レビューメディア「ジグソー」

お化粧直し

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。有名曲、人気曲は最初にリリースされた以降もさまざまな場面で再利用されます。ベストアルバムへの収録やライヴてせの演奏とライヴアルバムへの収録などがメジャーどころですが、メンツを換えて再録したり、リアレンジして再演したり...そんな手法の一つに「リミックス」があります。1970年代を中心に活躍したウェストコースト・ロックのグループの初期の代表曲をダンスチューンに仕立て直す事で新鮮味を出した作品をご紹介します。

リミックス。元々はマルチトラックで録音された各パートのレベル・バランスを調整したり定位を換えたりという「調整/化粧直し」の意味あいが強い行為だったが、最近はデジタル編集が簡単に行えることもあり、積極的に追加楽器やSEを入れたり曲を切り貼りして構成を変えたり長さを変えたりする大がかりなリミックスが多くなってきた(さらにMashupなる異なる曲を混ぜ合わせて一つの曲にする手法にまで発展している⇒一例:「ビードロ模様」あの夏で待ってる「Tell Your World」livetune feat.初音ミクMashup by QubicLoop)。

このような手法を使って料理されたのは1970年代を中心に活躍したロックバンド、The Doobie Brothers。しかもダンス系アレンジと相性が悪くはなさそうな後期のメインヴォーカリストがブルーアイドソウル系のMichael McDonaldに変わったあとではなく、前期のTom Johnston時代の楽曲が選ばれているのが面白い。カントリー~ブルースの色合いが濃かったオリジナルがディスコ調のダンストラックとなっている。

まず「Long Train Runnin'」。シンコペーションリズムをからめた生ギのアルペジオとキレの良いエレキギターのカッティング、日本人好みの哀愁が感じられるメロとハーモニカソロで人気の高い前期Doobiesを代表する曲。元々インスト曲として演奏されていただけあって、アレンジが凝っていて、ノリの良い曲。これをリミックスした2曲目、3曲目は大ぐくりとしては「ディスコ調」なのだが、方向性が違って面白い。

Sure Is Pure 7" Edit」の方は名前の通り、Sister Sledge等のハウスリミックスを手がけたKelvin AndrewsとDanny SpencerのユニットSure Is Pure(現在はSoul Mekanikに改名)の手による。リズムトラックレスのギターのカッティングのみのバッキングで歌まで入ってしまい、その後1コーラス終わったところで、人工的な16ビートでリズムインする。ベースもゴゴゴゴというような音でしかもフェイザーがかかったような感じのハウス系音色。そこに汗臭い?Tomの声とハーモニカソロが乗るが、意外にあまり強い違和感がないのがむしろ面白い。

対して「Full Guitar Mix」はパーカッションのみで導入され⇒ハイハット16ビート/バスドラ4つ打ち⇒人工的なスネアによるバックビートで導入されたあと、また1コーラス目冒頭はパーカッションだけに戻ってギターのカッティングがインするという感じで「順序」が違う。これはリミキサーBen Liebrandによる。その後全編に入る90年代っぽいキーボードのシーケンスパターンと70年代ロックのミスマッチの妙。アウトロで何度もリズムトラックがオフしては復帰するのがソウルのフェイク部分っぽいな。

次はカントリー調の「Listen to The Music」がネタ曲。バンジョーと生ギターのコンビネーションが長閑なこの曲、典型的なカントリーロックの8ビートリズムでとうていダンストラックになりそうにはないのだが...

Motiv 8 7" Edit」はMotiv 8ことSteve Rodwayの手によるリミックス。フランジングがかかったディスコリズムに乗ってやや速められたスピードで突っ走る。サンプリングコラージュされてスクラッチ風になったコーラスが面白い。

ラストの「Overworld 7" Edit」はDevelopment CorporationことNeil ClaxtonとJohnny Jayによるリミックス。リズムが速くなっているのは「Motiv 8 7" Edit」と同じなのだが、バンジョーと生ギターがフィーチャリングされていて、2ndコーラス以降はストリングスが大きく入っているので、リズム強調一辺倒ではない。

カントリー系のロックまで「踊れる」曲にしてしまうリミックス。違和感なく(当時)20年前の曲がディスコチューンになっているのはさすが凄腕リミキサー達。ただ、今回は「リミックスの方がむしろいンじゃネ?」という程のものはなかった。コレは「元」が良すぎたから?それとも自分はそれに慣らされすぎているから?

でも、これでバンド自体を識って遡ってはまることもあるとは思うので、それはそれであり?

オリジナル+リミックス2態という感じに2曲が並ぶ
オリジナル+リミックス2態という感じに2曲が並ぶ

昔の曲に現代的お化粧をして、も一度世に出しました、というテイの作品です。

【収録曲】
1. Long Train Runnin' (Original Version)
2. Long Train Runnin' (Sure Is Pure 7" Edit)
3. Long Train Runnin' (Full Guitar Mix)
4. Listen to The Music (Original Version)
5. Listen to The Music (Motiv 8 7" Edit)
6. Listen to The Music (Overworld 7" Edit)

「Long Train Runnin' (Sure Is Pure 7" Edit)」

更新: 2021/04/11
必聴度

オリジナルを消化しきった人が聴くならアリ?

オリジナルの良さがわかった上で、味わい直すなら、アリ。リミックスだけ聴いて判断して欲しくない。面白いリミックスをたくさん作れるベースとなり得るオリジナルの素晴らしさがよくわかる。

  • 購入金額

    1,600円

  • 購入日

    1995年頃

  • 購入場所

19人がこのレビューをCOOLしました!

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