レビューメディア「ジグソー」

めったに見られない(聴かれない?)Robben Fordのフュージョンギタープレイに注目

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。長く活動するアーティストは、世の流行に従って、もしくは、機材の発展などで、作風が変遷していくことがありますが、グループにおいては、メンバー変更やそれに伴う構成の変更がカラーを変えたりもします。メンバーの変更によって作風が大きく変わったグループの、変わりはじめの作品をご紹介します。

 

The Yellowjackets(Theのない、Yellowjackets表記の場合もあり⇒最近の公式HPなどはそう/このアルバムには、ジャケットにThe付きで表記されているため、この項はこちらで統一)。フュージョン~スムーズジャズ系の老舗グループで、キーマンはキーボード担当で、40年超の歴史の中、唯一通しで在籍するRussell Ferrante。ただこのグループ結成のきっかけは、1st時点は正メンバーで、2ndの本作“Mirage À Trois(邦題:マリブの旋風(かぜ) )”にもサポートメンバーとして参加するギタリストRobben Ford

 

もともと、The Yellowjacketsが、Robbenのソロアルバム“The Inside Story”のレコーディングメンバーで組まれたバンドなので、本来Robbenが核だった(少なくとも核の一つだった)。ただRobbenはその後、よりブルースの世界に浸かる方向を目指すようになり、フュージョン・クロスオーバーフィールドにいたThe Yellowjacketsからは早期離脱した。

 

その後、キーボード「以外」のメロディ楽器としては、途中からサキソフォニストが加わり、特に2代目サキソフォニストのBob Mintzerは、現時点(2022年)では2番目にメンバー歴が永い。つまり、30年以上Russellとともにバンドを支えたオリジナルベーシスト、Jimmy Haslipの退団によって、今ではRussell+BobがThe Yellowjacketsのカラーを象徴しているメンバーともいえる。

 

なお、ドラマーは結構変遷が多く、2022年現在まで5人のドラマーが関わっているが、この作品では、オリジナルドラマー、故Ricky Lawson

 

Robbenは半分にあたる4曲で弾いており、彼が参加した楽曲は1stと同じオリジナルメンバー構成。他の曲のギターは名手Mike Millerが弾いている。また、後のサックス路線のイントロデュースか、1曲サックス&リリコンでRichard Elliotが加わっている(1stにも管の参加はあったが、どちらかと言えば「ブラスセクション」=Jerry Hey部隊)。

 

Robbenが関わっている曲の中で、最近のRobbenしか識らないと意外に感じるかも知れないのが「Top Secret」。テクニカル系フュージョンバンドの曲らしく、トリッキーなリズムの「引っかけ」で入るが、そのきっかけはRobbenのキレがよく、かっちりとしたカッティング。Robbenは実はカッティングにも定評があるのだが、ブルース畑を主戦場としてからは、自らのリーダー系の作品でこれほどキレッキレのカッティングは聴かれないので、最近しか識らない人にとっては「らしくない」と感じるかも。Russellの流麗でジャジィなソロが印象的。

 

Goin' Home」もRobbenのギターだが、こちらは彼らしい。実にブルージィな音使いで、和音も切れの良いカッティングプレイではなく、フィンガーピッキングでパーカッシヴ。途中のギターソロは泣きのフレーズで、チョイえげつない感じの関西系?チョーキングが味がある。この曲の主旋律はウインドシンセのような音色だが、Richardの参加クレジットはないので、Russellのキーボード。アウトロのRobbenと絡んだプレイが気持ちよい。

 

Man In The Moon」は、Richardがリリコンとサックスで参加した作品。リリコン+キーボードによるユニゾンと、明るめのシャッフル調のリズムは、THE SQUARE時代のスクエアの雰囲気もある。この曲のギターはMikeで、Robbenと違ってブルース臭はない。一方、Gino Vannelli

との活動歴が永いMikeは、テクニック的にはRobbenに劣らず、小技が効いた速弾きのソロを聴かせる。長いRussellのピアノソロもハッピーだ。

 

この作品の後、The Yellowjacketsにはメンバー内にギタリストが不在になり、3rdアルバムからサキソフォニストが正式メンバーに加わって作風がグッとジャズ寄りになる。...なので、バンド...というかRussellの指向が、Robbenのやりたかった方向性とは違ったんだろうな、と。このアルバム、良く聴くと、ギタープレイではっきりとRobbenMikeの差がわかるので、まさに「過渡期」という感じの作品。

 

ただ、後のスムーズジャズの系統では「ない」The Yellowjacketsが楽しめる作品です。

ジャケ裏には日本語で「友達にイエロー・ジャケットをパスト・オン!!」とあるが“passed on”かな?
ジャケ裏に日本語で「友達にイエロー・ジャケットをパスト・オン!!」とあるが“Pass It On”かな?

 

【収録曲】

1. Claire's Song(クレアの歌)
2. Top Secret
3. I Got Rhythm
4. Pass It On
5. Goin' Home
6. Man In The Moon
7. Elamar
8. Nimbus

 

「Top Secret」

 

 

更新: 2022/10/27
必聴度

80年代フュージョンの王道

結構曲によってテイストが違うのが、まさに「フュージョン」。

  • 購入金額

    3,200円

  • 購入日

    2022年頃

  • 購入場所

11人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • jive9821さん

    2022/10/26

    邦題は「Chicago X」の「カリブの旋風(かぜ)」を意識している
    感じでしょうか。

    サウンドは特別に近いとまでは思えませんが、日本のレコード会社が
    勝手に遊んでしまったのか…。
  • cybercatさん

    2022/10/26

    >日本のレコード会社が
    >勝手に遊んでしまったのか…。
    そうでしょうね。

    原題“Mirage À Trois(フランス語)”は、“トリオの幻影(ミラージュ)”というような意味ですし、収録曲にも「マリブ」とか「旋風」に関係する題名のものはありませんから....

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