レビューメディア「ジグソー」

マルチスレッド作業には最強、オーバークロックすれば一般的な作業でも遅れは取らない。コンシューマー系最強の8コア16スレッドの怪物、Intel Core i7-5960X Processor Extreme Edition

IntelのCPUにはいくつかのブランドがあるが、デスクトップ用のブランドとしては「Core」をはじめ、伝統の「Pentium」、廉価CPUの「ブランド」として定着した「Celeron」などがある。一般的には(2014年11月現在)「Celeron」⇒「Pentium」⇒「Core i3」⇒「Core i5」⇒「Core i7」という順に性能が向上する。それらはその時のメインストリームCPU用ソケットで供給される(一部最廉価のXeonブランドのCPUもこのソケットに該当する)。近年ではGA1156⇒LGA1155⇒LGA1150と変遷してきた。

その一方、それより上級のラインも存在した。それはサーパー向けのチップを転用したもの。サーバー向けのチップは安定性と広大なメモリへのアクセス性能が求められる。また、様々な周辺機器とのインターフェースのために外部との連絡経路(レーン)も太い。これらはオーバークロックをする際も電源の安定性に寄与して高クロックが狙えるマシンとなり得るし、スーパーゲーミングマシンの場合は複数のビデオカードを使った高画質なマシンを構築できる。そのため、通常のメインストリームCPUに飽き足らないエンスージアストに支持されている。

このラインのソケットはメインストリームCPU用ソケットとは異なるピン数の多いものが使われてきた。Core i初期のメインストリーム系ソケットがLGA1156だった時代からLGA1366⇒LGA2011と変遷してきた。メインストリーム系は2世代前となるCore iであれば2000番台のいわゆるSandy Bridgeで採用され、次のIvy Bridge系でも継続利用されたLGA1155から、LGA1150を用いたHaswell系へと2013年に変わったが、サーバー(ハイエンドデスクトップ)用もLGA2011-v3へと変更になり、それに対応したCPUとしてHaswell-Eとよばれるものが登場した。

一般的なLGA1150 CPUと比べるとそのサイズは巨大だ。

ちなみにこのLGA2011-v3、それまでのSandy Bridge-E~Ivy Bridge-Eに対応したソケット、LGA2011と接点の数が同じで、「v3」と「Version3」とも読める呼称なので、あたかも上位互換ソケットのようにも捉えられるが、実は電気的互換性はない。そういう意味ではHaswell-Eと呼応する新世代のプラットフォームなのだ。

切り欠きの位置と数が違う(実はLGA2011には2011以上のランドがある)

その新しい環境で満を持してリリースされた上級CPU、Haswell-Eも今までにない特徴がある。

LGA2011-v3に対応したCPUは、当然のことながらそれを搭載するX99チップセットM/Bと同時に刷新された「Haswell-E」と呼ばれるCPU群である。

ただ、このHaswell-Eはそれまでのサーバー(ハイエンドデスクトップ)系CPUとラインアップ構成が違うところがポイントだ。まずコア数とそれに伴うスレッド数が違う。Sandy Bridge-EとIvy Bridge-Eに同じくHaswell-Eも発表当初はラインアップは3つだが、今まではトップグレードの「Extreme Edition」と呼ばれる末尾に「X」がつけられるモデルと中位のモデル(○930Kという名称のモデル)が同じコア数/スレッド数(6/12)で、最廉価版のモデルのみが4コア8スレッドに絞られていた。しかし、Haswell-Eは中位のCore i7-5930Kと最廉価のCore i7-5820Kは等しく6コア12スレッドで、従前のモデルで言えば「Extreme Edition」並だ。そこで?最高峰のCore i7-5960Xはコアが増やされた。ついに8コア16スレッドとなり、まだ4コア8スレッドのDevil's CanyonことCore i7-4790Kが最高のメインストリーム系CPUの倍となり、完全に水をあけた感じだ。今までは中位の(○930K)は最上級のものと若干の周波数向上とL3キャッシュの容量の差くらいしかなく、中位モデルはそれが美味しかったのだが、今回は8コア16スレッドが欲しければ本品が唯一の選択だ。当然コア数が増えたため、動作周波数は抑えられ、定格3.0GHz、Turbo Boost時3.5GHzでCore i7となってからのサーバー(ハイエンドデスクトップ)系CPUの中で一番低い。そういう意味では今までの「Extreme Edition」の立ち位置が中位のCore i7-5930Kで、最上位の「Extreme Edition」とほぼ同等ながら周波数の上限とL3キャッシュが抑えられた「○930K」のポジショニングはCore i7-5820Kが占めた事になる。ただ、Core i7-5820KはL3キャッシュが減らされたのではなく、PCI Express レーン数が減らされているので、ビデオカード複数積みのゲームマシンなどでは制約が出るので注意が必要だ。

