所持する音楽データに対する私利私欲．．．イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。歌を歌うと言うことは本来「なにか」を伝えることです。恋心、葛藤、怒り、歓び．．．でもいわゆるテクニック的に「上手い」シンガーでもその裏の歌の「意味するところ」まで表現できる人は多くはありません。そんな中、歌のバックボーンの世界観まで表すことができる人の1stアルバムをご紹介します。

ゆめこ。歌い手。彼女の特徴はその七色の声音と感情の込め方。一部の曲は「歌って演じてみた」とサブタイがつけられ、歌のストーリーに合ったセリフの追加や声音の使い分けで独特の世界を創り出している。

特にじんのカゲプロシリーズは有名で、楽しい曲からゲスい曲まで幅広い声音と感情表現でその世界観を良くあらわしている。その中でも「【ゆめこ】アヤノの幸福理論【歌って演じてみた】」は、その表現力と声音の使い分け、付け加えられたセリフで、前半の小さな幸せが母の死によって壊れていく後半、そしてそれを救うため自らを犠牲にするエンディングと元曲の物語性をベースに、見事に独自の世界観を創り上げた涙腺崩壊ヴァージョン。

彼女のかつてのインタヴューによると「高校や大学で演技の勉強をした」とか「声優事務所に受かったこともあった」とのことなので、声に感情を込めるのは得意とするところなのだろうが、とにかく表情豊かなその声が素晴らしい。

そんな彼女が1stアルバムを出したというので購入して見た（すでに10年近い活動歴で1stとはむしろ意外だけれど）。これは今まで歌ってきた投稿曲ベストではなく、大部分が新しい曲。バンド系の曲からピアノ弾き語り中心のシンプルな曲までいろいろな曲が用意され、彼女の表現力が高い歌唱が堪能できる。

出だしはバンド系の「Rooter's Song」。元曲はDECO*27の初音ミクを使った元気をもらえる歌。♪ちゃんと泣き止んだ君なら／何度だって立ち上がれる／君は知ってるから／その目と目の栓の締め方を♪と、ススメ、ススメと尻を叩かれる？この曲を、ゆめこは弾けるようなポップな声で表現。ただロングトーンには力があって、ただの「ポップソング」に終わらせていない。

彼女の人気投稿曲？は「アヤノの幸福理論（piano ver.）」としてピアノ弾き語りでセリフなしのヴァージョン。「演じ歌い」ではないので「カゲプロ初心者にその世界観も含めて伝える」というような形ではないけれど、歌だけであってもその感情表現は素晴らしく、♪私が消えた／あの日の秘密組織は／ちゃんと笑って／暮らせているのかな／きっと、私は怒られちゃうなぁ／だけど、ちゃんと「お姉ちゃん」になれたかな♪の部分はやはり涙腺半壊。

ラストの「主人公」はゆめこの作詞作曲のオリジナル曲。ストリングス系の音色と生ギターのカッティングが心地よい爽やかなバンド曲。♪キミの世界の主人公は／キミしかいない そうだろ？／だから諦めない限り／道はつづいてくよ♪と歌う素敵な曲。CDの歌詞カードのラストには「主人公（キミ）へ」と題してゆめこからのメッセージが添えられる。それとあわせて彼女の感謝を歌った曲でもある。

CDは通販で購入したが、それには彼女からのカードが添えられていてちょっとほっこり。

カードがCDに貼り付けてある

爽やかなジャケットイラストは梅飴じゅん

歌の世界観に浸りたいとき、一人でじっくりと聴きたい、そんな作品です。

【収録曲】
1. Rooter's Song
2. サカナ暮らし
3. Life
4. 神のまにまに
5. アスノヨゾラ哨戒班（ゆめこ&CHIHORI@ちぃ）
6. 四季折の羽（ゆめこ&しゃけみー）
7. シロツメクサの花冠
8. 幸せのリンゴ（dear my dream ver.）
9. アヤノの幸福理論（piano ver.）
10. 主人公

twitter ゆめこ（@5hato3）
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「ゆめ【ゆめこ１stアルバムクロスフェード】」