レビューメディア「ジグソー」

細いが音は細くはない。取り回しがきわめてよく、かつ、きわめて扱いづらい。

イヤホン/IEMのリケーブルで求められるもの。それは今のケーブルに欠けている/足りないモノ。物理的に「長さが足りない」とか「ワイヤレス化したい」といった機能的理由もあるかもしれないが、王道的には欠けている/足りないモノの中心は「音質」で、もっと高音の伸びガーとか低音のパンチガーといった「少し足りないモノ」を補う目的でリケーブルする。それに続くのが快適性か。ケーブル被覆の材質によってはタッチノイズが大きかったり、ケーブルが硬くて取り回しがしづらかったり、IEM側端子の部分に入れられる(ことが多い)ワイヤーの自由度が低くて、耳たぶの後ろに沿いづらいということだったりする問題を改善するために、リケーブルする。

 

その時使われるケーブルも、素材もさまざま、コンセプトも様々で、取り回し性が悪くなってもひたすら純度を上げて音質を追求したモノや、左右の結合部にBluetooth送信機やリモコンを置いて利便性を追求したモノもある。

 

そんな中、(なんか映画のタイトルみたいだけれど)「存在を感じさせない軽さ」を持つケーブルがある。

 

Estron linum

 

Estronはデンマークのケーブルメーカー。補聴器やIEMの「内部配線」では大きなシェアを持つ。細く、高品質なケーブルを製作する技術を持つこのメーカー、銀コート銅線をアラミド繊維で補強することで、極細にもかかわらず、きわめて強い引っ張り強度を持つケーブルを造り上げた。それがlinum。

 

linumにはMusicBaXSuperBaXという種類があるが、基本構造は類似。

違いは

 Music:DAP側シングル線-分岐-IEM側シングル線

 BaX:DAP側2本撚り線-分岐-IEM側シングル線

 SuperBaX:DAP側4本撚り線-分岐-IEM側2本撚り線

という感じ。Musicが細さを追求した廉価版で、基本がBaX。BaXを「複線化」したのがSuperBaXのようで、これはインピーダンスがちょうど半分になるので、たぶんアタリ。4本撚り線(SuperBaX)というと一般的にはかなりゴツくなるが、このlinumの4本撚り線は一般的なケーブルのシングル線よりも細いかもしれないという超極細さ。

 

その中間グレード「BaX」の、カスタム2pin⇔2.5mmバランスタイプが「8000077」。

 

一般的にはその「目立たなさ」からステージに立つ場合にベストマッチのケーブルと言われるが、cybercatは人前で演奏しなくなって久しい。ただゴツめのケーブルは家で座って聴くのなら良いが、動きつつ聴いたり、外出時に聴く際にはタッチノイズや引っかかりやすさがイマイチなので、そういった用途で使ってもよいなと、購入店のシークレットセールで特価で出た時入手してみた。

さすが内部配線等のBtoB中心の企業、外装は超シンプル。
さすが内部配線等のBtoB中心の企業、外装は超シンプル。

 

価格(定価25k程度)の割にはチープな包装で、小さなチャック付きポリ袋に本体と説明書がぶち込まれているだけ。商品自体の外観としても、2pin側も2.5mm端子側も小さなプラ部品で高級感はまるでない。

チャチな端子類
チャチな端子類

 

ただその細さ!

 

2本撚りとなるDAP側でもCIEMの純正品の分岐後IEM側よりも細い。1本となるIEM側はもはや見えない??←...それは老g。色もクリア系の被覆で実に目立たない。耳かけ部分にワイヤーは入っていないが、細いので「耳たぶ裏に沿わせる」には何の苦労もなし。たださすがにこれほど細いと、簡単に絡まる。すぐに絡まる間違いなく絡まる。使用後は必ずケーブルタイを使用する必要がある。

 

両端の端子が同型式のNOBUNAGA LabsのMEDUSA

と比べると、MEDUSAって決して極太のケーブルではないのに、この差(↓)。やはり一部で「ステルスケーブル」と呼ばれているだけはある。

極細。まるで釣り糸のよう。
極細。まるで釣り糸のよう。

 

音自体は銀コート銅線らしく、上が少し伸び、低域が気持ち底上げされた感じだが、劇的なものではない。また、銀コート系であることと、その細い外観からくるイメージに反して音の基本はわりに太目。さすがそこは細さにステ全振りではない(あまり銀のニュアンスがないともいえるが)。あとなんにせよタッチノイズがほぼ皆無、というのが素晴らしい。

 

積極的な音加工(音質向上)という意味では、効果は限定的なケーブルだけれど、その「存在を感じさせない軽さ」は、取り回しの良さ、タッチノイズからの解放をもたらし、音楽や楽器のプレイに集中できる

 

また、つけていても、線が硬くて引っ張られるような挙動が全くないので、つながったDAPから音が再生されているということすら忘れさせる。これはCIEM用なので、そのCIEMの造り次第では耳への違和感も少なくなるので、聴く音楽の「人工度」が下がる。

 

ケーブルを感じさせない、主張しないケーブル。それがこのケーブルの一番の「特徴」。

 

【仕様】

線材:銀メッキ銅リッツ線(2本編み84素線)

IEM側端子:2Pin

DAP側端子:2.5mm TRRS バランス
重量:5~6g
線長:127cm
インピーダンス:1.50 Ω

 

linum HP

更新: 2018/01/24
音質

わずかにドンシャリ、特に高域が伸びる。

純正レベルのものと比べると、ややドンシャリ目。特にさすが銀コート?少し高域が伸びる。ただ、脚色性は低く、劇的なものではない。

更新: 2018/01/25
取り回し

きちんとすれば取り回し性は極上。雑に扱えばきわめて悪い。

全てはこの細さゆえ。洋服の襟の裏に仕込んだり、髪に編み込むようにつけたり、後ろで服の中にたくし込んでも違和感皆無の超極細線。きちんと固定さえすれば、ステージなどでは「目立たず」「ひっかける可能性も低く」「衣装を選ばない」。ただし、度を越して細いので、雑にまとめておくと間違いなく絡まる(最悪結ばれる)。またワイヤーレスで線自体も細く、耳かけ部で「保持」できないので、(CIEMではあまり問題にならないが)フィット感が悪いUIEMで「ケーブルの耳かけ部分の保持力と合わせて耳へ固定する」というような使い方には不向き。

  • 購入金額

    15,000円

  • 購入日

    2017年06月28日

  • 購入場所

    e☆イヤホン

21人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • harmankardonさん

    2018/01/25

    私もコレの中古をeイヤで見つけて悩んだのですが,あまりの細さに危険を感じて,別のケーブルにしました.
  • cybercatさん

    2018/01/26

    丈夫ですよ。「切れそう」な感じは全くしないですね。
    ただ、絡まりそう...いや、絡まります(^^ゞ
    ただ、ゴツいケーブルの扱いづらさが鬱陶しくなると、この軽快感が何物にも代えがたい。

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