所持する音楽データに対する私利私欲．．．イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。過去の自分（たち）の作品と向き合うセルフカバーと言う作品があります。人気の曲を現在のライヴアレンジで再現する、過去の録音の音質的演奏的不備を補うなどさまざまな理由がありますが、録音時とは異るメンバーでの別解釈が聴けるのも面白いところです。過去の自分たちの曲を多彩なゲストとともに再演した作品をご紹介します。

T(HE)-SQUAREは何度となくご紹介している一番アクティヴに、かつ長く活動を続けるジャパニーズフュージョンバンド。ここのところ彼等は春にオリジナルアルバム、秋に現メンバーを中心としたメンツによる過去作品のセルフカバーアルバムを出している。

彼等には2013年4月現在ベーシストの正メンバーがいないので（ギター安藤正容、サックス伊東たけし、キーボード河野啓三、ドラムス坂東慧が現メンバー）、ツアーベーシストの田中晋吾を中心としながらも、元メンバーの田中豊雪や須藤満のサポートを受けながら、彼らが「THE SQUARE」と名乗っていた頃の作品を再演したセルフカバーを2作出した。セルフカバー3作めの本作は少し趣向を変えて多くのゲストプレイヤーを呼び、「T-SQUARE」と改名した後の作品まで広く網羅されている。

秋に出たのに装丁は「夏」ですな。

「FACES」。音速の貴公子、Ayrton Sennaを想い出させるF1ブームの日本を支えたフジテレビF1グランプリ中継の名挿入歌。

坂東クンらしからぬ？ハードなロックドラミングがアツイ！エレキギターっぽい音色の伊東のEWIと和製ヘヴィメタバンドの雄、LOUDNESSの高崎晃によるバトルがもっとアツイ！！

「RADIO STAR」。元曲はRippingtonsのRuss Freemanによるフワっとした音像処理が特徴の曲

だったが、ラッパー＆ベーシストとして活躍するJINOこと日野賢二のラップとスラップベースでよりソリッドに。ピアノソロはテンションバリバリの攻めたソロでスゲェいい！T(HE-)SQUAREの歴代キーボーディストで「ピアノ」と言えば和泉宏隆の印象が強かったが、河野のこのプレイはそれを覆す勢い。

cobaのアコーディオンがもの悲しい「ROMANTIC CITY」は大航海時代

のイメージもあるラテンアメリカなアレンジ。伊東の久しぶりのフルートソロもパン（フルート）のような素朴な音で乾いた風のよう。cobaのプレイは熱い！

そのほかにもDIMENSION

の勝田一樹と伊東のツインサックスが聴ける「BIG CITY」、プログレバンドKENSO

のキーボーディスト光田健一のロマンチックなピアノが聴ける「NIGHT　DREAMER」、宮本笑里のヴァイオリンが叙情豊かに歌う「PLAY FOR YOU」、「TEXAS KID」でのブッ壊れピアノソロはフリージャズピアノの巨匠、山下洋輔と聴き所満載！

これは間違いなくオススメ盤です！

T-SQUAREの原点、デビューアルバム“Lucky Summer Lady”を彷彿とさせる装丁

【収録曲】（）内ゲストプレイヤー
1．FACES （高崎晃(LOUDNESS)）
2．RADIO STAR （日野‘JINO’賢二）
3．遠雷 （東儀秀樹）
4．ROMANTIC CITY （coba）
5．NIGHT　DREAMER （光田健一）
6．PLAY FOR YOU （宮本笑里）
7．BIG CITY （勝田一樹(DIMENSION)）
8．Knight's Song （山本恭司(BOWWOW)）
9．TEXAS KID （山下洋輔）

「Knight's Song」