メディアから伝わる子どもの虐待は、親や学校、警察に焦点が当てられることが一般的で、全体像が観えない。
それに対し、本書では、子どもの側からこれを観ることを試みている。子ども達ばかりではなく、虐待された子
ども達に関わる人達、里親の下での生活が浮き彫りになる。そして、虐待の渦中における、子どもの心情や行動が
どのようなものかもだ。
書名の「誕生日を知らない女の子」に始まり、二人の男の子、一人の女の子、虐待された経験を持つ母親へと
話が展開する。書名となった女の子は、虐待した母親の「コワイ声」が幻聴として襲い、薬を飲んでも長い間
苦しめられた。それに、他人のものを盗んでしまう「自分」と、それを知らない「自分」がこころに同居してい
た。このような精神的病である「解離」の原因の多くは虐待であるという。
最後に登場する母親の場合、長女は「発達障害」であって育てにくい子だった。それが、引き金になり虐待を
してしまう。虐待を受けた過去から決別できず、不安定な精神状態も手伝って。「虐待って、一生苦しむ子供を
作るんだよね」という里親の言葉がこころに重くのしかかる。
障害をもって生まれる子もいるが、虐待により「発達障害」になる子も多いという。精神的病を背負って
生まれた子ゆえ暴力を受けるようになったのか、或いは、虐待の環境に身を置いたがゆえに「発達障害」となっ
たのか。虐待と「発達障害」は複雑に絡み合っている。
里親の下、笑顔を取り戻し、ちゃんと生きている子どもがいる。その一方で、里親が引き取った子どもを虐待
し、殺してしまうという事件が紹介されている。「ひょっとしたら殺してしまうかもと思ったこともあります。
正直、子どもへの怒りが湧くこともありました」というある里親の言葉は、里親と引き取られた子どもの関係性
の難しさを示している。傷つき苦しむ里親もいるということだ。
虐待の持つ破壊のパワーは、とても大きく、いろいろな人を巻き込む。虐待の構図は、単純とは言えず、その
ため現実を率直にみるところから始めなくてならないものだ。
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誕生日を知らない女の子 虐待――その後の子どもたち 単行本 – 2013/11/26
黒川 祥子
(著)
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第11回開高健ノンフィクション賞受賞作。虐待を受けた子どもたちは、救出された後、虐待の後遺症に苦しんでいた。
その「育ち直し」の現場であるファミリーホームに密着、子どもたちを優しく見つめる。
その「育ち直し」の現場であるファミリーホームに密着、子どもたちを優しく見つめる。
- 本の長さ296ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2013/11/26
- 寸法13.9 x 2.5 x 19.4 cm
- ISBN-104087815412
- ISBN-13978-4087815412
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登録情報
- 出版社 : 集英社 (2013/11/26)
- 発売日 : 2013/11/26
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 296ページ
- ISBN-10 : 4087815412
- ISBN-13 : 978-4087815412
- 寸法 : 13.9 x 2.5 x 19.4 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 537,730位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 9,875位社会学概論
- - 88,033位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年6月25日に日本でレビュー済み
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2019年9月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
虐待を受けた子供たちは重度のトラウマを抱えているが、里親さんの努力と愛で克服していくケースを学んだ。ヘンテコな親から産まれたとしてもまともに大人になるケースを知った。里親さんには頭が下がる。
2016年2月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
悲惨な出来事に対して我々はとかく二元論で考えがちである。虐待においては、生き残った子供と亡くなった子供。
亡くなった子供は世間的にかなりの同情や憐憫を受ける。亡くなった現場への花や優しい言葉などもとかくセンセーショナルだ。
それはもちろん可哀想なことこの上ないのだけど、徹底的な虐待を親などから受けて、
生き残った子供の悲惨さはこの本を見るまで真摯に考えることはなかった。
虐待児が抱え込む愛着障害。これは、半端ではない。狂ったように叫びだしたり、奇怪な行動をとる。
なかでも解離という現象は恐ろしい。人間のスイッチを切ってしまうからだ。
生きていれば、幸せになれる。そんな言葉は、この本にでてくる状況を見ると、消し飛ぶ。
むしろ生きているからこそ地獄の苦しみをあじわうこともある。それが被虐待体験なのだ。
虐待児を引き取り、その行動に悩まされる里親たちの姿も苦しい。
それでも、必死で子供たちを人間にしようとする心ある里親たちの奮闘ぶりには頭が下がるし、唯一の光だ。
最後のケースで出てくる女性は自分の娘に対して、現在進行形で殺意を抱いている。分かっていても止められない虐待の連鎖である。
