レビューメディア「ジグソー」

「THE」 SQUAREというとこのあたり!

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。永く活動しているアーティストって年代によって曲の傾向が違ってくることがあります。時代の要請、流行り廃り、自分の好みの変化、テクニックの向上(あるいは劣化)...それがグループともなるとメンバーチェンジということが起こりうるのでさらに変化が大きく「○○はあの時代が好き」とか「××がいたころがイイ」とかということが起こりがちです。もうすぐデビュー後40年に届こうかという長寿グループを代表する懐かしい曲を集めたライヴ盤をご紹介します。

T(HE-)SQUARE。日本の長寿インストバンド。このバンドより前の時代のバンド(カリオカやサディスティックス、スペース・サーカスなど)はほとんどがすでに活動を停止しており、現在も続く同時代組も一時解散や活動停止時期を含むので、「デビュー時からほぼ途切れることなく継続的に活動しているフュージョングループ」としては最古参になる。

何と言っても彼らの一般的な知名度としては、世のF1ブームの時期にF1TV中継のイメージソングとなった「TRUTH」で、この時のメンツは比較的長期続いた(1985~1990年)ので露出具合と相まって印象深く「黄金期メンツ」と呼ばれるし、メンツの長期固定という点では2005年から2016年現在まで10年以上にわたって変化がない現メンバーが一番長い(ベーシストだけは正メンバーがいないためやや流動的だが)。

ただ、いわゆる日本のフュージョンブーム(1970年代末~1980年代中盤あたり)の頃の
T(HE-)SQUARE(当時はTHE SQUARE)はフュージョン界の中では最も明快かつポップな立ち位置で、黄金期のロック色が強い押し出しの良いものではなく、また現在の坂東クンの超絶テクニックが前面に出たマニア度が高いものでもなく、もっと軽めでオシャレな感じだった。その頃はメンバーチェンジが多く、最大でも3年ほどしか保たなかったのだけれど、その一番長かった構成で行われたライヴの収録がこちら。彼らにとって初のライヴアルバムとなる。

この時のメンツは黄金期メンツの直前...だけど、これはこれでまたイイ。上物3人(ギター安藤正容(まさひろ)、サックス伊東たけし、キーボード和泉宏隆)は彼等を広く世間一般に印象づけたF1のイメージソング、「TRUTH」をリリースしたときと同じで、リズム隊はその直前の田中豊雪+長谷部徹コンビ。一般的知名度としては「TRUTH」時代だが、既にその時点ではいわゆる「フュージョンブーム」は終焉に近く、「フュージョンバンド」として捉えると世のブームは、実はこのリズムユニットのころ。黄金期メンツの須藤満+則竹裕之組はロックを基調としながらもジャズ系の複雑なリズムにも対応できるけれど、田中+長谷部のコンビの方が明解でポップなので「一般」ウケは良かったと思われ。

KIMI WA HURRICANE(君はハリケーン)」は今は亡き(ブっ壊れたラシイ)ウインドシンセの神機、lyriconとアルトサックスが交互に聴ける最近ないパターン(近頃は曲によってウインドシンセかサックスかに明確に分けてる)。この曲のlyriconの音はホンっとによいな。リズムの軽いトリックもいいね←則竹なら半拍ずらすと思うけれど、長谷部のドラミングはソコまでひねっていない、ノリ重視。

JAPANESE SOUL BROTHERS」はライヴ定盤曲(余談だが、この初期から演られている有名曲はなかなかスタジオ録音されず、デビュー20年後23枚目のアルバムの初回生産特典として収録された)。ソロ回しがクッソなが~いライヴのラストあたりが定位置の曲。今回もベース⇒ドラムス⇒ピアノ×ギターと比較的長いソロが回されている(この曲ではlyriconがメロ担当なのでアウトロにソロがある)。結果約15分!の長大な曲に。でもこの曲は盛り上がる!

さらにここからアンコールで3分半以上にわたるフリーリズムのギターソロに続いては「PRIME」。これは“プロトタイプ「TRUTH」”とも呼べるようなハードで明快な、そしてやや哀愁を帯びたメロディラインを持つロック系楽曲。このあとビッグヒット「TRUTH」があるので、同傾向のこの曲はライヴで演られることも少なくなったけれど、実はこっちの方の野太いlyriconの音の方が好み。「TRUTH」が好きならば、必ず好きになれそうな曲。

THE SQUAREはこの後しばらくしてT-SQUAREと名前を変えて活動することになるが、リズムユニットがテクニック系の須藤+則竹にチェンジし、さらに伊東の一時離脱時はハイパーサキソフォニスト本田雅人がフロントマンとなったので、急激にテクニカルな曲が多くなってくる。でもこのころの方がポップス風味も多くフュージョンブームの頃のフュージョン王道だな、って思ったり。でも今でもCASIOPEAやDIMENSIONに比べるとT(HE-)SQUAREはポップで、やっぱりこのころのカラーが原点なのか。

ライナーの写真は白黒で地味だなー...
ライナーの写真は白黒で地味だなー...
 

今も続くバンドの方向性を決めた時代の集大成として聴くと、違った楽しみ方がある作品です。

【収録曲】
1. OMENS OF LOVE
2. MERYLU
3. ADVENTURES MEDLEY
 TRAVELERS / JUBILEE / NIGHT DREAMER / SISTER MARIAN / RODAN
4. WE'LL NEVER HAVE A TROUBLE
5. KIMI WA HURRICANE
6. JAPANESE SOUL BROTHERS
7. PRIME
8. IT'S MAGIC (Instrumental Version)
9. FORGOTTEN SAGA

「KIMI WA HURRICANE(君はハリケーン)」(本作収録と同年のライヴ)

更新: 2021/09/21
必聴度

フュージョンが女子大生ウケした時代を識りたいなら

今では考えられないが、女子大生がキャーキャー言うジャンルだったこともある

  • 購入金額

    3,200円

  • 購入日

    1986年頃

  • 購入場所

21人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • cybercatさん

    2021/09/21

    これライヴアルバムとしては選曲含め質が高いですよねー。

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