先日毎年変わりばえのしない公共放送の終戦討論番組で、ある一般市民の医師が「大戦末期に日本が核爆弾を保有していたら、日本への核攻撃はありえなかった。」ような発言をしていたが、残念ながらこの医師には兵器や技術、戦略への知識が無かった為の発言で、周りを唖然とさせてしまっていたが、本書を読めばいかに核爆弾を搭載、輸送し任務を全うさせるかが困難なものであるかがよくわかる。本書を読んでさえいれば場違いな空気も避けえたであろう。
あのアメリカでさえ、単に科学者が爆弾を製造すれば戦略的な優位に簡単に立てるというものではなく、悪条件でも確実な起爆を起こさせる実験や、航空機の改造、搭載機材の開発、人員の教育、効果的な運用方法の開発、秘密の保持と命令系統の独立化、陸海軍の協力などが早い時点からなされていないと実行できるものではない。特に本書では書かれていないが、B-29に搭載されたエンジン過給器と与圧キャビンの発明は欠かせないものであったが、当時の日本には仮に原爆が完成していても、それを運用する機材や能力はゼロであった。従って核保有国はそうした敵国の事情を察知しているので、核を保有していることが判明していても、迷わず投下していたことに疑問の余地は無い。
本書はそういった背景を知るには格好の資料であり、唯一広島・長崎の投下に参加したパイロットの貴重な証言である。知的な著者らしく大変わかりやすく詳細に当時のことを書いており、戦記物の読み物としても冷静かつ人間的に、ノスタルジーに流されること無く表現されているので、ぜひ一読をお勧めしたい一冊である。
ただ他の軍経験者と同様に、様々な要因を味噌クソに論じていることがあり、例えば日本軍や民族主義的な日本人が行った残虐行為を、当時の日本人全員がそうであったような表現があったり、目的のためには多少の罪の無い犠牲もやむを得えず、戦争とはそういったものであるという感情は、50年経っても身に染み付いているものであろう。また意図的なものか、政治的な戦略の話には触れておらず、優秀な軍人であればあるほど政治に利用され、それを認めることは無い悲しい性が伺える。現在の反核論争も、核兵器の非人道さから世界的な核廃絶を訴えているものであり、決してアメリカの原爆投下を全面否定しているのではないが、最近の政治的な意図の証拠の発見とを味噌クソにして、一緒に語っているのは誤った見識である。良くも悪くも極めて真面目で実直なアメリカ兵士の典型であろう。
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私はヒロシマ、ナガサキに原爆を投下した 単行本 – 2000/7/1
- 本の長さ316ページ
- 言語日本語
- 出版社原書房
- 発売日2000/7/1
- ISBN-104562032189
- ISBN-13978-4562032181
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
私はエノラ・ゲイの右翼を飛び、広島までB‐29を操縦した。爆弾倉の扉が開き、ウラン爆弾が投下されるのをこの目で見た。三日後、今度は私が作戦を指揮し、ボックス・カーで長崎に向かった…。アメリカが語る原爆投下。
登録情報
- 出版社 : 原書房 (2000/7/1)
- 発売日 : 2000/7/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 316ページ
- ISBN-10 : 4562032189
- ISBN-13 : 978-4562032181
- Amazon 売れ筋ランキング: - 653,489位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2009年8月25日に日本でレビュー済み
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2020年3月19日に日本でレビュー済み
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自分の手柄話が多い。
2016年5月28日に日本でレビュー済み
昨日、オバマ大統領が広島の原爆慰霊碑前でレガシーとなる歴史的な演説をしました。本書を読んだのは発行後すぐのことでしたが、すごく印象的な内容でしたので家の蔵書の中に入れていました。米国側のB29搭乗員として、ただ一人広島、長崎の原爆投下に参加した著者の生々しい記録です。米国もバテバテでやっとのことで成し遂げた感が本のあちこちで散見されます。日本人として決してそのことを賛美するわけではありませんが、一度眼を通して欲しい記録だと感じました。
2011年4月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
少し題名負けしてる気もしますが、読んでみるべき本やもしれません。