自転車はいざなう

単なる足から、かけがえのないパートナーへ

いま、自転車が空前のブームを迎えている。ここ最近のガソリンの高騰をきっかけに通勤手段を車から自転車に切り替えたという人もいれば、エコの観点から、はたまたメタボ対策で乗り始めたという人まで、その理由はさまざまだ。現在、国内の自転車保有数は8600万台を超えると言われる。商業用も含めた自動車の保有台数が約7380万台(※1)というから、いまや自転車は国民の立派な『足』である。

まあ、自転車に乗り始めたきっかけはなんであれ、ブームがこうして長く続いているのはその大多数が「自転車の魅力にハマってしまったから」であろう。軽く、早く、おまけに楽しい!
乗り始める前に抱いていた、ひと昔前の重くてダサい“ママチャリ”的なイメージを鮮やかに覆してくれる魅惑の自転車たち。今回はレビュアーの皆さんのとっておきの愛車と共に、その魅力を紹介していこう。

※1:(社)日本自動車工業会 2009年度調べ

 

 

進化する自転車たち

自転車の原型と言われるドライジーネを、ドイツのドライス男爵が発明してからおよそ200年。当時はフレームも車輪も木製。地面を蹴って進む物だった。ちなみにペダルが付いた物が登場するのは19世紀中頃、空気入りのゴムタイヤが登場するのはさらに後の19世紀末のことで、イギリスの獣医ジョン・ボイド・ダンロップによる空気入りタイヤの発明を待たなくてはならない。ちなみにこの方、あのダンロップタイヤの始祖である。

しかし20世紀に入り、自転車は飛躍的に進歩。素材も木製からスチール製へ、そしていまやチタンやカーボンなど、ロケットや飛行機に使われる最先端の素材が使用されている。フォルムや性能も、用途や目的に合わせて枝分かれして進化してきている。現在のブームを牽引しているのは、ロードバイク、マウンテンバイク、クロスバイクの適性の異なる3タイプの自転車。まずは、それぞれの魅力について見てみよう。

 

まずはロードバイク。ツール・ド・フランスを始めとする各種ロードレースで活躍しているのがこれ。ロードレーサーとも呼ばれ、舗装された道路を高速で走行するのに適した自転車だ。前傾姿勢を余儀なくされる高いサドルとドロップハンドルが、そのシルエットの大きな特徴。レース仕様のためとにかく軽量で、一般的な“ママチャリ”が15~16kgはあるのに対し、ロードバイクは7~8kgと乗った際に重さをまったく感じさせない。設計にはスピードを第一とした思想が随所に散りばめられており、泥よけやスタンドなど高速走行に余計なパーツは装備していない。それ故、街乗りには適しているとは言えず、以前は競技志向の人がユーザーの中心だった。しかし近年はその優れた性能やシンプルで機能的なフォルムに惹かれ、通勤や通学、またファッションの一つとして所有するなど競技志向ではないユーザーも増えてきている。

一度手にしてしまうと、自分好みにカスタマイズしたくなるのも、このロードバイクの不思議な魅力。
それを支えるのがコンポーネント(周辺パーツのセット)の存在だ。フレームとの組み合わせにより、実に多種多様な車両バリエーションを楽しむ事ができる。レースにおいてはあくまで重量と性能に比重を置いてセレクトされるが、一般ユーザーの間ではデザインも重視して、さまざまな形でカスタマイズされている。また欧米などロードバイク先進国では、フレームからオーダーメイドで作るメーカーも存在する。その代表格が冒頭の写真で紹介したお富さんのもちものである「SEVEN CYCLE」。オーダーに合わせ、一台一台丹念に作られるハンドメイドの自転車は、ロードバイクの魅力に取り付かれた人間ならば誰もが憧れる、まさに夢の一台だ。
そしてこちら、「コルナゴEPS(エクストリームパワースーパー)」は、おそらくロードバイクの中でも最高峰のポテンシャルを持つ一台だろう。計算されつくした高剛性が生む優れたスピード、素直な操縦性は他の追随を許さない。・・・にしても、写真でご紹介した(´・ω・`)旦さんのカスタマイズはすごい。

