ガチンコの画集というには漫画が多いけれど楽しめるから問題なし。
この人の描く女の子は自然な媚があってよろしい。
ころころと変わる表情を見ているだけでも和める。可愛い。
なんとなくスキがありそうだけど、それが一種の愛嬌になっていて、
それでもどこか飄々とした性格の女の子を描かせたら天下一品ですね。
鶴田謙二を象徴する色は青であって、それも空の青みであり、
白雲とのコントラストが映えるやさしい空色である。
その青みが、描かれる女の子の軽妙な雰囲気と相まって心地よい微温を感じさせてくれる。
彼の作品を目で愉しんでいると、夏休みの午後にテレビを見るでもなく、
ぼんやりすごした時間を思い出しているような感じがする。
それは夏の盛りに日陰の部屋でぽつんとたたずんでいるみたいな、透明で静謐な印象である。
この人は、自身の疲労を空に溶かして昇華させる技を持っているのではないか？
描き手としてすでに円熟の境地に達しているようにも思える。
寡作だが、作品はどれも好ましい。
「水素」はそんな鶴田独特の空気がたっぷり詰まった画集。
ちなみに女体がみたい方は「ひたひた」をどうぞ。
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