レビューメディア「ジグソー」

初期偏重主義はいかがなものか

結成50年を超えた大ベテランバンド、シカゴ。2014年には完全新作の「Chicago XXXVI "Now"」を発表し、地味ながら玄人筋では高く評価される会心作となっていて、健在ぶりを示していました。

 

 

 

 

 

しかしながら、この作品の制作を主導し、約30年に渡ってシカゴのフロントマンとして活躍し続けたジェイソン・シェフが家族の事情を理由に脱退した後、新作の制作は止まってしまっているように見えます。ジェイソン・シェフの後任としては、ジェフ・コフィというヴォーカリスト/ベーシストが加入しますが、未だに年間100本ほどのライブをこなすシカゴの正式メンバーの任は厳しかったのでしょう。スタジオアルバムには一切参加することなく、在籍期間約20ヶ月で脱退となってしまいます。

 

そのジェフ・コフィが参加した、貴重なライブ音源として発売されたのが、全曲をアルバム「Chicago」(邦題は「シカゴと23の誓い」)からの楽曲で構成したライブ盤「Chicago II Live On SoundStage」となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

CD単体盤とCD/DVDのセット盤が発売されましたが、私はDVDセットの方を購入しています。後日コレクターズ・エディションとしてLPがセットされた豪華版も発売される予定とのことですが、さすがにこれは買わないと思います…。

更新: 2018/07/04
総評

ジェフ・コフィ唯一の公式音源となる可能性も

先の述べた通り、アルバム及び新曲の制作に関わらなかったジェフ・コフィでしたが、この作品がリリースされたことで一応彼の在籍が記録として残されたことは喜ばしいといえます。また、ほぼ同時期に健康問題及び家族との時間を優先したいという理由から脱退した、ドラマーのトリス・インボーデンの最後の雄姿としても貴重な作品となりました。

 

 

 

右側がジェフ・コフィ
右側がジェフ・コフィ

 

 

 

ただ、作品の内容そのものについてはどちらかというと不満です。以下が収録内容となりますが、前述の通り全てアルバム「Chicago」収録曲です。

 

 

01. Movin' In
02. The Road
03. Poem For The People
04. In The Country
05. Wake Up Sunshine
06. Ballet For A Girl In Buchannon (Make Me Smile / So Much To Say, So Much To Give / Anxiety's Movement / West Virginia Fantasies / Colour My World / To Be Free / Now More Than Ever)
07. Fancy Colours
08. Memories Of Love
09. It Better End Soon (1st Movement / 2nd Movement / 4th Movement)
10. Where Do We Go From Here
11. 25 or 6 to 4

 

 

 

近年のシカゴのライブを観た方であれば直ぐに判るのですが、元々古い楽曲が多かったシカゴのライブで、ますます旧作が占める割合が増えてきているのです。具体的には、ジェイソン・シェフ加入前の「Chicago 17」以前の楽曲がほぼ全てであり、さらにその大半が1970年代のものとなっているのです。

 

以前から「どの曲を取り上げるかが毎回大きな悩み」とメンバーが打ち明けるほどヒット曲は多いバンドですが、セールス的には頂点を極めていた1980年代をバッサリと切り捨てるというのは、懐古主義のファン以外は喜ばない選曲となっているように思うのです。一応完全新作だった「Chicago XXX」や前述の「Chicago XXXVI "Now"」リリース後は、さすがにそこからの楽曲も取り上げはしたのですが、それも1公演1曲程度です。

 

今作も「シカゴは70年代前半が全て」という原理主義のファンは喜んでいるようなのですが、個人的には何故敢えて古い作品ばかり重視するのかという不満が先に立っています。

 

 

ジェフ・コフィ脱退後のシカゴはヴォーカリストとしてニール・ドネル、ベーシストとしてブレット・シモンズという2人の新メンバーを加えツアーを継続していますが、担当楽器無しの専任ヴォーカリストの加入は予想できませんでした。これはという人材に巡り会えなかったということなのでしょうけれど…。

 

80年代の快進撃を支えたビル・チャンプリン、ジェイソン・シェフという2人の看板を失ったことで、シカゴの創造面は間違いなく退化してしまったといえます。新メンバー達がグループに溶け込み、新たな起爆剤となってくれることを願ってやみませんが、オリジナルメンバーがいずれも70歳台に突入してしまった事を考えると、そろそろ厳しくなってきたかという気がしてしまいます。

更新: 2018/07/08

脱退が続く…

シカゴの公式サイトがここ数日リニューアル作業で閲覧できなかったのですが、先ほどリニューアルが完了したようです。

 

それによりバンドメンバーの部分が更新されたのですが、本当の意味での結成メンバーであった、ウォルト・パラゼイダーの名前が削除されました。

 

彼は心臓の手術を受けた後、飛行機を利用した移動が出来なくなり、ツアーの大半は代理メンバーとしてレイ・ハーマンがこなしていました。実態を反映したのか、近年はメンバー欄にはこの2人が併記され、どちらも正式なメンバーという形が続いていたのですが、今回のリニューアルでウォルトの名前が遂に削除されて名実ともにレイ・ハーマンへの交代が行われたということのようです。

 

結成以来入れ替わりが無かったホーン担当メンバーでしたが、恐らく引退という形なのでしょう。正直に言えば演奏面ではレイ・ハーマンも全く遜色のないプレイヤーであり、穴は特に感じないのですが、どうしてもバンドの終わりが見えてきてしまっているという寂しさは感じずにいられません。

  • 購入金額

    3,250円

  • 購入日

    2018年07月04日

  • 購入場所

    ジョーシンWeb

14人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • cybercatさん

    2018/07/05

    これだけ長い歴史のあるバンドだと「Chicagoというブランド」に期待するモノ、というのが世代によって違うでしょうが、そこを上手く合わせていかないと「熟年層(老年層?)の懐古バンド」になってしまうでしょうね。

    例えば、CHANELのドレスは設立当初と今では全くデザインは異なりますが、1本貫く「CHANELらしさ」があって今でも支持されていますが、100年前のものを単にリバイバルしただけでは懐古趣味の一部のファンしか付いてこないでしょうから。
  • jive9821さん

    2018/07/05

    > cybercat さん

    ジェイソン・シェフ脱退後のシカゴは、まさに「懐古バンド」の方向に進んでしまっているように見えます。

    シカゴは、極論すれば全曲他人の作品だけを演奏しても「シカゴの音」がきちんと存在するバンドなのですから、あまりレパートリーを固定化してしまうとただのマンネリでしか無くなってしまうんですよね。

    折角「Now」で見せていた創造性が引っ込んでしまったことが、とても残念に思えます。

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