彼女は自分の娘の誕生日を祝っている時、憎しみや怒りがわくという。自分は祝われたことはなかったと…。祝われている娘が憎たらしいのだ…。
この彼女の戦いは一生続くだろうけど、他人ながら幸せを願わずにはいられない。
一人の人間に幸と不幸のバランスがあるなら、金輪際不幸は訪れないくらいの苦しみを味わっているのだから…。
このようなノンフィクションにありがちな著者のいらない提言などはなく、
ひたすら具体的な人とのかかわりの中でその事象を真摯に追っていく作りがとても濃密でよかった。
亡くなった子供は世間的にかなりの同情や憐憫を受ける。亡くなった現場への花や優しい言葉などもとかくセンセーショナルだ。
それはもちろん可哀想なことこの上ないのだけど、徹底的な虐待を親などから受けて、
生き残った子供の悲惨さはこの本を見るまで真摯に考えることはなかった。
虐待児が抱え込む愛着障害。これは、半端ではない。狂ったように叫びだしたり、奇怪な行動をとる。
なかでも解離という現象は恐ろしい。人間のスイッチを切ってしまうからだ。
生きていれば、幸せになれる。そんな言葉は、この本にでてくる状況を見ると、消し飛ぶ。
むしろ生きているからこそ地獄の苦しみをあじわうこともある。それが被虐待体験なのだ。
虐待児を引き取り、その行動に悩まされる里親たちの姿も苦しい。
それでも、必死で子供たちを人間にしようとする心ある里親たちの奮闘ぶりには頭が下がるし、唯一の光だ。
最後のケースで出てくる女性は自分の娘に対して、現在進行形で殺意を抱いている。分かっていても止められない虐待の連鎖である。
彼女は自分の娘の誕生日を祝っている時、憎しみや怒りがわくという。自分は祝われたことはなかったと…。祝われている娘が憎たらしいのだ…。
この彼女の戦いは一生続くだろうけど、他人ながら幸せを願わずにはいられない。
一人の人間に幸と不幸のバランスがあるなら、金輪際不幸は訪れないくらいの苦しみを味わっているのだから…。
このようなノンフィクションにありがちな著者のいらない提言などはなく、
ひたすら具体的な人とのかかわりの中でその事象を真摯に追っていく作りがとても濃密でよかった。
2016年9月6日に日本でレビュー済み
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虐待を受けた子供を引き取り、育てる里親への、『その子はこんな虐待を受けて、こんなトラウマを持ってるから、こんな苦労しながら育てたんですよ』という、ただのインタビュー本だった。虐待を受けた子やそういう子を引き取って育てる里親の元を訪ね、インタビューをさせていただいたなら、もう少しマシな文章が書けなかったのかと、残念に思った。
2016年11月22日に日本でレビュー済み
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読んでいて 苦しいのは自分だけではないんだなと思いました。ただ 私も治療して楽になるなら楽になりたい 助けて欲しいと今でも思います。前向きに進む為の力が欲しい 同じく心疾患を抱えるわが子達も立ち直れるため 自分がどうすべきか知りたいです。その答をみつけるための本を読みたいです。
2018年11月11日に日本でレビュー済み
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世の中にこんな悲しいことが多く起きていることを知って泣けた。自分の親に感謝した。報道は『虐待』しか報じないので、ある意味、無責任な報道でしかなく、この本のようにより掘り下げて報道してほしいと思う。その子達の助けになれる人はすばらしい!
2014年12月21日に日本でレビュー済み
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虐待児が無事児童相談所に保護されても、虐待児の精神的なトラウマは深く、解離や学習障害などの問題をひきおこしやすい。
養護施設は手一杯であり、きめ細かいケアを受けていない子どもたちは体をきれいに洗ったり、トイレできれいにお尻をふくという習慣すら身につきにくい。人間不信が根深く、大人を信用しないため、扱いにくい子どもが多い。
里親制度はあるが、里親と実親のトラブルを避けたいがため、施設側が里親を仲介することには消極的である。
無事里親に引き取られても、被虐待児は人間不信から精神的な問題を抱えているため、扱いづらさから里親の虐待を引き起こす事例もある。
それでも施設で育てるよりは、里親の方が家庭的な暖かさが虐待児の精神を救う面が大きい。本書ではそうした様々な事例をとりあげている。
施設と里親の中間的な受け入れ媒体であるグループホームや児童精神科の施設についても言及がある。
養護施設は手一杯であり、きめ細かいケアを受けていない子どもたちは体をきれいに洗ったり、トイレできれいにお尻をふくという習慣すら身につきにくい。人間不信が根深く、大人を信用しないため、扱いにくい子どもが多い。
里親制度はあるが、里親と実親のトラブルを避けたいがため、施設側が里親を仲介することには消極的である。
無事里親に引き取られても、被虐待児は人間不信から精神的な問題を抱えているため、扱いづらさから里親の虐待を引き起こす事例もある。
それでも施設で育てるよりは、里親の方が家庭的な暖かさが虐待児の精神を救う面が大きい。本書ではそうした様々な事例をとりあげている。
施設と里親の中間的な受け入れ媒体であるグループホームや児童精神科の施設についても言及がある。
2018年8月17日に日本でレビュー済み
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著者と同じく、子供たちの現実に真摯に向き合い、伝えてくださった関係者の方々や、子供たちに感謝します。
子供たちが希望を持てるよう、できることをしたいと改めて感じさせられた本でした。
子供たちが希望を持てるよう、できることをしたいと改めて感じさせられた本でした。