レビューメディア「ジグソー」

ヒトはテクノロジーだけでは感動しないよ。それを創り出したヒトやそれで創り出された作品には感動しても

所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。シンセサイザー、エレクトリックドラム、シーケンサー....今までなかった楽器が電子的技術の発達で一気に考案され出てきたのが20世紀末。そしてその多くは淘汰され消えていきました。そんな当時先進の楽器を駆使したアルバムをご紹介します。

“EARTH RUN”。このアルバムは評価が分かれるアルバムかもしれない。

Lee Ritenour、言わずと知れたフュージョン/コンテンポラリー界のギタリスト。日本では同時期にやはりフュージョンフィールドで活躍したギタリストLarry Carltonと合わせて、「フュージョンギター界の両雄」のように比較されることが多かったが、二人の路線は全然違う。

 

Leeは時代の先端技術を取り入れるのが上手く、テクノロジーを退けることなく、それを果敢に取り込む。一方のLarryはどちらかと言えば王道主義でローテク(プレイのテクニックがないわけではないよ!)。

このアルバムはそんなLeeの新規性を遺憾なく発揮したもの。ここでメインに使われているのはギターではない。ギター型のMIDIコントローラ"SynthAxe"。世のギターシンセの多くは、エレキギターにシンセサイザーコントロール用のピックアップを付けて、外部音源をコントロール出来るようにしたもの。ベースが普通のギターなので、普通のギターの音をミキシングして出すことも容易。

Leeが抱えている曲がったギターのようなのが
Leeが抱えている曲がったギターのようなのが"SynthAxe"


しかしここで使われた"SynthAxe"はコントローラであり、単体ではまったく音が出ない。外部MIDI音源をギタリストがコントロールするために、ギターで使われる奏法が使えるように考えられた疑似ギター。


で、このアルバムはそのコントローラ"SynthAxe"をフィーチャリングしたもので、数曲ではそれでメロディが取られている。ただ、基本的に"SynthAxe"は「コントローラ」であって音源ではないので、"SynthAxe"の音というものはなく、シンセ音。所詮はコントローラなので、ギターのもつ表現力を上回るほどのものではないワケ。

出だしの「Soaring」は明らかにギターでない矩形波に近い音色でメロが取られるが、ギターのグリスダウンとかの奏法が取り入れられているのでギターコントローラが使われていることが判る。でも、例えばチョーキングなら、生のギターは弦を引っ張ることによる張力の変化が出てくるし、強弱に関しては弾き方=ピッキングのアタリの差によって音量以外の表情等が出てくるのだが、これらが単なるベンドアップやヴォリュームの大小に変換されてしまう。曲そのものはいろいろなフレーズが万華鏡のように出てくるおもしろいものなのだが、せわしなくリズムチェンジが繰り返されそのたびに"SynthAxe"の音色と曲調が変わるので、何となく"SynthAxe"のデモ演奏のように聞こえてしまう。

 

つづく表題曲「Earth Run」は、少しオリエンタルなアコギのカッティングから入り、初期のカシオペアを思わせる(そういえば時期的にも近いな)さわやかな展開へと続き、オルガン調の音で"SynthAxe"のソロとなるが、これは特に"SynthAxe"でなくても普通のキーボードで良いんでは?という内容のソロ。

一方「If I'm Dreamin' (Don't Wake Me)」の様にヴォーカル(Phil Perry、Maurice White、Tommy Funderburkの豪華トリオ!)入りで、そちらが主となり"SynthAxe"がどこに入っているのか明確でないような曲や、ドラムとパーカッション以外打ち込みのバックに載せて、Leeのキレるエレキギターが吠えるビートのきいた曲「The Sauce」では"SynthAxe"を使っていないが、これらの方はけっこうLeeらしさが出ていい感じ。

結局アルバム全体としては、"SynthAxe"をメインに使う曲に関しては、その特性をデモるため?に曲がせわしなく、その他の曲も単品で聴くとTOTO風少しクロっぽいAORあり、縦ノリの打ち込みダンスチューンありで楽しいのだが、アルバム全体を貫くカラーがなく、なんかとっちらかっている感じ。

ちょっと"SynthAxe"を使うことに引っ張られすぎた感があるアルバム。

 

でも1曲1曲はホント悪くないんですよ。ホントに。

【収録曲】
1. Soaring
2. Earth Run
3. If I'm Dreamin' (Don't Wake Me)
4. Watercolors
5. The Sauce
6. Butterfly
7. Hero
8. Sanctuary
9. Water From The Moon

Official Lee Ritenour Website

 

「Soaring」

 

「If I'm Dreamin' (Don't Wake Me) 」

更新: 2020/12/06
必聴度

SynthAxeの表現力がギターを越えていないので...うーみゅ...

でも、「If I'm Dreamin' (Don't Wake Me) 」は必聴!

名曲。

  • 購入金額

    3,008円

  • 購入日

    1988年頃

  • 購入場所

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