レビューメディア「ジグソー」

濃厚かつ芳醇。現代的な素材とは全く違った表現

前回掲載したKS-VWS-REX.II/Nと同じくヴィンテージ・ワイヤーを採用したシェルリード線ですが、今回は一気に2倍の価格となる製品です。

 

 

 

 

 

 

採用されている線材は、1920~40年代ビンテージワイヤー(直径約0.2㎜)極細単線で、絶縁体として蝋含浸の布を採用しているというこだわりの逸品です。ハンダも線材の時代に合わせたKS-Remasta選定1940~50年代ビンテージハンダNで、さらに音質面での効果が大きい天然松ヤニVKを含有したものとなっています。

 

私が現在AT-OC9/IIIに組み合わせているシェルリード線であるKS-Stage401EVO.II/VKも、実はEVO.IIハンダに同じく天然松ヤニVKを含有したものであり、単なるEVO.IIハンダよりもより音質面でのメリットがあるそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じくヴィンテージ・ワイヤーを採用するKS-VWS-Frontier.I/NやKS-VWS-REX.II/Nよりも、さらに細い線材であり、取り扱いには神経を使いますが、意外と硬さのある単線ですので丁寧に扱えば切れたりはしません。

 

 

 

 

 

 

 

この辺りまで来るとヴィンテージ・ワイヤーの取り扱いにも少し慣れてきて、見栄えを整える程度には余裕が出ています。

 

 

このKS-VWS-Tempest.I/NVKは、実は組み合わせる対象のカートリッジとしては30万円クラスを想定しているとのことで、私の手持ちにはそんな高級品は全く無く、この製品の実力を引き出せるのかはかなり疑問ではあるのですが、取り敢えず音を聴かなければ始まりませんので、試聴に移ることにしましょう。

更新: 2021/04/14
音質

圧巻の音場

私の場合は30万円クラスどころか10万円オーバーのカートリッジも殆ど持っていない訳ですが、仕方ないのでこれまでと同様にZYX R50 Bloomを使って試聴することにします。

 

 

 

 

 

当然ながらTechnics SL-1200G+Phasemation EA-200の環境での試聴となります。

 

 

 

 

 

 

 

比較用のシェルリード線は、8N-OFC単線採用のKS-Stage101EVO.IIとなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試聴に使う楽曲はKS-VWS-Frontier.I/NやKS-VWS-REX.II/Nの時と同じく、

 

 

・「Englishman In New York / Sting」(LP「The Best of 25 Years」収録)

・「Prelude No.2 in C Minor / Jacques Loussier」(LP「The Newest Play Bach Vol.1」収録)

・「Runaway Dancer / Champlin Williams Friestedt」(LP「CWF 2」収録)

「I Need To Be In Love / Carpenters」(LP「Stereo Laboratory Carpenters」収録)

「秋止符 / アリス」(LP「アリス 76/45」収録)

 

 

となります。

 

 

「Englishman In New York」では、今までのヴィンテージ・ワイヤー製品とは一聴して全くレベルが違うことが理解できます。音場はKS-VWS-REX.II/NどころかKS-Stage101EVO.IIよりも圧倒的に広く、その広い空間を密度の濃い音が満たしているという印象になります。スティングのヴォーカルの希薄さも全く無く、ブランフォード・マルサリスのソプラノ・サックスも伸びやかに鳴り響きます。

 

「Prelude No.2 in C Minor」では、これまでのヴィンテージ・ワイヤーではピアノの音色がソリッド気味だったのですが、KS-VWS-Tempest.I/NVKでは響きが豊かに鳴ることからその傾向が控えめになり、左手方向の充実度が増すことから、芳醇な音色となって表現されるようになります。ベースのタッチの強さはヴィンテージ・ワイヤーらしいところですが、響きが豊かな分だけ前にどんどん出てくるような印象は薄れ、適度な距離感で主張します。

 

強いて言えば「Runaway Dancer」については、勢いの良さという意味ではKS-VWS-REX.II/Nの方が上だったかも知れません。もっとも、ビル・チャンプリンの声はKS-VWS-Tempest.I/NVKの方が圧倒的に深みや味わいが出てきますし、音場の広さは一回りどころでは無く広がります。

 

「I Need To Be In Love」は、KS-Stage101EVO.IIやKS-VWS-REX.II/Nと比べて、カレン・カーペンターの声の生々しさが大幅に増しています。声を張ったときにはKS-VWS-REX.II/Nの音でも悪くないのですが、ソフトに歌っているときの声が明らかに肉声らしさを感じさせるようになりました。

 

そして「秋止符」が個人的には最も印象に残りました。KS-VWS-REX.II/NでもKS-Stage101EVO.IIやKS-VWS-Frontier.I/Nよりは谷村新司の声の質が良くなったと思っていたのですが、KS-VWS-Tempest.I/NVKの声はそれよりも圧倒的に生々しいのです。録音の限界でこの程度だろうと思っていたレベルを大きく超えてきて、今までの製品ではこの声を引き出し切れていなかったのだと言うことに気付かされたのです。

 

 

KS-VWS-Tempest.I/NVKは、丁度KS-Stage401EVO.II/VKと同価格なのですが、確かにそれに見合っただけの実力を見せてくれました。現代的な素材のようなオールラウンドな優等生とは少し違うのかも知れませんが、少なくとも今回聴いた範囲では極めて魅力的な世界を構築してくれていました。今まで使ったヴィンテージ・ワイヤーは勢いで押し切ってくるような音が多かったのですが、KS-VWS-Tempest.I/NVKはきちんと抑揚や奥行きが表現されていたのです。

 

率直にいって、AT-OC9/IIIとの組み合わせはKS-Stage401EVO.II/VKで合っていると思うのですが、今回組み合わせたR50 Bloomのような無色系のカートリッジでは、KS-VWS-Tempest.I/NVKのような味を持つシェルリード線の方がより楽しめるのではないかという気がしています。

  • 購入金額

    55,000円

  • 購入日

    2021年04月04日

  • 購入場所

    KS-Remasta

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