ブランド的には「i7」を名乗る。同じi7に2種のソケットがあることになる。

LGA1150版との区別にはこちらは「i9」などの方がわかりやすかったかもしれぬ

その最上位CPUであるCore i7-5960X Extreme Editionは前述のように、コアとスレッドの数はメインストリームCPUであるHaswell上位のCore i7-47××の実に倍を確保しているが、動作周波数は定格が低電圧版のCore i7-4770SとTB時の最高でも超低電圧版のCore i7-4770Tを超える事がなく(Core i7-4770S定格3.1GHz、同4770TのTB時3.7GHz)、シングルスレッドではメインストリーム系CPUに遅れを取る可能性も考えられた。

Haswell以降でcybercatが所持するCPUの比較


実際の性能はどれほどのものなのだろう。

今回、プラットフォームが異なるため、純粋な差し替え比較ができないので、Core i7-4770Kを中心とした現使用メインPCと本品を中心とした「秘宝PC」をベースにしながら、CPU性能を中心に比較してみた。

検証環境
【秘宝PC】
 ・CPU:Intel Core i7-5960X(本品)
 ・CPUクーラー:CORSAIR H100i(CW-9060009-WW)(CORSAIR LINK制御)
 ・M/B:ASUS X99-A
 ・メモリ:Crucial CT8G4DFD8213 8GB DDR4-2133 ✕8 Total64GB
 ・VGA:ASUS STRIX-GTX750TI-OC-2GD5
 ・システムドライブ:Intel SSD 730 Series 240GB SSDSC2BP240G4R5
 ・データドライブ:非搭載
 ・光学ドライブ:非搭載
 ・カードリーダー&USBフロントパネル:非搭載
 ・電源:CORSAIR RM850(80PLUS GOLD)
 ・PCケース:CORSAIR Carbide Air 540
 ・OS:Windows 8.1(2014年4月のWindows 8.1 Update適用済み)

【メインPC】
 ・CPU:Intel Core i7-4770K
 ・CPUクーラー:CORSAIR CWCH80 (CORSAIR LINK制御)
 ・M/B:ASRock Z87 Extreme6
 ・メモリ:AMD (Patriot) Memory 8GB 1600MHz Performance Ed. AP38G1608U2K
 ・VGA:MSI R6950 Twin Frozr II OC
 ・システムドライブ:Intel SSD 335 Series 240GB SSDSC2CT240A4K5×2のRAID0構成
 ・データドライブ:WesternDigital Red 3.0TB WD30EFRX
 ・光学ドライブ:パイオニア BDR-206JBK
 ・カードリーダー&USBフロントパネル:Bullet 5インチベイ用I/Oパネル IOP525 (IOP525)
 ・電源:ENERMAX Platimax EPM1000EWT(80PLUS PLATINUM)
 ・PCケース:Abee AS Enclosure M2 Premium Edition EM2PE-BK
 ・OS:Windows 8.1 Pro(2014年4月のWindows 8.1 Update適用済み)

※一部比較では「5 Reviews ICE Tower - 4F」で検証したIntel Pentium プロセッサー G3258

で構築したPC環境も用いた。

また、周波数あたりの性能でも比較したかったので、Core i7-5960XとCore i7-4770Kに関しては、4.0GHz(100MHz✕40倍)で同一周波数にしたものでも比較した。まず、ZIGSOW参加初期から一番データを持っているベンチマークの一つ、3DMark Vantage。

クロックを合わせるとCPU性能は4770Kのほぼ倍
クロックを合わせるとCPU性能は4770Kのほぼ倍

両者の積むビデオカードは世代が違うが、2014年のハイクラスエントリーであるGeForce GTX 750 Tiと2011年初のほぼハイエンドであるRadeon HD6950は3年間の進歩とNVIDIAとAMDの得手不得手により、総合的な実力は比較的伯仲しており、GPUスコアは8%前後GTX 750 Ti搭載ビデオカードを積んだ秘宝PCが上回っているだけだ。

しかし、CPUスコアは圧倒的な差。本品が周波数で劣る定格同志で比較しても177%、ともに4GHzにオーバークロックして周波数を合わせた場合は2倍以上の性能を叩き出した(定格動作のメインPC比)。

一方同じFuturemarkの最新ベンチマークソフト、「3DMark(Version 1.4.780)」では傾向が異なる。

img.php?filename=mi_101435_1418547261_17
低負荷時は4770Kの方がよいとはこれ如何に。
低負荷時(の一部)は4770Kの方がよいとはこれ如何に。

例によってGPUの差があるので、イーブンな比較ではないが、GPUもCPUも面白い結果となった。GPUに関しては低負荷でRadeon HD6950が健闘し、高負荷ではGeForce GTX 750 Tiが明確に勝るという結果になったが、CPUの方も奇しくも似たような結果となった。低負荷のIce Stormでは5960Xと4770Kは僅差で明確な差が付いていない。これは周波数を4.0GHzでイーブンにしてもさほど大きな差にならない。...どころかIce Storm ExtremeやIce Storm Unlimitedでは5960Xがまさかの敗北...

