独自のイメージと、それを読者の中で増幅させる文章。他の誰にも表現できないと思う。
短編各編に長編となりうるモチーフが詰め込まれている贅沢な短編集。亡くなったことが惜しまれてならない。
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蘆屋家の崩壊 (集英社文庫) 文庫 – 2002/3/20
津原 泰水
(著)
伯爵と呼ばれる小説家とフリーターの俺は豆腐好きで結ばれたコンビ。伯爵の仕事に運転手として同行する先々で遭遇する怪奇現象。日常が幻想地獄に変貌する、怪奇幻想短編集。(解説・皆川博子)
- 本の長さ288ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2002/3/20
- ISBN-104087474259
- ISBN-13978-4087474251
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登録情報
- 出版社 : 集英社 (2002/3/20)
- 発売日 : 2002/3/20
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 288ページ
- ISBN-10 : 4087474259
- ISBN-13 : 978-4087474251
- Amazon 売れ筋ランキング: - 528,002位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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津原泰水(津原やすみ)
TSUHARA Yasumi
■1964年、広島市生まれ。広島県立広島観音高等学校、青山学院大学国際政治経済学部卒。
■1989年、津原やすみ名義で少女小説作家としてデビュー。
■1997年より現名義にて幅広いジャンルを網羅する執筆活動をおこなう。
■2006年発表の自伝的青春小説『ブラバン』がベストセラーとなる。
■2012年、短篇集『11』が第2回Twitter文学賞国内部門1位となる。
■2014年、短篇「五色の舟」がS-Fマガジン “オールタイム・ベストSF” 国内短編部門1位に選出される。同年、マンガ化されていた同作(漫画:近藤ようこ)が第18回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年2月12日に日本でレビュー済み
謎が解けていく、おぞけを纏い。
謎が深まる、くるめきを誘い。
本作の短編は、凡百の長編よりも広く、深く、妖しい。
「超鼠記」の、噎せ返る香り。
「埋葬虫」の、戦慄き蠢き。
豆腐を食べよう。
謎が深まる、くるめきを誘い。
本作の短編は、凡百の長編よりも広く、深く、妖しい。
「超鼠記」の、噎せ返る香り。
「埋葬虫」の、戦慄き蠢き。
豆腐を食べよう。
2020年10月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
古本を買ったのに新品が来たかと思うほどキレイでした。
ヤケも汚れもなく、開いた形跡もない。元々売った人は、買っただけで読まなかったのでしょうか?
おもしろいのに。
津原泰水さんの小説は、文体がイイですよね。
ヤケも汚れもなく、開いた形跡もない。元々売った人は、買っただけで読まなかったのでしょうか?
おもしろいのに。
津原泰水さんの小説は、文体がイイですよね。
2015年2月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この作品は面白い!
愛すべき人、おぞましい人、気味の悪い人、悲しい人、謎の人。
そして安易な結論に至らない、今後に含みを持たせた短編の数々は
恐怖と悲しみ、愉快さと躍動感と相反する感情が同居する何ともいえない味わいの
名作と感じます。
魅力溢れる猿渡&伯爵のバディ物かと思いきやさにあらず、猿渡単独のエピソードだけでも
おぞましくて面白い! この作者は一筋縄ではいかぬ人物と見た!
全3作品のシリーズの様ですが、今から次作を読むワクワク感と後2作で終わりの淋しさが
去来する本当に何とも言えない味わいの作品に出逢ったものです。
幽明志怪もっと味わい尽くしたい!
愛すべき人、おぞましい人、気味の悪い人、悲しい人、謎の人。
そして安易な結論に至らない、今後に含みを持たせた短編の数々は
恐怖と悲しみ、愉快さと躍動感と相反する感情が同居する何ともいえない味わいの
名作と感じます。
魅力溢れる猿渡&伯爵のバディ物かと思いきやさにあらず、猿渡単独のエピソードだけでも
おぞましくて面白い! この作者は一筋縄ではいかぬ人物と見た!
全3作品のシリーズの様ですが、今から次作を読むワクワク感と後2作で終わりの淋しさが
去来する本当に何とも言えない味わいの作品に出逢ったものです。
幽明志怪もっと味わい尽くしたい!
