レビューメディア「ジグソー」

イヤフォン基準で作ったらこうなるのか?

先日HARD OFF通販を眺めていると、珍しくfinal製のヘッドフォン、SONOROUS VIの中古が出ていました。イヤーパッド劣化ということで相場より少し安いくらいで販売されていたのですが、その時点では全く魅力は感じられませんでした。

 

しかし写真を見ていて少し違和感がありました。final製のヘッドフォンの標準ケーブルは黒い皮膜のケーブルだったはずなのですが、このSONOROUS VIに装着されていたのはクリア皮膜に銀コートというものだったのです。

 

そこで写真を拡大してみると、どうやらfinal純正のアップグレードケーブル、C093 シルバーコートケーブルの3.5mm仕様のように見えるのです。このケーブルはfinal直販価格55,800円、中古でも3万円前後で取引されていて、final製ヘッドフォンのポテンシャルを発揮させるのには欠かせないとも評されます。ヘッドフォン単体の価格としてはごく普通でも、ケーブルを買ったらヘッドフォンがおまけに付いてきた程度の感覚であれば悪くはないと思い、結局購入してしまいました。

 

 

 

 

 

 

 

イヤーパッドは想像以上にボロボロで、交換しないと常用には耐えないレベルでした。これはこの状態を確認した時点で新品を手配しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

ケーブルはC093のみで、標準添付品はありませんでした。まああっても使わないとは思いますが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

通販の商品ページでは写真を拡大してもあまりポイントとなる部分が写っておらず、少し心配だったのですが、そっくりさんではなくfinal純正のC093でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステンレス製ハウジングといい銘板といい、いかにもfinalらしくまとめられています。個人的に特に格好良いとは思いませんが、唯一無二という個性は醸し出していると思います。

 

更新: 2024/04/11
総評

イヤフォンを発展させたような音作り

SONOROUS VIは、ヘッドフォンとしては珍しい、50mm径ダイナミックドライバーと専用BAドライバーを組み合わせたハイブリッド型となります。

 

BAドライバーを採用することで独特の広がりを持つ音場を構築するのですが、BAドライバーは指向性が強いため装着位置によって聞こえる音が随分変わってしまうのは弱点といえるかも知れません。

 

 

試聴はまずCHORD Hugoに接続して行いましたが、ここでちょっと問題が。C093の3.5mmプラグは根元が太すぎてHugoの奥まった3.5mm端子にはきちんと入らないのです。Hugo側のデザインに難があるのは確かですが、C093もここまで太くしなくてもというほど太いんですよね…。

 

仕方なく3.5mm→6.3mm変換プラグ(qdc WHITE TIGER添付品)を用意して6.3mm標準PHONE端子で試聴しました。

 

まず音場に関してはかなり特徴的です。ULTRASONEのS-LOGICと少し近いというべきか、頭内というより脳内の前方に音場が構築されるイメージといえるでしょうか。私が所有するPRO900のS-LOGICほど不自然では無く、こういうものなんだと受け入れられる程度ではあります。

 

エネルギーバランスとしては中高域寄りで、レンジ自体は広いのですが中低域が薄味で重厚感は出ません。高域も恐らくBAドライバーが受け持っていると思われる辺りで少し音色に癖があり、綺麗に伸びているという印象は受けません。よく聴けばきちんと出てはいるのですが…。

 

 

このヘッドフォンの特徴といえるのは前述の独特の音場により、ヴォーカルやメインの楽器が自分の顔の目の辺りに定位するということです。通常のヘッドフォンであれば文字通り頭内定位ですので。それよりは少し前に寄ってくるということになります。そのためバックの演奏からヴォーカルが浮かび上がってくるような印象を受けるのです。

 

ただ、当然ながらこれはスピーカーで聴く時の地位とは全く違う、ヘッドフォン・イヤフォンの世界でのみ通用する前方定位です。スピーカーや生音のリスニング経験が乏しければ違和感を持たないのかも知れませんが、私としてはどうしても違和感の方が先に立ってしまいます。

 

また純粋に二次元的に出ている音を評価しても、残響音の部分が妙に強調される印象があります。これを細かい音まできちんと出ていると評するか、単なる演出過多と評価するかはその人次第でしょう。私としてはちょっと演出過多の方の印象を受けます。

 

オーバーヘッド型のヘッドフォンにBAドライバーを使うという思い切った手法で得られるものは確かにありますが、少し生音からは離れる音色といい、デメリットも多く感じざるを得ないように思います。

 

 

このヘッドフォンの最大の美点は僅か8Ωという抵抗値の低さで、DAPのアンプでも十分に鳴らせます。今iBasso DX300+AMP13で聴いていますが、AMP13のローゲイン側の出力でも十分に音量は取れていますし、ドライバーの動きもHugoとそれほど大きくは変わりませんので、単体型DAPであればほとんどの製品でも問題なく駆動できそうです。HugoでもDX300+AMP13でも音質傾向が大きくは変わらない辺り、ヘッドフォンの音が支配的なのでしょう。強いて言えばDX300+AMP13の方が当たりがややソフトに感じられますが、これはAMP13が真空管(NuTube)アンプであることによるものでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じfinalでもD8000は重厚感が強かったのですが、SONOROUSシリーズでは中位のVIが異様にスッキリした音であることはちょっと意外でした。質を置いておけばかなり細かい音を拾うヘッドフォンですので、録音時のモニターには案外良いかも知れません。ただ正直決してバランスの良い音ではありません。

 

 

なお、ケーブルのC093は右側だけ一段浮かせばMichell&Johnson MJ2に流用可能でした。

 

 

 

 

 

 

 

MJ2で使う限りこのケーブルの質は結構高いのではないかと思いますが、5万円オーバーが妥当かといわれると何ともいえません。

更新: 2024/04/14

イヤーパッド交換で印象が変わったので採点も修正

先ほどイヤーパッド側のレビューに書いたのですが、劣化していたイヤーパッドの交換を行ったことで音質に大きな変化が生じたため、このレビュー内での採点を変更しました。

 

現状のSONOROUS VIは価格が妥当とまでは思いませんが、他の5万円クラスの製品ときちんと比較できるようになったのは大きな進歩でしょう。

  • 購入金額

    33,000円

  • 購入日

    2024年04月10日

  • 購入場所

    HARD OFF

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