レビューメディア「ジグソー」

ちょっとメジャーになりきれない楽器、ソプラノサックスフィーチャリング..ではあるものの

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。楽器には役割があります。ヴァイオリン系の弦楽器を例にとれば、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの4つのうちソロをとる(ソロ楽器となる)順序で言うと、ヴァイオリン>チェロ>>ヴィオラ>>コントラバスとなると思われます。高音で煌びやかなヴァイオリンと豊かな中低域が魅力のチェロはソロ奏者が好んで使いますが、低域を支えるコントラバスは別としてもヴィオラは少し日陰者です。サックスという楽器の中でやや使う人が少ないソプラノサックスに重きをおいた作品をご紹介します。

楽器はヴァイオリン系弦楽器やリコーダー系縦笛のように音域別に大きさが異なるものが用意されることが多いが、「人声に最も近い楽器」と呼ばれるサックス(サキソフォン)も音域別に異なる種類がある。ピッコロやバスサックスの様な、どマイナーなものもあるが、一般的にはソプラノ、アルト、テナ-、バリトンの4管がメジャーだ。このうちバリトンは低域担当でソロをとることが「ない」とは言わないがかなり少ない。あとの3管ではヴァイオリン系弦楽器とは異なり一番高い音域のソプラノサックスではなく、アルトとテナーが「ソロをとる楽器として」ほぼ拮抗しておりソプラノソックスはアルトサックスもしくはテナーサックス奏者が楽器に音域・音色的な幅を持たせるために選択することが多い。

アルトおよびテナーサックスに比べて濁りが少なく、「元」となったクラリネットに近い音色。ハスキーな魅力があるサックスの音色の中ではやや特異だ。その音色から、ほとんどのプレイヤーはアルト、もしくはテナーから持ち替えて数曲で使う、という選択をする。Kenny GやPaul Winterのようにソプラノをメインで吹くというプレイヤーもいないわけではないが、多くはない。

そんなサックス一族の中ではちょっとメジャーになりきれない楽器であるソプラノサックスを使った作品集。何度かご紹介しているMALTAこと丸田良昭はアルトを中心にプレイするサキソフォニスト。近年はLionel Hampton楽団のコンサートマスターでならした若き日の様にジャズ王道へ回帰しているが、デビュー直後は明解で奇をてらわない覚えやすくてキャッチーなフュージョンの最右翼として、TV番組などに多く使われた。

そんな彼はアルトを中心に吹くが、1枚のアルバムに数曲、ソプラノサックスの楽曲を入れるのが通例。10枚目のアルバムまでの中からソプラノサックスを使用した楽曲を抜き出し、それに5曲の新録曲を付け加えた半ベスト盤が本作、“My Soprano”。

「聖なる」と形容される音色のソプラノサックスを、下町チックに?親しみやすいアルトと違うキャラクターを、彼はどう料理したのか。

1~4曲目とラストがこのアルバムのための新録だが、4曲目とラスト(4曲目のリプライズ的位置づけ)のみが一般に「ソプラノサックス的楽曲」とイメージされるもので、他の3曲はかなり凝っている。特に2曲目の「BARKS WORKS」が楽しい。ブラスの派手なオブリとサンプリングされた犬の鳴き声、大石学のCOOLなジャズオルガンがハッピーに彩る南部テイストの曲だが、MALTAはアルトとソプラノを吹き分け、一人掛け合いをしている。ただソプラノ、というよりアルトの上の域のサックス、という感じであまりソプラノならではの透明感などを感じず、逆に熱さを感じるプレイ。

それに対してオリジナルアルバムにちりばめられたソプラノフィーチャリングの曲は清らかなソプラノサックスならではの音色が心地よい。1st

からは野力奏一のローズと佐藤允彦の生ピアノというゴージャスなバックに支えられてメロウなプレイの「AMONG THE CLOUDS」。

「REFLECTIONS」はアップテンポのチューンで、サックスも吹けるキーボーディスト、Larry WilliamsのシーケンスパターンがT-SQUAREの海外ミュージシャン起用作品

を彷彿とさせる。そのカタめのバックに乗せてなめらかなMALTAのソプラノが聴かれるのが対比の妙?

ちょっと日陰者の?「ソプラノサックス」という楽器にフォーカスしたアルバム。ただ、MALTAがKenny Gのようにソプラノがメインではなくアルトメインのプレイヤーで、ソプラノサックスは「持ち替えて」使う楽器という位置づけのため、表現の「幅」として少し薄いかな。新録はソプラノの限界を超えようと?アルトが入って逆にちょっと「喰われてる」し。
MALTAは「ソプラノらしい」ストレートをプレイする。
MALTAは「ソプラノらしい」ストレートをプレイする。
ソプラノサックスはサックスの中ではやや違った系統の音を出すだけに、単にサックスのメロディを高音域に転調しただけでは「流れて」しまう。ソプラノならではの良さを引き出して使いこなすのは難しい楽器なのかな、と感じた作品でした。

【収録曲】()内オリジナル収録アルバム
1. BLU - RUN - RUN
2. BARKS WORKS
3. 3 - 2 - 1 - 0
4. CANDLELIGHT
5. OCEAN VIEW (7th "SAPPHIRE")
6. AMONG THE CLOUDS (1st "MALTA")
7. REFLECTIONS (6th "OBSESSION")
8. N.Y. SCANDAL (10th "EXCELSIOR")
9. IT'S COOL (7th "SAPPHIRE")
10. MANHATTAN IN BLUE II (2nd BEST-remix-"MY HIT&RUN")
11. SECRET ISLAND (5th "HIGH PRESSURE")
12. DAYBREAK (9th "EMISSION")
13. CANDLELIGHT II
  • 購入金額

    3,000円

  • 購入日

    1993年頃

  • 購入場所

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