レビューメディア「ジグソー」

歌詞カードを見ながら聴く歌

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。基本フュージョン系を最も好むcybercatは、音楽を聴く際の比重は「曲>>歌詞」です。たとえ寿限無や念仏を歌詞としていても、メロディが秀逸でアレンジが佳ければ別にかまわない。よく外国の曲は歌詞の内容がわからないからイヤだ、というひとがいますがヴォーカルもひとつの楽器の音として聴く傾向があるので、その声量・音程・音域など声の魅力には傾聴しますが、詞の内容はさほどまででありません。そんななか一握りだけ詞を聴くアーティストがいます。そんな歌詞カードを見ながら聴くアーティストの作品をご紹介します。

スガシカオ。独特の詩の世界をもつアーティスト。初期はフォークファンク?とでも言うようなアコースティックで、でもファンキィな世界を紡いでいたけれど、前作“FUNKAHOLiC”と本作はかなりエレクトリックなダンスミュージックとなっている。でもその詞の世界は相変わらず。ファンキィでダンサブルな方向に振っても彼の独特の世界は有効だ。

全体としてはこういう感じのファンキーさ、なんだけど。
全体としてはこういう感じのファンキーさ、なんだけど。
 

91時91分」。独特のナンセンスな詞の世界、パーカッシヴなオルガン、♪Ahaaaooo!♪という叫び声?もベタな「どファンクチューン」。河合わかばや佐々木史郎ら米米CLUB

 

のラッパ隊、BIG HORNS BEEの連中が生ブラスで盛り上げる。バックはスガの旧バックバンド“Shikao & The Family Sugar”と新バンド“FUNK FIRE”の混成で、キレのある現メンバーの“天才”田中義人

 

のギターのカッティングと粘りある元メンバーのベーシスト松原秀樹のベースランニングが楽しめる。このノリが出せる日本人アーティストは他にいないかも知れない。

サヨナラホームラン」。以前から続くスガの詞の独特のワールド爆発。♪明日という言葉は/どうして明るいって書くんだろう?/明るい日じゃなかったなら/誰も明日を待たないからか・・・/“本当のぼくはきっと/こんな奴じゃないはずなんです”/そう叫ぶぼくはたぶん/間違いなくそーゆー奴♪。これがシングルとなるところが彼の独特の立ち位置が認知されていると言うことか。

ファンカゲリヲン」。語呂から想像するに、たぶんヱヴァンゲリヲンとファンクをかけた想像上の兵器に♪ムカンシンもヤサシサも全部/破壊してよ/あとかたもなく/6月におきたこと全部♪と頼む、惛い情念の詩。どちらかと言えば初期の曲に近い詞のアプローチ。

表現形は「はじまりの日 feat.Mummy-D

 

のように、ラップも入ってかなりビートの効いたダンサブルな曲も入っているが、そこに広げられる世界はまさに「スガワールド」。

例によって初回盤にはDVDが付くが、それにはロンドンでのライヴがオフショットともに収められる。そのオフショットでは、イギリスの日本語教室で、スガの歌詞を教材にしている学生との交流などありおもしろい。ここの日本語教師が日本語習得のため日本に留学していたとき、にラジオから流れるスガの歌に魅せられたという。そういう意味ではスガワールドはバンコク共通語なんだろう。

日本では見られないほどの「近い」ステージ
日本では見られないほどの「近い」ステージ
 

現在彼は、長年所属した事務所オフィスオーガスタから独立してどのレーベル、どのレコード会社にも属さないフリーの状態で活動中。名を成した人が、商業主義と決別してキャリアの最後に自己レーベルを立ち上げるのはよくあることだけど、彼はまだ全く枯れていないはず。ブログなど覗くと、手弁当のアコースティックライヴなどで全国を回っているよう。

アルバムとしては本作が最後で、1年以上新作がない。
このまま枯れるのではなく、また新しい作品を届けてくれるだろう。
そのとき彼の新しい世界はどう描かれるのだろう。

【収録曲】
<CD>
1. Party People
2. 91時91分
3. サヨナラホームラン
4. 兆し
5. ファンカゲリヲン
6. トマトとウソと戦闘機
7. 雨あがりの朝に
8. ドキュメント2010 ~Singer VS.Rapper~
9. 台風は北北東に進路をかえ…
10. 夏色タイム
11. 軽蔑
12. はじまりの日 feat.Mummy-D

<DVD>
1. 19才
2. Loveless
3. 13階のエレベーター
4. 青空
5. アシンメトリー
6. 春夏秋冬
7. Party People
8. FUNKAHOLiC
9. 俺たちファンクファイヤー
10. Thank You
11. Progress
12. 午後のパレード

「ファンカゲリヲン」(歌詞を英訳しているおもしろいのを見つけました)

更新: 2020/11/11
必聴度

エレクトロ系スガファンクの到達点

前作“FUNKAHOLiC”よりもさらに、ポップにエレクトロに突き抜けている。

更新: 2020/11/11
必見度

ロンドンでのライヴのエネルギーが素晴らしい

「近い」会場でのオーディエンスの熱気。スガの音楽がロンドンピープルに受け入れられているのがわかる。

  • 購入金額

    3,675円

  • 購入日

    2010年頃

  • 購入場所

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