次に紹介するのはマウンテンバイク(MTB)。外見的には堅牢なフレーム、どんな状況下でも路面をしっかりと捉える幅の広いタイヤが特徴。その名の通り、山岳や路面状況がハードな荒野での走行に適しているが、走行するシチュエーションに合わせてさまざまなタイプのMTBが存在する。クロスカントリーやトライアル、ダウンヒルやダートジャンプなどそれぞれの用途によって、サスペンションの位置やフレームの造り、ギアやブレーキが大きく異なる。

sadaさんのもちもの「センチュリオンBACKFIRE800」はどちらかと言えばクロスカントリー仕様。通常、マウンテンバイクのタイヤは26インチが主流なのだが、29インチを着用しているため走破性が高く、また街中においても快適に走る事ができる。

 

昨今の自転車ブームで自転車ツーキニスト(通勤に自転車を使う人)から多くの支持を集めているのがクロスバイク。ロードバイクとMTBをクロス(交配)させたという意味でこう呼ばれる。クロスバイクに多く用いられるフラットバー(横一文字のハンドル)は、ロードバイクに比べサドルよりも高い位置に設けられているため乗車時の姿勢が楽なのが特徴。またタイヤはMTBに比べて幅が細いため、ロードバイクに近いスピード感を楽しめる。ロードバイクに比べて段差にも強く、また操作性も良いため、初心者や女性の間での人気が高い。

アメリカのキャノンデールが作るクロスバイク、mappyさんのもちもの「バッドボーイ」。ロードレース用の自転車をはじめ、早くからMTBも手掛けていた事もあり、両者の良さが見事に調和している。スピード感と快適な乗り心地、その両方を兼ね備えたシティライドが楽しめるのだ。

 

 

そしてより楽しく、より快適に・・・

さて、ここまでは速さや乗り心地、悪路での走破性に優れた人気の3車種を紹介してきたが、自転車の進化はこれ以外にも様々な方向にその枝葉を伸ばしている。たとえば、現在の自転車ブームの中でも重要な位置を占めるミニベロは忘れてはいけない存在だ。

 

ベロ(VELO)とはフランス語で自転車の事。いわゆる車輪が20型以下の小径の自転車を言う。小回りが利き軽量。また見た目のかわいらしさもあり、特に女性からの人気が高い。以前は非力、安定性がない、スピードが出ないというイメージもあったが、最近のミニベロの中にはロードバイク顔負けのスピードを出す物もある。

ミニベロのカテゴリーでは小型の折りたたみ自転車を含むが、写真で紹介しているのは折りたたみ自転車で有名なブロンプトン社の「L3」。現在、折りたたみ自転車は数多く存在するが、手早く、コンパクトに折りたためるという点では、ブロンプトンの自転車に勝る物は少ない。折りたたんだ後のフォルムにもある種の機能美があり、持ち上げても形状がくずれる事がない点も人気である所以か。

ここまで紹介してきた以外にも、ブームに乗って多様な自転車が登場してきている。たとえば、2人や3人で直列に乗ってペダルをこぐタンデムや、仰向けに近い状態で乗るリカンベントなどがそれだ。まだまだポピュラーな存在とまではいかないが、わずか200年前まではチェーンもペダルも無かったのだから、新たなスタイルの自転車が主流派にとって変わる可能性は否定できない。たとえば、こちらのMochiponさんのもちもの。

 

どうだろう、この個性的なフォルムは!! こちらは国内の「17バイシクル」というメーカーが出している「セミリカンベント」というタイプの自転車。コンセプトは「安全で速くて、とにかく楽しい自転車」。リカンベントタイプの自転車のデメリットであった低速走行時の安定性を、ハンドルを座席近くに寄せたり、その回転軸を垂直にするなどして改善。これまでの乗馬スタイルの自転車とは、また違った世界観や楽しみを提供してくれそうだ。

 

さて、今回はさまざまなタイプの自転車を紹介してきたが、いかがだったであろう? 暑さもひと段落したこれからのシーズン、思い思いの自転車に乗って、街や山に繰り出してみたい。

※撮影機材
・カメラ:Leica M9 “Titanium” ・レンズ:Leica summilux M f1.4/50mm ASPH.