2010年3月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
奇妙な味の連作ホラー短編集。無類の豆腐好きと言う縁で結ばれた主人公の猿渡と怪奇作家の通称伯爵が体験する恐怖譚。各編は猿渡の一人称でフザけた調子で語られるのだが、怖さがジワジワと滲んで来る物語になっている。伯爵が事件の謎を颯爽と解く、と言った体裁ではなく、一見茫洋とした展開が持ち味。
まず、陰陽師、八百比丘尼、昔話、巨大赤蟹、ケルベロス、黄泉の国等の道具立てを現代に活かすと言う構成がシッカリしている。猿渡と言えば、猿蟹合戦、これが巨大赤蟹へと拡がると言ったイメージの繋がりも巧み。これを背景に、ガンモドキをワザと飛龍頭と言う妖怪名で記す等の洒落で、ユーモア味とホラー味のバランスを巧く取っている。猿渡の乗るハデな車が次々と変わるのも趣向の一つだろう。
その中でも、赤蟹、ヌートリアと言った具体的イメージが湧く「カルキノス」、「超鼠記」は生理的嫌悪感が読み手に纏わる様。「ケルベロス」は外国人宮司や特殊な地形を活かした雰囲気創りが巧み。「埋葬虫」は幻想感と圧倒的な"虫"の迫力が混淆した傑作。
最終作「水牛群」は本作の解題とも言うべき作品で、作者の苦衷の体験がそのまま読者に伝わって来る様である。脳内恐怖物質がジワジワと溢れて来る短編集。
まず、陰陽師、八百比丘尼、昔話、巨大赤蟹、ケルベロス、黄泉の国等の道具立てを現代に活かすと言う構成がシッカリしている。猿渡と言えば、猿蟹合戦、これが巨大赤蟹へと拡がると言ったイメージの繋がりも巧み。これを背景に、ガンモドキをワザと飛龍頭と言う妖怪名で記す等の洒落で、ユーモア味とホラー味のバランスを巧く取っている。猿渡の乗るハデな車が次々と変わるのも趣向の一つだろう。
その中でも、赤蟹、ヌートリアと言った具体的イメージが湧く「カルキノス」、「超鼠記」は生理的嫌悪感が読み手に纏わる様。「ケルベロス」は外国人宮司や特殊な地形を活かした雰囲気創りが巧み。「埋葬虫」は幻想感と圧倒的な"虫"の迫力が混淆した傑作。
最終作「水牛群」は本作の解題とも言うべき作品で、作者の苦衷の体験がそのまま読者に伝わって来る様である。脳内恐怖物質がジワジワと溢れて来る短編集。
2007年9月13日に日本でレビュー済み
主人公は、ちゃんとした定職につかずにあれやこれやのやっつけ仕事をしている男で、彼がひょんなことから知り合った「伯爵」という綽名を持つ色白の怪奇小説家と旅をすると、なぜだか決まって怪異現象がついてきます。それこそ人死にや行方不明は当たり前の怪奇現象のオンパレード、果ては夢の中までそれは続きます。 こう書くと、すわ「伯爵」は吸血鬼かなにかなのかと思われそうですが、そんなことはまるでなく、伯爵が言うには主人公自身が不思議を呼び起こす体質にすぎなすしのこし。実際、この短編では主人公が伯爵と出会う以前に体験した怪異も描かれて、主人公ではなくてあくまで伯爵が怪異を呼び起こすのだと名言されています。
とはいえ、この二人が行くところには怪異がこれでもかと起こり、二人はそういう不思議な事件に立ち会います。そして、どちらが原因かはわからないものの、二人が旅先で出会う幻想的かつ怪奇な物語を綴ったのがこの短編連作小説ということてで、その一遍一遍がバランスも奇妙さ具合も実にいい味を出していて、ひさしぶりに味のある短編を読んだなと満足感が高かったです。
今流行りのサイキックアクションも、特殊な護符も、霊能力の発動もなく、あくまで等身大の主人公が、悩み苦悩し翻弄されるさまがとても昔懐かしく正しい幻想小説ぽくて良かったです。
日本霊異記みたいなんて書くと言い過ぎだけれど、主人公が夢にとりこまれてしまう掌編は、なかなかせつなく泣かせるシーンもあったりしてお薦めの仕上がり具合です。この方も遅筆であまり見ない作家さんですので、手にいれられるうちに読んでみてください。
とはいえ、この二人が行くところには怪異がこれでもかと起こり、二人はそういう不思議な事件に立ち会います。そして、どちらが原因かはわからないものの、二人が旅先で出会う幻想的かつ怪奇な物語を綴ったのがこの短編連作小説ということてで、その一遍一遍がバランスも奇妙さ具合も実にいい味を出していて、ひさしぶりに味のある短編を読んだなと満足感が高かったです。
今流行りのサイキックアクションも、特殊な護符も、霊能力の発動もなく、あくまで等身大の主人公が、悩み苦悩し翻弄されるさまがとても昔懐かしく正しい幻想小説ぽくて良かったです。
日本霊異記みたいなんて書くと言い過ぎだけれど、主人公が夢にとりこまれてしまう掌編は、なかなかせつなく泣かせるシーンもあったりしてお薦めの仕上がり具合です。この方も遅筆であまり見ない作家さんですので、手にいれられるうちに読んでみてください。
2010年3月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
表題の『蘆屋家の崩壊』を含む8編からなる短編集。
三十路を過ぎても定職に就けない猿渡と怪奇小説家の伯爵との豆腐好きコンビが行く先々で怪異怪奇、珍妙奇妙、奇々怪々な事件に遭遇していくという筋書きであり、その他にも数名話をまたいで登場する者もいるが一話一話に関連性はない。
