたね。しかしアナログを聴くことが多かったのは、単純に仕事がカートリッジを作るということだったから、というのが大きいですね。 CD が出てきても、それはひとつの参考でしかありませんでした。当時はもう生活と仕事が一体化していましたから、良い音で聴くというのは、良いカートリッジを作るということそのものだったんです。また、もうひとつは、当時デジタルマスタリングされた音に、がっかりしたという経験があるんですね。当分デジタルは駄目だという部分もありまして、カートリッジに一層注力するようになりました。あとは、 LP が好きだったんでしょうね。
【編集部】 つまりクオリティ的にも、アナログの方が良いとお考えだったのでしょうか
【松平氏】 いえ。そんなことは思ってもいませんでした。デジタルはいずれ良くなるだろう、しかしそれまではアナログだと、そう思っていただけです。確かに良くなりましたよ、デジタルは。でも、今聴いても、上手く鳴った時のアナログって、やっぱり良いなと思っています。