写真家ハービー・山口のフォトコラム 第一話

気持ち良く撮らせてもらうには

CLUB OF HEROES LONDON 1981
1981 LONDON

 何年か前、イギリス人写真家からこんなことを言われたのを思い出した。彼は長年、ロンドンの最先端のクラブにカメラを持ち込み、そこに集まるお客さんの最新ファッションや顔に施された奇抜なメイクをドキュメントしている。「こういう所で撮影するには、毎週クラブに通って常連客と顔見知りになるか、さもなくばお金を払って撮らせてもらうかのどちらかだ。」

 人物を撮っている写真家が撮りたい被写体と仲良くなるために、被写体が集まるところにマメに出かけて行って、話しかけたりしながら親交を深めていくのは日頃の努力として必要なことだ。気を許してくれた上で、やっと気持ち良く撮らせてもらった、という状況は日常ざらにある。

CAFE HUIT 3 東京 2008
2008 TOKYO

 うまいことに僕の住んでいるマンションの一階に、洒落たレストランやバーが数年前にオープンした。そんなお店で働いている若者たちや集まってくるお客さんが、絶好の被写体だということをすぐに感じた。ウェイトレスやウェイター達も実に清々しく溌剌としていて絵になっている。僕は足しげくこれらのお店に通うこととなった。いつか写真を自由に撮らせてもらうためだ。お陰で今では皆と仲良くなったし、働いている最中でも気軽に撮らせてもらえるようになった。