Lilithはリサンプリングからイコライジングまで豊富な機能を備えた音楽再生ソフトだ。このソフトのファイル変換機能とFUSEを組み合わせてアップサンプリングしてみよう。まずはLilithをダウンロードしてインストールする。インストールが完了したらLilithを起動しよう。そしてLilithのウィンドウ上で右クリックして【ファイルの変換】を選択しよう。新しいウィンドウが開かれるので、そこにある【参照】ボタンをクリックしてアップサンプリングした音声データの保存先を指定する。次に【設定】をクリックしよう。【出力設定】というウィンドウが開かれるので、一番上のExternal Processを選択して【プロパティ】ボタンをクリックする。【外部コマンドライン設定】というウィンドウが開くので、【参照】をクリックしてFUSEv022.exeを選ぼう。
次はコマンドラインオプション欄にタップやサンプリングレートを設定してみよう。…とはいったものの何を入力すればいいのか分からないので、まずはコマンド例を頼りに【"-t" "26" "-x" "2" "%FilePath%%FileName%%FileExt%"】と入力しOKを選択。(コマンドについては右画像を参照)ここまでに設定した内容は全て保存されているので次回からは簡単だ。これで【ファイルの変換】のウィンドウにアップサンプリングしたいファイルやフォルダをドラッグ&ドロップして【開始】をクリックするとアップサンプリングが始まる。
なおアップサンプリングの実行にはかなりの時間を要する。たとえば5分の曲を上記の設定でアップサンプリングするには私の環境でおよそ15分掛かった。また、アップサンプリング中はPCにかなりの負荷が掛かるので、他の操作は控えたほうがいいだろう。
24bit/88.2kHzにアップサンプリングしたノラ・ジョーンズの「come away with me」を聴いてみた。一聴して普段と雰囲気が違う。アップサンプリングの狙い通りにノイズが低減されたためか、空間の透明度が格段に増した。そして、ノラの歌声が今まで聴いたことがないほどに瑞々しい。以前使っていたDDコンバータとは比べものにならないほど効果が実感できる。次はショパンのピアノ協奏曲1番を24bit/176.4kHzにアップサンプリングした。いつもより導入部の激しさとピアノ独奏のコントラストが高く、演奏の緊張感が伝わってくる。それから、背景が静かになったためか弱音が聴き取りやすくなった。コントラストが高く感じるのは空間の透明度が上がったためであろう。同じ曲を16bit/44.1kHzで聴いてみると何かモヤモヤとしてすっきりしない。再びボーカル曲で、ホイットニー・ヒューストンの「I Will Always Love You」を24bit/176.4kHzにした。声が滑らかで響きが美しい。この曲は音量を上げすぎると厳しい鳴り方をするため今まで遠慮して聴いていた。ところがアップサンプリングを施してからは音量を上げても聴き疲れしなくなった。こういうタフな高音はレコードでなければ再生できないと思い込んでいただけに嬉しい誤算だ。これがアップサンプリングの実力か。KLIMAX DSのディスプレイに表示された24bit/176.4kHzの文字が誇らしげに見える。
今回のアップサンプリングはPCデータを変換・再生するDSだから活かすことができた。CD音源を越えるハイビット・ハイサンプリングソースを手軽に手に入れられる時代がすぐそこまで来ている今、様々なデジタル音源に柔軟に対応できるDSの再生方式は非常に有効であり、これからのデジタル再生に必要不可欠といえるだろう。