レビューメディア「ジグソー」

AT-ART7が持ち味を発揮し始める

元々audio-technica AT-ML180と組み合わせるシェルリード線を探すために行った、先日のKS-Remasta製シェルリード線比較試聴ですが、結論として購入したのは試聴していないはずのこの製品となりました。

 

試聴を始めた後のタイミングで新たにカートリッジ、audio-technica AT-ART7を購入したため、これに組み合わせるためのヘッドシェルとリード線が必要となりました。ヘッドシェルはADC MC1.5の2号機に使っていたAT-LH15/OCCをこちらに移し、MC1.5にはストック品のAT-LH18/OCCを組み合わせたので良いのですが、リード線の方はこれはというものが手持ちのストックにありません。暫定的にMC1.5のKS-LW-1500EVO.Iを組み合わせていましたが、メインのaudio-technica AT-OC9/IIIよりも高価なカートリッジに組み合わせるのであればもう少し上のクラスにしたいところでした。

 

そのため、実はAT-ML180を使って試聴する間に、一部製品をAT-ART7でも試していました。

 

ある意味当然ではあるのですが、最も魅力的だったのは聴いた中で最も高価なヴィンテージワイヤー採用品である、KS-VWS-Tempest.I/SR-NVKでした。AT-ART7は重厚かつ濃厚である反面、やや見通しが暗めで音場が広がりにくい傾向があるのですが、KS-VWS-Tempest.I/SR-NVKでは濃厚さを保ちながら音場が広がり力感も出てくるという素晴らしい相性でした。とはいえ、さすがに8万円は相当な予算オーバーであり、断念せざるを得ません。

 

バランスという意味では、銀線を採用したKS-Stage102EVO.IIも良かったのですが、これは逆にAT-ART7らしさがやや後退する印象がありました。普通の音には近づくのですが、その方向であればAT-OC9/IIIで十分という考えもあります。

 

 

そこで今回実際に購入することにしたのは、KS-Stage101EVO.IIよりもHi-Fi方向に近づきながら、割合ニュートラル感がある(これまでの試聴からそういう方向性を予想しています)KS-Stage301EVO.IIとなりました。勿論、今までの文句ない実績があるKS-Stage401EVO.II/VKという候補もあったのですが、ある程度は違いを楽しむ余地を残したいという考えもあったわけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

組み合わせるヘッドシェルは、前述の通りaudio-technica AT-LH15/OCCです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、今回はこの状態からカートリッジを取り付けて、リード線を引き回して装着しています。AT-ART7はターミナルピンの間隔が広く、意外と装着がしやすいのはメリットといえるでしょう。

 

更新: 2021/04/22
音質

いかにもアナログ的な濃厚さを表現

今回は装着してから丸一日以上おいて、さらにしばらくレコードを普通に聴いてから試聴に入っています。環境は当然いつも通りのTechnics SL-1200G+Phasemation EA-200との組み合わせとなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、今回からターンテーブルシートはACOUSTIC REVIVE RTS-30となりますので、今までの試聴結果とは少々傾向が変わる可能性があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レコードは「Gaucho / Steely Dan」「CWF 2 / Champlin Williams Friestedt」「Synchronicity / The Police」「Hell Freezes Over / Eagles」「Explosive / David Garrett」「Bohemian Rhapsody (12") / Queen」辺りをいろいろと聴いています。

 

 

どの曲を聴いても、AT-OC9/IIIとは正反対といえるほどに傾向が異なることがわかります。表現が締まっていてデジタルソース的なバランスのAT-OC9/IIIに対して、AT-ART7の音は低域方向の厚みがあり、濃厚な音場とややソフトタッチなアタックという、いかにも昔ながらの音です。

 

そして、そのAT-ART7と組み合わせたKS-Stage301EVO.IIは、その持ち味を実に素直に引き出していることがわかります。KS-Stage401EVO.II/VKと組み合わせているAT-OC9/IIIと比べても、低域方向の濃厚さやアコースティック系の音色の生々しさは明らかに上回ります。

 

その反面、スピード感のある音などはAT-OC9/III+KS-Stage401EVO.II/VKのキレの良さに及びませんが、これはAT-ART7自体がそのような音の持ち主なので当然です。KS-Stage301EVO.IIはAT-ART7の本来の性格をそのまま表現してくれていると言って良いでしょう。

 

KS-Stage102EVO.IIとの組み合わせでは低域方向の量感が後退してフラット傾向に近づいてはいたのですが、その分濃厚さも減ってしまいAT-ART7の音が良くいえば普通、悪く言えば平凡な音になっていました。

 

KS-VWS-Tempest.I/SR-NVKとの組み合わせでは音場が一気に広がり、アタックの強さがもう少し出ていて、AT-ART7の濃厚さを残しつつもより力強さや躍動感も十分あるというとても魅力的な音でした。予算があれば素直にこれにしていたと思うほど見事な好相性でした。ただ、AT-ART7本来の音以上になっていたという印象があります。

 

 

その点、KS-Stage301EVO.IIでは、良くも悪くもAT-ART7らしい音が出ているという点が最大の特徴といえます。KS-Stage102EVO.IIよりも圧倒的に重厚で、音場全体がやや暗めに密度濃く描写されています。ヴォーカルやアコースティックギターで思わず視線を向けてしまうよう生々しさを表現しますが、音場の左右がやや狭めです。恐らくAT-OC9/IIIのようなHi-Fi基調のカートリッジと組み合わせれば、その特徴も素直に引き出してくれるでしょう。

 

 

磨きのレベルが異なるKS-Stage101EVO.IIとの比較では、KS-Stage301EVO.IIの方が緩さや曖昧さが小さくなっているという印象でしょうか。ヴォーカルの口が大きすぎるという感覚も薄れます。低域方向はKS-Stage301EVO.IIの方がより伸びていると思います。高域方向は伸びはさほど変わらず、細やかさは増しているという感覚です。

 

 

KS-Stage301EVO.IIは3万円と高価ではありますが、下位の製品と比べれば順当に質的な向上が見られます。コストパフォーマンスという意味では半額のKS-Stage101EVO.IIに分がありますが、もう少し上を目指すのであればこの辺りかな、と思います。

  • 購入金額

    33,000円

  • 購入日

    2021年04月19日

  • 購入場所

    KS-Remasta

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