書評に関係ない事だが自分も豆腐好きで、文庫版の「豆腐がこの不思議な世界に云々」といううたい文句となにやらよくわからぬ表紙の絵になんとはなしに魅入られて購入した。つまり口コミや書評といった予備知識を何ら仕入れずに、それこそ短編であるという事も知らず無垢のままこの本を手に取って読み始めた事になる。
このため一話目の『反曲隧道』を読み終えた時不覚にも「なんだこれは」と思ってしまった。なにやらわかったようなわからぬような不思議な後味の残る話だったため、もしかしてこれはミステリー小説なのかと二話目の『蘆屋家の崩壊』を読み出してみると数行で関連性がない短編集であることを漸く理解する。しかし一話目の後味を引きずっているため「これは失敗したかな」との念も生じたのだが、なんのなんの、それこそが杞憂だった。読み終えてみるとその各話の順番・構成も計算されたものであった事がよくわかる。
つらつらと続く文と過剰気味な漢字変換が、古典的で個性的な文章を作っているためか、始め私には癖があると思えた文章だった。しかし読み進むうちに津原泰水の表現・文体・文章力にぐいぐいと引っ張られていく。筆者の掌に軽々と転がされている自分を認識しつつその心地よさについつい身を任せて読みふけってしまった。
気付けば脳内を不思議な想像力が支配し、もっともっと読み続けたいという欲求が涌き出てくる。読み終えて自室の書棚に返してしまうのが惜しくなる短編集だった。
三十路を過ぎても定職に就けない猿渡と怪奇小説家の伯爵との豆腐好きコンビが行く先々で怪異怪奇、珍妙奇妙、奇々怪々な事件に遭遇していくという筋書きであり、その他にも数名話をまたいで登場する者もいるが一話一話に関連性はない。
書評に関係ない事だが自分も豆腐好きで、文庫版の「豆腐がこの不思議な世界に云々」といううたい文句となにやらよくわからぬ表紙の絵になんとはなしに魅入られて購入した。つまり口コミや書評といった予備知識を何ら仕入れずに、それこそ短編であるという事も知らず無垢のままこの本を手に取って読み始めた事になる。
このため一話目の『反曲隧道』を読み終えた時不覚にも「なんだこれは」と思ってしまった。なにやらわかったようなわからぬような不思議な後味の残る話だったため、もしかしてこれはミステリー小説なのかと二話目の『蘆屋家の崩壊』を読み出してみると数行で関連性がない短編集であることを漸く理解する。しかし一話目の後味を引きずっているため「これは失敗したかな」との念も生じたのだが、なんのなんの、それこそが杞憂だった。読み終えてみるとその各話の順番・構成も計算されたものであった事がよくわかる。
つらつらと続く文と過剰気味な漢字変換が、古典的で個性的な文章を作っているためか、始め私には癖があると思えた文章だった。しかし読み進むうちに津原泰水の表現・文体・文章力にぐいぐいと引っ張られていく。筆者の掌に軽々と転がされている自分を認識しつつその心地よさについつい身を任せて読みふけってしまった。
気付けば脳内を不思議な想像力が支配し、もっともっと読み続けたいという欲求が涌き出てくる。読み終えて自室の書棚に返してしまうのが惜しくなる短編集だった。
2008年2月11日に日本でレビュー済み
1999年に出た単行本の文庫化。「超鼠記」が新たに加えられている。
著者は「津原やすみ」名義で少女小説家として長く活躍してきた人物。1997年頃から「津原泰水」の名で怪奇小説も発表しはじめたのだとか。前者としては、ルピナス探偵団のシリーズで知っている人も多いだろう。
本書は、8つの短篇を集めたもの。一応、一貫した主人公がおり、何編かには「伯爵」という固定キャラクターも出てくる。しかし、実質的にはバラバラの8編を集めたもの。内容、テーマ、小説作法はバラバラで、舞台・人物設定にもズレがある。「怪奇小説」というものを自由に発想して、思いつくままに書いていった一冊と見るべきだろう。
どの作品もなかなかレベルが高い。怖い話も、不思議な話も、それぞれに見るべきところがある。結末の落とし方も様々で気が抜けない。
通底するのは、優しさとユーモア。柔らかい口当たりの物語ばかりなのだ。そのあたり、少女小説家としての経験が生きているのだろう。
著者は「津原やすみ」名義で少女小説家として長く活躍してきた人物。1997年頃から「津原泰水」の名で怪奇小説も発表しはじめたのだとか。前者としては、ルピナス探偵団のシリーズで知っている人も多いだろう。
本書は、8つの短篇を集めたもの。一応、一貫した主人公がおり、何編かには「伯爵」という固定キャラクターも出てくる。しかし、実質的にはバラバラの8編を集めたもの。内容、テーマ、小説作法はバラバラで、舞台・人物設定にもズレがある。「怪奇小説」というものを自由に発想して、思いつくままに書いていった一冊と見るべきだろう。
どの作品もなかなかレベルが高い。怖い話も、不思議な話も、それぞれに見るべきところがある。結末の落とし方も様々で気が抜けない。
通底するのは、優しさとユーモア。柔らかい口当たりの物語ばかりなのだ。そのあたり、少女小説家としての経験が生きているのだろう。