ただ、Cloud Gate以上に負荷が高いテストになって来ると、明らかに5960X>4770Kとなる。動作周波数で劣る定格で比較してもそれは揺るがず、4.0GHz同士だとほぼ2倍弱の開きを持つぶっちぎりの性能差。

 

特にSky Diverの96 Threadsの結果は圧倒的で(..というか4770Kでさえ、48Threads以下ではCPU性能が高すぎてオーバーレンジしてしまいスコアが付かない(^^ゞ)、さすがの性能を魅せつけた(←あえて誤変換訂正せず)。

 

他の性能比較としてはマルチスレッドが完全に活かせるCINEBENCH R15(CPU)は定格でも1.5倍、4.0GHzで動作周波数を合わせるとほぼ倍の性能となり、まさに倍コア・倍スレッド、という感じの性能だが、ゲーム系ベンチマークは(旧)FF14ベンチマーク

や新生エオルゼア

もスコアに対するグラフィック系能力の比率が高いのであろうか、それともCPUにはマルチスレッドの能力が要求されないのか、ほとんど差が付かなかった(定格ではむしろ5960X<4770Kの傾向であった)。

CINEBENCHのCPUは1500越え(OC時)

OCすると12コア24スレッドのXeonさえも置き去りにする

今回構築したPCはかなり、クセがある。

まとめると

・CPU性能(シングルスレッド):定格ではやや弱い。同周波数のCore i7-4770Kとほぼ同等。

・CPU性能(マルチスレッド):圧倒的。マルチスレッドが活かせる環境だと無敵。

・CPU性能(耐オーバークロック):突き詰めてはいないが、4.0GHzで問題なく回る。

・CPUクーラー性能(耐オーバークロック):5960Xの4.0GHz動作でもバリバリ冷やす。

・CPUクーラー性能(静音性):高負荷時では五月蠅い。要改善。

・M/B性能(拡張性):一通り揃っている。突出してはいないが過不足なし。

・M/B性能(オーバークロック):一応できるがカリカリに攻め込む板ではない。

・メモリ:充分量。ただ作業内容次第ではその広さが活かせない。

・ビデオカード(描画性能):基礎値は高いが、最高性能を狙うと言うよりは静音向き。

・ビデオカード(演算支援):NVIDIA製GPUを積むのでCUDAが使用可能。

・SSD:安定かつ高速。ただし容量として十分ではない。

・電源:高能率かつ安定、そして静音。今回の構成だとOCCT動作時でもファン回らず。

・ケース:冷却性と拡張性を併せ持つが、前面USBポートや内部3.5インチベイの数が不足。

・OS: 一般用でHyper-V利用やリモートデスクトップのホストは不可だが、最大RAMは充分。

これらの構成からはやはり最適な利用方法はビデオファイルのエンコードと思われる。

 

ただ、そのためには

・ビデオファイルを取り込むためのキャプチャユニット

・ビデオデッキ(カメラ)

・エンコードしたファイルを一時保管する大容量ハードディスク

・キャプチャユニットや動画待避のための外付HDDを接続するUSBポート増設アクセサリ

・最終待避/他機器での再生のためのBD/DVDライター

・ビデオカード、電源に比べて五月蠅いケース/CPUファン

といった機材を増設・改良する必要があるだろう。

 

ちょうど、先日VHS/Hi8時代のビデオカメラ撮影の映像をチェックしたところ、一部はテープが劣化していてノイズが入り始めているものも出てきた。このエンコードマシンで想い出を朽ちさせないように上記パーツに手を入れて、最強のエンコードマシンに仕上げたい。


【Intel Core i7-5960X Processor Extreme Edition 仕様】
コア数:8
スレッド数:16
動作周波数:3GHz
ターボ・ブースト時最大:3.5 GHz
L3キャッシュ:20 MB
命令セット拡張: SSE4.2、AVX 2.0、AES
プロセスルール:22 nm
最大TDP:140 W
最大メモリーサイズ:64 GB
メモリーの種類: DDR4-1333/1600/2133
メモリーチャネル数:4
グラフィックス:非搭載
PCI Express リビジョン:3.0
PCI Express レーンの最大数:40
対応ソケット:LGA2011-v3
低ハロゲンオプションの提供 MDDS を参照
インテル ターボ・ブースト・テクノロジー2.0:対応
インテル vPro テクノロジー:非対応
インテル ハイパースレッディング・テクノロジー:対応
インテル バーチャライゼーション・テクノロジー (VT-x) :対応
ダイレクト I/O 向けインテル バーチャライゼーション・テクノロジー (VT-d) :対応
インテル VT-x 拡張ページテーブル (EPT) :対応
インテル 64:対応
アイドルステート:対応
拡張版 Intel SpeedStep テクノロジー:対応
インテル デマンド・ベース・スイッチング:非対応
サーマル・モニタリング・テクノロジー:対応
インテル アイデンティティー・プロテクション・テクノロジー:対応
インテル スマート・レスポンス・テクノロジー:対応

Intel Core i7-5960X Processor Extreme Edition (20M Cache, up to 3.50 GHz)仕様表

  • 購入金額

    0円

  • 購入日

    2014年10月20日

  • 購入場所

    5 Reviews ICE Tower秘宝

39人がこのレビューをCOOLしました!